常葉菊川vs常葉橘
明るく楽しく、伸び伸び野球の常葉菊川は健在ぶりを示し東海大会進出
漢人 友也(常葉菊川)
いよいよ、秋季県大会も大詰めが近づいてきた準決勝。
静岡県大会も、このところは微妙に戦力構図が動いているという印象があるが、新しい勢力としては、大学の付属系列校も躍進してきている。準決勝ではそんな大学付属型の同系列の常葉大学系列校同士の対決が実現した。この両校は、毎年「常葉交流戦」も実施している間柄でもある。また、常葉橘は付属中学も野球部は県内の強豪ということでも知られている。
常葉学園は、戦後すぐに静岡女子校を母体として設立され、やがて常葉高校はじめ大学も浜松市、富士市、静岡市などにキャンパスを持っている。そして系列校として常葉橘と常葉菊川が、それぞれに中学と高校を併設しているほか、付属幼稚園や小学校にリハビリ施設なども保有するなど一大学園を形成している。
常葉橘と常葉菊川、ともに甲子園出場も果たしている。ことに常葉菊川は07年春には全国優勝、08年夏にも準優勝を果たし県内だけではなく、全国レベルでもすっかり強豪校としての位置づけとなっている。昨夏に前任の森下知幸監督を受け継いでコーチから就任した高橋利和監督。
「このユニフォームの、常葉菊川の野球をやりたいということが集まってきていますから、そのスタイルを変える必要はないし、ボク自身も、バントをしない積極的な野球スタイルが好きだ」という思いだ。そして、エラーをしても、ミスが出ても、それを引きずらない。そんな伸び伸び野球を踏襲したチームが出来ていっている。
先制したのは常葉橘で、先頭の紅林君の打球はセンターを襲ったが、風もあってやや判断を誤った中堅手の頭上を破る二塁打となった。一死後、寺田君の右前打で帰った。これに対して常葉菊川は3回、9番神谷君が一死から右越三塁打すると、1番の伊藤勝仁君が中犠飛を放って同点とする。
常葉橘の片平恭平監督は4回からは、先発の市川君に代って、1番をつけた力投型の河村君を投入する。ところが、その先頭となった奈良間君が「ここは狙っていた」という一打で左翼中段へ放り込むソロアーチ。いくらか窮屈そうなスイングだったが、打球は奈良間君のパワーもあって、そのままスタンドまで運ばれて行った。河村君としても、「まさか…」という一発となったが、その後の3人を三振で切って取って意地を示した。
1点差のまま進んだ試合は7回、常葉菊川が二死走者なしから神谷君が投手前に内野安打して出ると、1番に戻って伊藤勝君が右翼線に落とす二塁打で追加点を奪う。さらに、8回にも奈良間君の右前打と盗塁、鈴木琳央君の中前打で二走を帰すという効率のいい攻めでダメ押しともいえる得点を叩き出した。
もともと立ち上がりはそんなに良くないという常葉菊川のエース漢人友也君だったが、初回の失点以降は、徐々に自分の投球パターンの組み立てが出来るようになっていっていた。9回に、やや勝ち急いだということでもないだろうが、河村君に二塁打を浴びて1点を失ってはいるものの、2~8回をしっかりと0に抑えていたことで、結果的にはこれが味方の得点を導き出したともいえる形になった。
高橋監督も「勝ってきたということで、選手たちも自信を持ってきているのではないか」と、分析している。明るくはじけるようなチームカラーはしっかりと引き継がれていて、NYヤンキースに酷似したピンストライプで左胸にワンポイント「TK」の文字のユニフォームの積極的なイケイケ野球は健在ということを十分に示す戦いぶりだった。
(文=手束 仁)
注目記事
・2017年秋季大会 特設ページ