Interview

京都翔英高等学校 石原 彪選手「自慢の強肩とフルスイングでファンを魅了する強打の捕手になっていきたい」

2016.10.26

 丸っこい体型に丸っこい顔。その見た目と強肩強打の捕手であることから「京都のドカベン」と騒がれた石原 彪。高校通算42本塁打のスラッガーだが、最大の特徴は高校生離れした鉄砲肩。矢のような送球は二塁ベース目がけて低い弾道のまま一直線に飛んで行く。小学校2年で野球を始め、最初は外野手だったが、肩の強さを買われコンバートされると以降は捕手一筋。中学時代は15U日本代表にも選ばれた。東北楽天ゴールデンイーグルスから8位指名を受けた石原の道のりを振り返っていきたい。

自慢の強肩が自分、そしてチームを支えた

京都翔英高等学校 石原 彪選手「自慢の強肩とフルスイングでファンを魅了する強打の捕手になっていきたい」 | 高校野球ドットコム

石原 彪選手(京都翔英高等学校)

 中学3年の時に、15U代表に選出された石原。東北楽天1位指名を受け、再びチームメイトとなる藤平尚真関連記事など代表選手の顔ぶれを見て、石原は高校野球で活躍するこることを誓った。
「凄い選手ばっかり揃ってたんで、自分も負けたくないということで、高校でもこいつらに負けんへんぞという気持ちもありましたし、甲子園では戦えなかったですけど、15Uで得られたものが高校のスタートから生かせたかなと思います」

 進学の際には当然いくつもの高校から声がかかったが、自宅から近くて通える距離の京都翔英を選択。前監督が指揮を執っていた当時の京都翔英は朝日が昇る前には家を出て、帰宅も遅い猛練習で知られていた。

「朝早くて夜遅くて、帰ってお風呂入ってちょっと布団で寝たらもう寝てるんですよ」
疲れ果てた体を休めるためギリギリまで寝ると朝ご飯も食べられない。入学時75㎏だった体重はすぐに68㎏にまで落ちた。その過酷さに「ここで3年間続けるのか」との思いがよぎったことは一度や二度ではない。
「でも入ったわけですし、逃げたくなかったですね、自分に。逃げたら終わりやな」

 負けん気の強さで耐え凌ぎ、やがてチームの中心を任される。4番、キャプテン、捕手。石原が背負っていた3つの責任。昨年の12月から指揮を執る浅井 敬由監督は石原のことを誰よりも信頼した。一番評価したのは強肩を誇るディフェンス面だ。
「守備で盗塁を許さないのが大きかった。滝野雅太(旧チームのエース)も高向 遼平(旧チームの2番手投手)も一塁ランナーを気にすることはなかった」

 公式戦で許した盗塁はほとんどない。練習試合では石原相手だからこそ盗塁を仕掛けてくるチームもいくつかあったが、例外なく強肩の餌食となった。そんな石原にとっても会心の盗塁阻止がある。
 

 昨夏龍谷大平安戦、投手が完全にモーションを盗まれ走者が抜群のスタートを切る。誰もが盗塁成功を確信した次の瞬間、二塁塁審の右手は横ではなく真上に上がった。このプレーをきっかけに流れをつかんだ京都翔英は激闘を制し見事勝利。盗塁阻止はバッテリーの共同作業、というのが球界に広く浸透した常識だが、石原に限れば当てはまらない。今春龍谷大平安と対戦した際には1番・センターを任されている韋駄天・小川晃太朗(3年)の盗塁を阻止。これを最後に京都では企図すらされなくなった。

[page_break:今でも思い深い京都大会の3ランホームラン]

今でも思い出深い京都大会の3ラン

京都翔英高等学校 石原 彪選手「自慢の強肩とフルスイングでファンを魅了する強打の捕手になっていきたい」 | 高校野球ドットコム

石原 彪選手(京都翔英高等学校)

 これまでの活躍で、捕手としての実力はすでに京都府内に名を轟かせていた石原だったが、打撃面で悩んでいた。京都翔英のグラウンドは山の上にあり、外野フェンスの向こう側は斜面になっている。大会前には気持ち良く打たせてやりたいという浅井監督の計らいもあり、新球で打撃練習を行うが、打撃力の高かった3年生がゲージに入ると真っさらな白球がいくつも行方不明となるほど。

 打撃力を武器にチームは勝ち進むが、この夏、不振に苦しんでいた石原は仲間に迷惑をかけていると思い、大会中に何度も「4番を外して下さい」と直訴した。が、浅井監督は頑として首を縦に振らなかった。「絶対外さへんよ。打てんでもいいんだよ。ドンと座ってればいい。4番らしい三振して来い」

 これと決めたら貫き通すのが浅井監督の主義。「細かい野球をやらせたら負けへんよ」との自信もあるが、選手の能力とカラーから、この夏は打ち勝つ野球を選択。公式戦でも序盤の大量点で圧倒するという戦い方は一貫していた。

 石原が「外して下さい」と言い、浅井監督が「ダメだ」と答える。4番に関してはこの構図だったが、冬にはキャプテンについて浅井監督が「辞めるか」と尋ね、石原が「やります」と答えるという全く逆のやり取りがあった。

 下級生の頃から背負ってきた4番、捕手だけでなく、新チームではキャプテンの肩書きが加わった。その責任感が技術的な進歩の妨げにならないようにという配慮から、浅井監督は「キャプテン辞めるか」と尋ねたのだ。しかし石原は「やります」と即答。「ここまでキャプテンやってきたんやし最後までやったるという気持ちでした。多分キャプテンをやっていなかったらあの同点ホームランも打ててなかったし、多分、僕は腐っていたと思います」

「あの同点ホームラン」とはチームを救った高校最後の1本を指す。今夏、4回戦の北稜戦。丁寧に低めを突く相手投手の前に打線が空回りし、守備もミスが相次いで3点ビハインドで9回を迎えていた。2番から始まる攻撃で走者を2人ためると石原がレフトスタンドへ値千金の同点スリーラン。

「その試合、調子が良かったんで。全部ヒットを打っていて。でも打ち過ぎたら次打てないと思う時があるじゃないですか。割り切ったんです、ゲッツーか三振かホームランか。ホームランボールが来たら、『よっしゃ、来たぁ』って、体開いたりしてレフトフライとかになるんですけど、あの時は自然と体も入って、飛んでくれました。一番思い出に残るホームランでしたね」

 そして北稜戦に勝利した京都翔英は、その後も自慢の強力打線で勝ち上がり、ついに初の甲子園出場をつかんだ。

[page_break:チームに貢献できる選手となりたい]

チームに貢献できる選手となりたい

京都翔英高等学校 石原 彪選手「自慢の強肩とフルスイングでファンを魅了する強打の捕手になっていきたい」 | 高校野球ドットコム

石原 彪選手(京都翔英高等学校)

 初めて踏んだ[stadium]甲子園[/stadium]の夢舞台。石原は鹿児島代表・樟南との対戦のクジを引いた。打の京都翔英vs守の樟南。対処的なチームカラー同士の対戦は五分五分か、やや京都翔英に分があると見られていたが、浅井監督は対戦前から苦戦を覚悟していた。京都翔英打線は主力のほとんどが左打者で、樟南は左の好投手2枚を擁する。右投手相手ならカーブ、スライダー系の変化球は入ってくる軌道になり、ストレートも内角を突いてくることが考えられるが、左対左で外角を攻められると長打を打つのは難しい。打線の破壊力で京都を制したが、その強みを消されかねない組み合わせだった。

 実際、初回にチャンスを作るも畳み掛けられず、相手にリードを奪われる。その後、点差は広がり、走者を出してもいい当たりが野手の正面を突き併殺打になるという、京都決勝とは逆のパターンで敗れ初戦で姿を消した。しかし石原はこの試合、3打数2安打2二塁打と孤軍奮闘の活躍を見せた。

 そして京都へ戻った石原は次のステップへ向けての準備に勤しんだ。後輩に混じって汗を流し、打撃練習では木製バットを懸命に振る。
「いい選手になると思います。1軍で結果を残せるだけの選手になると思います」 と浅井監督も太鼓判を押した。二塁送球タイムが話題になるほどストップウォッチとの勝負になってしまいがちだが、大事なのはアウトにするとこと。0.1秒でも速い送球するだけでなく、走者に合わせた正確性も要求される。この辺りの嗅覚は教えられるものではないが、石原はこの感覚を持ち合わせている。

 憧れる選手は高校時代から騒がれていた西武・森友哉関連記事。「あのフルスイングすごくないですか?」と無邪気に目を輝かせる石原。打てる捕手だから、ではなくその“打”に魅了されているようだ。今後の目標を伺うと、
「地元から愛される選手、チームに貢献出来る選手になれたらいいなと思ってます。やるからにはトップレベルで、多くの人たちに憧れられるような選手になりたいと思っています」

 来年は慣れ親しんだ京都から仙台へ、戦いの場を移す。強打と強肩。そして「京都のドカベン」と評されるようなキャラクターは仙台のファンに気に入られることだろう。

 いつの日か再び、今度はトップチームで日の丸を背負うことを夢見て。

(文=小中 翔太

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