帝京第五vs松山聖陵
「テーマの違い」が生んだ「10対0」
3打数2安打4打点の帝京第五4番・篠崎 康(3年・捕手)
端的に言えば、勝敗の是非にかかわらず春季四国大会に出場できる「順位決定戦」に臨むテーマの違いが生んだ「10対0」であった。
帝京第五は「センバツ・作新学院(栃木)戦(1対9)のショックは残っているが、そこで受け身に立ったらやられてしまう。[stadium]甲子園[/stadium]に出ていることに自信を持ちながら、臆病にならず、かつ天狗にならないように戦おう」と小林 昭則監督がメンタル面を強調し、必勝を期して臨んだ一戦。
よって「常に逆方向を意識して打っていった」4番・篠崎 康(3年・捕手・右投右打・178センチ84キロ・宇和島ボーイズ出身)の4打点や、「低めに対しての見極めも含め、甲子園で課題だった打撃で点を取ることを心がけた」2番・宮下 勝利(3年主将・遊撃手・右投左打・168センチ59キロ・東淀川ブラックジャガーズ<大阪・軟式>出身)をはじめとする打線が9安打に12四死球をもらって10得点を奪ったのも彼らにとってはミッションを遂行したにすぎない。
対する松山聖陵は「チーム状態のピークは四国大会に持ってくる予定。だから、この試合は選手層を厚くするための選手起用を行った」(荷川取 秀明監督)と、試合に臨むテーマは帝京第五と180度異なるもの。指揮官曰く「夏に登板する場面がある可能性も考えて先発マウンドに上げたし、はじめから2イニングと決めていた」背番号「5」・吉田 翔斗(3年・右投右打・168センチ68キロ・松山市立立花中出身)をはじめとする5投手起用や、秋は遊撃手レギュラーだった1番・尾崎 温大(3年・右投右打・175センチ78キロ・全播磨硬式野球団<ヤングリーグ・兵庫>出身)を複数ポジションで起用したのも、その一環。結果、試合内容・結果共に帝京第五と明暗がくっくり分かれる形にはなったが、これも「夏に向けての準備」と考えれば理解の範囲内であろう。
そして両校はさらなる準備を進めている。
夏の愛媛大会第1シードが確定。夏の甲子園初出場を目指す帝京第五は3月31日をもって辻本 崇人コーチが退職したことを受け、すでに2006年夏甲子園・帝京vs智辯和歌山戦で帝京のキャプテンを務め、筑波大~JR北海道で内野手として活躍した野口 直哉氏などをコーチとして迎え入れている。
また、四国大会決勝戦進出で済美を超える第2シード。そうでない場合も第3シード以上が確定している松山聖陵も龍谷大平安(京都)から昨春転校。5月1日から公式戦出場可能となる右サイド・佐藤 仁亮(3年・投手・右投右打・172センチ69キロ・向日市立寺戸中出身)について「起用も考えている」(荷川取監督)。投手陣整備が為されれば、2年連続甲子園出場も射程内に入るだろう。
これに対し、第4シードが確定している宇和島東や、ノーシードスタートとなる昨秋県大会ベスト4の西条、春県大会準優勝の松山商、ベスト4の川之江。そして最速146キロ右腕を備える今治西・伊予など他校がいかに追随し、超えることができるか。[stadium]甲子園[/stadium]と「愛顔つなぐえひめ国体」への出場切符をかけた3カ月あまりの間に参加40校が「10対0」を自らの頭で解釈し、さらなるレベルアップに向けることを期待したい。
(取材・写真=寺下 友徳)
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