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クイックモーションで大事なのは「タイム」に固執するのではなく、引き出しとして覚えること

2017.02.13

久保康友投手(横浜DeNAベイスターズ)

クイックモーションで大事なのは「タイム」に固執するのではなく、引き出しとして覚えること

 今、プロ野球のキャンプでは「高速クイック」を練習する投手が多く、それが話題となっている。「クイック」は投手に求められるスキルの1つとなっているが、クイックには2種類の目クイックがあることはご存じだろうか。
1つは「走者を走らせないためのクイック」。もう1つは「打者のタイミングを外すためのクイック」だ。
まず今回は「走者を走らせないためのクイック」について紹介をしていきたい。
プロ野球投手のクイックタイムの標準は1.2秒以内が基準となる。なぜこのタイムが標準なのか? プロ野球選手の盗塁タイムは投手が投球モーションに動き出してから、3.2秒以内。速い選手となれば、3.1秒以内となる。3.2秒以内で収めるには、投手は1.2秒台のクイックを行い、そして捕手は2.0秒以内のスローイングを行えば、理論上、アウトすることは可能である。

 さらにクイックタイムが速くなれば、ランナーはアウトになる確率が高くなる。日本でクイックが速い投手といえば、久保康友投手(横浜DeNA)。久保投手は1.0秒以内と驚異的な速さだが、なぜ久保投手はそのようなクイックが可能なのか?カギは「体重移動の距離」である。
「僕は最短で体重移動をしています。普通、右投手であれば軸が中央にあるところから始まり、一度右へ下げてから左へ移動していくわけですが、僕は軸を最初から左において回転させるだけ。少し逆回転してから投げるのではなく、そのまま投げるというイメージなんです」(久保投手)。
投球フォームをイメージしていただきたい。右投手で話を進めると、左足を上げてから、そこから左足を踏み出す前に、軸足である右足を溜める動作があり、そこから左足を体重移動をさせていくのが通常の投球フォームである。久保投手の場合、右足で溜めたり、後ろに引く動作を省いているのだ。

 だが久保投手の技術はかなりの高等技術。早く投げようとするあまり、球威が落ちてしまい打たれるリスクがある。そこはどう防ぐべきなのか?現在、西武ライオンズで投手コーチを務める土肥義弘コーチが「球威を落とさないクイックモーション」について説明する。
「前の脚(ホーム方向)から始動することが大切ですが、その時意識したいのが、前脚の始動の際に軽く前方やセカンド方向に蹴ることにより、頭の突っ込みも抑えることができますし、また勢いをつけることが可能です」(土肥コーチ)
 大事なのは打者を抑える方が優先なのか、走者を走らせない方が優先なのかを考えてみること。本当に打者を抑えたい状況ならば、走らせてでもしっかりと足を上げて、体重移動を行って投げることを考えることが必要だ。日本のことわざには「あちらをたてればこちらがたたず」という言葉があるが、投球とクイックの関係はまさにそれに近いものにあるだろう。 

 クイックで大事なのは速いタイムで投げることに固執するのではなく、1つの引き出しとして覚えることが大切。状況に応じたクイックを実現させ、実戦派投手を目指していこう。

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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