試合レポート

八重山農林vs美来工科

2016.11.14

フロックなんかじゃない!実力で4強進出を決めた八重農ナイン

八重山農林vs美来工科 | 高校野球ドットコム

鷹野 (八重山農)

 離島勢初の甲子園出場のみでなく聖地での勝利を収めた八重山商工に、昨年の新人中央大会と秋季県大会を制した八重山。常に脚光を浴びてきたこの2校に比べ、八重山農林は彼らの影に甘んじてきた。2010年以降の、八重山農林の公式戦勝利は僅か4試合(連合としての出場を除く)。最後に白星を飾ったのが2015年春の県大会であったが11月12日、一年生中央大会1回戦で八重山農林は浦添を6-3で下す。それは実に602日振りの勝利であり(地区予選の勝利を除く)、同大会初のベスト8進出となったのだ。そんな彼らの野球を見たくて[stadium]コザしんきんスタジアム[/stadium]へ駆け付けた。

 試合序盤、流れは美来工科であった。1回裏は一死からヒットと四球、2回裏は二死からではあったが連打が生まれたものの、あと1本が出ない。対する八重山農林は3回表、二死二塁とこの試合初めて得点圏に進めたが後続が斬られてしまう。しかし4回表、一死から4番の儀間 遥希平田 極に連続安打が飛び出すと次打者が四球を選び満塁とした。ここで前日2安打を放っていた嘉弥真 大輔(ソフトバンク嘉弥真 新也の弟)が打席に入ったが、三振に倒れてしまう。ツーアウトとなったが、8番の大城 琉は勝負を楽しんでいるかのような笑みを浮かべる。その直後、思い切り引っ張った打球がレフト前へ弾むタイムリーとなり八重山農林が先制した。マウンドを預かる鷹野 蒼治郎は5回裏、二者連続を打ち取るが2番と3番に連続四球を与えてしまう。ここで迎えるは主砲比屋根 京介。このままならば、試合は美来工科に一気に傾く展開となるかも知れない。そう思っていたが、このピンチをキャッチャーの宮城羅が救う。2球目だった。捕球後すぐに二塁へ送球。見事な牽制アウトで鷹野とチームを救ったのだった。


スタメン初出場の2人が大活躍

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八重山農・大城はこの日3打点の活躍

「平田と大城はスタメン初出場。この2人がプレッシャーを感じることなく、素晴らしい活躍をしたのは嬉しかった」とは試合後の砂川玄隆監督。平田が3安打を放てば大城はなんと3打点をマークした。

 6回表、八重山農林は儀間のセンター前ヒットと平田の四球で塁を埋める。嘉弥真がキッチリと送ると大城がベンチの期待に応えスクイズを成功させた。追う美来工科の反撃は7回。一死から9番の大城朝太がセンター前ヒットで出塁。トップに帰った玉城 幸人が左中間突破のタイムリー三塁打を放つ。次打者が四球を選ぶと3番伊波 俊弥のレフト前タイムリーで一気に同点に追い付いたのだ。だが、マウンドの鷹野はここから粘投。比屋根を三振に斬ると後続を抑え逆転を許さないこの日最高のピッチングを見せた。

 すると味方打線は8回表、ライト前ヒットで出塁した宮城を二塁に送って打席に三たび大城。逆らわないバッティングでライト前へと運び3点目を刻んだ。しかしその裏、美来工科は代打の宜野座 風輝が二塁打を放つと、犠打で送ったのち大城の犠飛で再び同点に。どちらが勝つのか分からない一進一退の攻防は、一年生とは思えない白熱したものでもあった。

 しかし9回表、美来工科に二つのエラーが出てしまう。「琉が打点を挙げていたので、ここは僕も絶対に打点を稼ぐんだという気持ちで打席に入った」儀間がセンター前へ運び二者が生還。大きな大きな5点目を得た八重山農林は、「この試合は最後まで彼に任せるつもりだった」と砂川監督がマウンドへ送った鷹野が閉めてゲームセット。八重山農林が、沖縄県高校野球公式5大会を通して2度目のベスト4、一年生中央大会では初の4強進出を果たしたのだった。

(文・写真=當山 雅通

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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