試合レポート

早稲田実業vs福岡大大濠

2016.11.15

清宮、野村の威力まざまざ。早実、福岡大大濠に打ち勝ち36年ぶりの決勝進出

早稲田実業vs福岡大大濠 | 高校野球ドットコム

野村大樹(早稲田実業)

 ともにエンジを基調としたユニホームを着るチームの対戦。福岡大大濠は、前日好投した三浦 銀二が、2日続けての登板。早稲田実業は2日前の試合で、体調不良により登板を回避した新エースの中川 広渡が先発した。

 中川は1、2回を三者凡退で切り抜ける無難な投球であったが、三浦は、初回から捕まる。
1回表、この試合は2番に入った西田 燎太がライト線への二塁打を放つと、3番清宮 幸太郎の四球に続き、4番野村 大樹が3ボール2ストライクと粘った末に中前安打を放ち、西田が生還して先取点を挙げた。

 3回表は一死後、打席に入った清宮は、ラインドライブのかかった不思議な回転をした打球が福岡大大濠の二塁手・斎藤 友哉を襲う。打球は斎藤のグラブを弾き、打球は右中間に転がる二塁打になる。「打ち損じた感じでしたが、打球が動いていたので、ラッキーという感じです」と清宮は語る。多少詰まってはいたが、それでも弾き返す清宮のパワーが生んだ二塁打であった。

 清宮の打球にスタンドがざわめく中、続く野村はレフトフェンス直撃の三塁打を放ち、清宮が生還。さらに野村も、5番に入った雪山 幹太の二ゴロの間に生還し、早稲田実業が3点をリードする。

 福岡大大濠の三浦は、前日のような球の伸びがない。「神宮球場のマウンドは硬いので、違う筋肉を使い、足が張っていました」と、福岡大大濠の八木 啓伸監督。アメリカ流に近く、硬い神宮球場のマウンドは、慣れないと苦労する選手が多い。

 早稲田実業は5回表は、1番野田 優人の内野安打、2番西田の左前安打、3番清宮の四球で無死満塁のチャンスを作るが、4番野村は三振。5番雪山は3ボール2ストライクのカウントからスクイズを敢行し、1点を追加している。「ノーアウト満塁で得点が入らないと、流れが行ってしまいますから」と早稲田実業の和泉 実監督は語る。


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三浦 銀二(福岡大大濠)

 試合の流れが、福岡大大濠に傾きかけたのは、6回表福岡大大濠の攻撃。9番三浦の四球、2番平野 孝太朗の左前安打で一死一、二塁とし、3番古賀 悠斗が引っ張りレフト線への二塁打で三浦が生還。さらに続く4番東 怜央への2球目。中川の投球は、東のヘルメットに当たり、東が倒れる。中川の顔には、明らかに動揺が伺える。

 中川の続投は難しいとみた早稲田実業は、投手を左腕の赤嶺 大哉に代える。赤嶺は5番稲本 侑星に右犠飛を打たれ、1点を返されたものの、傷を最低限に抑えた。

 福岡大大濠は、7回表も四球の7番斎藤が犠打で二塁に進み、9番三浦の左前安打で、中継が乱れる間に斎藤が生還し、1点差に迫る。

 福岡大大濠の追撃ムードを払拭したのは、野村であった。7回裏清宮が死球で出ると、野村は左右間のスタンドに入る2ランを放った。清宮の1年生の時の記録を超える高校通算23号本塁打であった。「後につなげば必ず返してくれる信頼感があります」と清宮が語る一発であった。

 8回表から早稲田実業は赤嶺に代わり、服部 雅生を投入する。秋季都大会では、どこか自信なくみえ、球を置きに行っている感じがあったが、この日の服部は、しっかり腕を振り、力のある球を投げる。9回表には安打2本を打たれ、1点を失ったが、早稲田実業の和泉監督が、「服部が上級生の意地を見せてくれた」と語るように、この大会に限らず、早稲田実業の今後の戦いにも、大きな意味を持つ服部の好投であった。

 追撃及ばず敗れた福岡大大濠であるが、この秋、捕手にコンバートされたばかりの古賀が、この試合、打っては3安打。安定した守備もみせた。リード面ではまだ経験不足の面があったが、それもまた、このチームの伸びしろだろう。

 早稲田実業の決勝進出は、東京のチームとしては、高山俊らを擁し翌年の夏の甲子園を制した日大三以来6年ぶり。早稲田実業としては、各地区の優勝校が出場するようになった今の制度になって初めてで、大会全体としては、荒木 大輔がいた時代の、第11回大会以来36年ぶり。優勝すれば、荒木大輔の兄・健二が4番であった第7回大会以来、40年ぶりの快挙になる。

(取材・文=大島裕史
(撮影:img32… 佐藤純一

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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