試合レポート

聖カタリナvs北条

2016.09.30

「スキなく、着実に」聖カタリナ学園、必然の県大会進出

聖カタリナvs北条 | 高校野球ドットコム

聖カタリナの先発・新保 雄太郎

 試合前のシートノック。ほとんどの学校が動きを確かめる儀礼的要素が強い中、今年4月に創部、夏の愛媛大会でベスト8と鮮烈なデビューを飾った聖カタリナ学園のそれはスキのない、着実なものであった。

 特に外野からの中継プレーが印象的。内野手のカットマンは1球ごどに外野手との距離を確かめ、外野手はその距離に対するベストの返球を心掛ける。「週1回の球場練習で重点的にカット練習は行っている」(越智 良平監督)とはいえ、自校のグラウンドは内野のダイヤモンドより少し広いエリアにライト側を伸ばした長方形。かつ全員が1年生。

 それでも3番・越智 敦士(2年主将・遊撃手・168センチ68キロ・右投右打・今治市立日吉中出身)、4番・西本 祥大(2年・一塁手・187センチ99キロ・右投右打・えひめ港南リトルシニア出身)、5番・正岡 篤弥(2年・三塁手・172センチ75キロ・右投左打・今治市立北郷中出身)がそろって旧チームからの中心選手である愛媛北条よりも少ない経験値を、寸暇を惜しんで補おうとする意識が彼らにはみてとれた。

 そして迎えた県大会をかけた一戦。聖カタリナ学園は最速136キロ右腕・新保 雄太郎(1年主将・175センチ76キロ・右投右打・松山中央ボーイズ出身)が初回一死三塁から愛媛北条・越智の中前適時打と西本の連打、正岡の遊ゴロ併殺崩れで失った2点を、着実に取り返し、守り、さらに突き放しにいく。

 3回表には一死後「愛媛北条にとって1番は嫌だろうと思って、(松山西戦での3番)から打順を上げた」(越智監督)加形 篤史(1年・左翼手・176センチ69キロ・右投左打・宇和島市立広見中出身)の右前打を契機に一死満塁から5番・竹田 蓮(1年・一塁手・170センチ63キロ・松山中央ボーイズ出身)が愛媛北条先発・武田 京介(2年・166センチ66キロ・右投右打・松山市立内宮中出身)のサイドから投ずるくせ球に逆らわず中前同点2点打。続く新保の逆転適時打へのヒントを与えた。

 4回裏には二死から新保が連打を浴びるも、前進して捕球した右翼手の竹田 翔一(1年・165センチ59キロ・左投左打・宇和島ボーイズ出身)が、わずかにオーバーランした二塁走者を見逃さず。遊撃手の坂尾 咲汰(1年・遊撃手・163センチ52キロ・えひめ西リトルシニア出身)に素早く送球しピンチの芽を摘む。「ウチが練習試合でやられていたので、練習で狙っていた」と指揮官もこれには満足の表情。対戦相手からも吸収する野球意欲がチーム内で統一されていたことがビッグプレーを呼んだ。

 さらに言えば、9回表8番・坂尾の中前打を皮切りに作った一死満塁から3番・玉井 陸翔(1年・中堅手・右投左打・174センチ63キロ・愛媛松山ボーイズ出身)の左前適時打、4番・伊藤 紘輝(1年・三塁手・170センチ74キロ・右投左打・松山リトルシニア出身)の右翼線満塁走者一掃二塁打で4点をもぎ取ったのも、試合前日に指揮官自らスライダーを投げ続け、変化球の対応力を磨いてきた賜物である。

 こうして聖カタリナ学園は実力者の愛媛北条を下し県大会へと駒を進めた。それでも試合後には「攻撃の形としてはまだまだ。これでは全国では勝てない」と評した越智監督。目線だけでなく、プレークオリティーの目標も甲子園出場のその先へ。普段の練習準備が「必然」を呼ぶ。そんな鉄則を貫いた聖カタリナ学園の快進撃は、秋も続きそうだ。

(文=寺下友徳

聖カタリナvs北条 | 高校野球ドットコム
注目記事
・2016年秋季大会特設ページ

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

関連記事

応援メッセージを投稿

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

RANKING

人気記事

2024.06.15

西東京大会は激戦ブロックが続出!昨夏甲子園出場の日大三は国士舘と同ブロック!【2024年夏の甲子園】

2024.06.15

東東京の横綱に上り詰めた帝京、関東一の軌跡~前田三夫と小倉全由、2人の名将~【東西東京大会50周年物語③】

2024.06.15

【福島】日大東北がサヨナラ勝ち、帝京安積はコールド勝ちで4強入り<春季支部選手権大会>

2024.06.15

今年の東京は「スラッガー大豊作世代」! 超進学校に現れた「プロ入り明言」の二刀流、木製で本塁打量産の早実のスラッガーなどが夏を盛り上げる【注目選手リスト】

2024.06.15

“超不人気”だった東京の高校野球を「3つの出来事」が変えた! 東京ローカルチーム・桜美林の全国制覇、都立高の甲子園出場、そして……【東西東京大会50周年物語②】

2024.06.14

【福岡】九州国際大付は小倉商、東海大福岡は小倉南、春日は大川樟風、福岡大大濠は輝翔館と対戦【2024夏の甲子園】

2024.06.11

センバツ出場・東北のレギュラー左翼手がプロボクサー挑戦へ! エースはENEOS、主力は國學院大、国士舘大などへ進学【卒業生進路】

2024.06.14

15日に夏の甲子園抽選会!超激戦区・愛知が誇る逸材を一挙紹介!素材の宝庫・愛工大名電、中京大中京の149キロ右腕…そしてモイセエフはどこまで成長したのか?今年も全国クラスの逸材が点在!【注目選手リスト】

2024.06.11

【北海道】十勝支部は12日に抽選会!帯広大谷、白樺学園の初戦の相手に注目<夏の甲子園予選組み合わせ>

2024.06.11

【北海道】旭川支部の抽選会は12日!旭川実、旭川志峯など強豪の初戦の相手に注目<夏の甲子園予選組み合わせ>

2024.05.21

【大学野球部24年度新入生一覧】甲子園のスター、ドラフト候補、プロを選ばなかった高校日本代表はどの大学に入った?

2024.05.21

【24年夏全国地方大会シード校一覧】現在33地区が決定、岩手では花巻東、秋田では横手清陵などがシードを獲得〈5月20日〉

2024.05.19

【24年夏全国地方大会シード校一覧】現在30地区が決定、青森では青森山田、八戸学院光星がシード獲得

2024.05.31

【24年夏全国地方大会シード校一覧】現在34地区が決定、佐賀では佐賀北、唐津商、有田工、龍谷がシードに

2024.05.20

【24年夏全国地方大会シード校一覧】現在31地区が決定、宮城では古川学園、仙台南、岩手では盛岡大附、秋田では秋田商などがシードを獲得