寺島 成輝（東京ヤクルト）「『履正社出身』を胸に」

寺島 成輝（東京ヤクルトスワローズ）

　大阪府茨木市出身の寺島 成輝。転勤によって東京都国分寺市に住んでいた際、国分寺市立第九小1年時に国分寺スカイホークスに入団する。再び大阪に戻り、茨木市立中津小学校4年時からは大阪茨木リトルで硬式野球の道へ。茨木市立東中では箕面ボーイズに所属しボーイズ日本代表として世界大会優勝を経験。大会を終えた後はニューヤンキースに所属しつつ、高校野球への準備を着々と続けてきた。

　こういった野球の求道者たる姿勢が彼の凄みを生む要素となっている。たとえば彼最大の魅力であり、自身もこだわりを持っている最速150キロのストレート。寺島のストレートは、手元までまったく失速せず、内外角へしっかりとコマンドされている。高校時代は相手打者の手が出ず、打とうとしても振り遅れ気味のファウルや、ボールの下を振る空振りになるケースが数多く見られた。

　その「凄み」を創り出すきっかけとなったのは、履正社高（大阪）2年秋、秋季大阪大会の3位決定戦。阪南大高に敗れて近畿大会出場を逃した寺島は、ストレートを磨き直した。トレーニング面では体幹トレーニングに着手。技術面では、体が横振りになり開きが早くなった点を修正するため、グラブを持った右手が体の外側に流れないように意識した投げ込みを積んだ。その結果は春季近畿大会優勝投手。そして夏の大阪大会では29イニング・43奪三振・1失点での甲子園到達。甲子園で3試合・25回3分の2で自責点3。そして侍ジャパンU-18として参加した「第11回 BFA U-18アジア選手権」12イニングで25三振を奪い優勝に貢献。この時は球速常時130キロ後半とやや抑え気味にしつつ、ストレートのキレを保つプロ顔負けのスタイルを披露した。

　高校生からプロの世界へ進む投手は、相手打者から打たれにくいストレートへの追求に概して苦心するが、寺島のストレートはすでにプロレベル。この成長を続けることができれば、寺島は安打率が低く、空振りが奪える左腕となるだろう。

寺島 成輝（履正社時代）

　寺島のもう1つの魅力は「調整力の高さ」。試合によってストレートが走らない場合でも、安定したピッチングができている。その理由について寺島は昨年、チャイニーズ・タイペイで開催された「第11回 BFA U-18アジア選手権」でこう答えている。
「特別なことをしているわけではありません。自分の中で準備できることをしっかりと準備をして、どの環境になっても、やることは変えずにやり抜くことだけです。だから国際大会だからといって、投げることについては違和感はありません」

　NPBは一度だけ凄い投球をするのではなく、勝つためにどれだけ安定したピッチングができるかが求められる世界。寺島はその手順もすでに体得している。
「僕の場合、100パーセントの投球をしようとすると、感覚がおかしくなって、コントロールが悪くなってしまう。そのため80パーセント～90パーセントの力で、コントロールできるようにしています」

　まるで履正社高の先輩、2年連続トリプルスリーを達成した山田 哲人（2017WBC侍ジャパン＜関連記事＞）を思わせるような意識の高さ。昨年、セ・リーグ連覇が期待されながらもチーム防御率4.73で5位。投手陣の整備が急務となる東京ヤクルトスワローズにとって、こんな心強い存在はいない。

　今年、寺島はプロ1年目から一軍キャンプスタート。左内転筋筋膜炎で戦線離脱し、治療に専念する時期もあったが、現在は実戦登板も間近にまで回復している。しばらくは二軍で登板を重ねることになるだろうが、彼の完成度の高さを考えれば、プロ一年目から一軍登板をする可能性も十二分にある。そして近い将来、神宮の杜に「てらしま・なるき・背番号18」がこだまするとき。寺島は山田と共に、履正社高卒の誇りを胸に東京ヤクルトスワローズを再び頂点へと押し上げる存在となるはずだ。