Column

ベスト16までで評価を上げた逸材は誰だ!

2016.08.16

 激動の第98回高等学校野球選手権大会もベスト16が出揃い、折り返し地点を迎えた。NPBスカウトのドラフト候補の視察はこのあたりで目処が付く。今年、最も評価を上げた投手、野手、そしてドラフト指名間違いなしと言われる逸材たちの甲子園のパフォーマンスを振り返っていきたい。

現時点でナンバーワンのピッチングを見せているのは今井達也

ベスト16までで評価を上げた逸材は誰だ!  | 高校野球ドットコム

今井達也(作新学院)

 今年の甲子園で最も評価をあげた選手は誰かといえば、今井 達也作新学院)だろう。

 栃木大会では、最速149キロのストレートを投げ込み、21.2回を投げて33奪三振と力強い投球を披露。スカウト陣の間では評価が高かった。さらに評価を上げるには全国大会の快投がカギとなっていた。その今井は尽誠学園試合レポートで快投。2回裏には最速151キロのストレートをマークするなど、全国の高校野球ファンを驚かせた。

 今井が良いのはただ速いだけではなく、左打者の膝元に140キロ後半の速球を投げ込むことができるからだ。追い込んだ時に外角いっぱい、あるいな内角いっぱいにストレートが決まっていく。そしてキレのあるスライダー、縦スライダー、カーブも低めに投げて、完成度の高い投球を披露した。

 また、伸びしろがあるというのも魅力の一つ。今井は180センチ72キロと細い。この体でこれほどのパフォーマンスができるのだから、しっかりと体を作っていけば、もっとすごい投球を見せるかもしれない。そんな期待感を持ってスカウトは見ているかもしれない。

 右投手ではナンバーワンといわれていた藤平 尚真横浜)(関連記事)は2試合で13イニングを投げ、20奪三振。140キロ後半のストレートは重量感があり、フォーク、スライダーの切れも抜群。高低を使い分けるだけではなく、履正社試合レポートではシンカーを投げるなど新たな一面を見せた。昨秋と比べると、確実に一歩ずつレベルアップを果たしている投手であり、プロ入りすれば同校の先輩である松坂大輔涌井秀章に負けない剛腕右腕へ成長する可能性を秘めているだろう。

 寺島 成輝履正社)(関連記事)は、世代ナンバーワン左腕に相応しい投球を見せている。ストレートのスピードは145、6キロと今井や藤平と比べると爆発的な球速ではない。しかし右打者の懐を抉るクロスファイヤーや、外角いっぱいに決まるストレートは非常に迫力がある。

 大阪大会までは直球主体のピッチングが多かったが、甲子園からはスライダー、チェンジアップ、カットボールの割合を増やし、低めに丹念について打たせて取る投球に専念。目先のスピード、奪三振ではなく、勝つ投球に徹したピッチングができている。このように非常に完成度の高い投手だが、フォームのバランスが崩れていたりと、まだ物足りない部分もある。3回戦以降に調子を上げていけるか注目していきたい。

 そして埼玉大会の快投により評価を高めた高橋 昂也花咲徳栄)は苦しいピッチングが続いている。初戦の大曲工試合レポートでは、被安打10本、11奪三振、2回戦の樟南戦では、被安打11本、8奪三振と。粘り強い投球ができているともいえるが、本人も、周囲も物足りなさを感じているだろう。145キロ前後の速球には重量感溢れるストレートで、決めに行ったときは迫力がある。スライダー、チェンジアップ、フォークのキレなども高いレベルにあるが、まだヒットゾーンに入る甘い球が多いのが課題だろう。

 今大会中に修正できるか問われるところ。ただスカウト陣は埼玉大会のピッチングを目にしているので、評価は揺らぐことはないだろう。

[page_break:初戦敗退も凄味を見せた髙田、安定感抜群のピッチングを見せた早川]

初戦敗退も凄味を見せた髙田、安定感抜群のピッチングを見せた早川

 そして岡山大会で最速154キロを計測した髙田 萌生関連記事)は、甲子園でも、常時140キロ後半~最速152キロを計測。ぐっと伸びるストレートはボリューム感があり、藤平や、今井と比べても負けていなかった。スライダー、カーブのキレ味も悪くない。このままいけば完封も見えてくると思われたが、4回裏に同点本塁打を許してから、突如に乱れ、6回まで10失点。まさにショックが残る内容だった。

 本塁打を許してから、140キロ後半を計測していたストレートが一気に140キロ前半まで落ち込んだ。髙田はストレートのスピードが生命線の本格派。1試合で、5キロ以上も平均球速が落ちれば打者は怖くない。また外角偏重の攻めも打ち込まれる要因だったといえる。10失点の内容は反省すべきだが、それでも3回まで見せた髙田の投球は世代を代表する投手であったことは間違いない。

 木更津総合早川 隆久関連記事)は千葉大会同様、安定したピッチングを披露。140キロ前半のストレートを内外角に投げ分け、スライダー、チェンジアップ、カーブを難なく投げ分け、さらにテンポも速く、コントロールも抜群と、まさに非の打ち所がないピッチングで唐津商打線を完封試合レポート。ピッチングの完成度、安定性、大舞台でも動じない精神的な強さという点では寺島 成輝に負けない投手。ポテンシャル的なもので寺島や高橋に劣るところはあるが、投手として必要なものが全て備わった投手で、完成度では寺島に並ぶトップ2と呼べる投手ではないだろうか。

 常総学院鈴木 昭汰も、140キロ前後のストレートは力があり、球速表示以上のものを感じさせる。走者を背負っても、粘り強い投球ができており、追い込んでからのストレートの球威、スライダーが低めに集まり、三振が奪えるところが強み。高校生離れした実戦派左腕として人気が集まりそうだ。

 今大会で評価を大きく上げたのが堀瑞輝広島新庄)。2試合連続で1失点完投勝利を挙げた堀は、他の左腕投手にない武器を持っている。左サイドから投げ込む常時140キロ台中盤の速球は独特の角度があり、曲りが鋭いスライダーも左打者からすれば嫌らしい。そして外角だけではなく、内角へしっかりと投げ込める制球力と度胸があり、変化球も低めに集めることができる。対戦していて嫌だと思わせる投手だ。2年生の時から左打者に強い投手だったが、この1年を経て、我慢強く勝てる投手に成長をしている。

 また大会前、ドラフト候補として注目されたアドゥワ誠松山聖陵)。196センチの長身から振り下ろす常時135キロ~140キロのストレートには角度があり、尻上がりに調子を上げて、最速144キロを計測。マックスをたたき出した時のストレートは素晴らしいものがあり、まだまだ伸びる予感をさせた。独特の曲りをするチェンジアップのキレも良く、この身長にしてフィールディングの動きも良い。素材として魅力的だが、粘り強く投げられる精神力の強さがアドゥワの魅力。甲子園の投球で評価を上げたのではないだろうか。

[page_break:野手としての評価を再び上げた藤嶋健人(東邦)]

野手としての評価を再び上げた藤嶋健人(東邦)

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藤嶋健人(東邦)

 野手では、藤嶋 健人東邦)(関連記事)が初戦の北陸試合レポートで、あとシングルヒットが出れば、サイクル安打の活躍であった。自慢のパワフルな打撃が復活しており、1つ1つの打球の速さ、飛距離は、やはり今年の高校生打者の中では頭一つ抜けている。投手としても完成度が高いが、野手としての才能を評価したい。

 また常に笑顔を絶やさない選手で、東邦の雰囲気が良いのは藤嶋の影響は大きいだろう。こういう選手が野手として常に出られると、チームとして心強く、藤嶋を野手として推すもう1つの理由である。

 高校通算68本塁打の今井 順之助関連記事)は、2試合とも安打を放ったが、本塁打は無しに終わった。ただ自慢のフルスイングはとても高校生とは思えないぐらい迫力あるスイングで、恐怖感を感じさせる選手であった。

 また懸命に走るプレースタイルも魅力で、手抜きをしないプレーヤーとして好感が持てる。本人はプロ志望を掲げている。木製に置き換えて、どんなパフォーマンスを見せるのか、一番注目してみたい選手だ。

 今井と同じくフルスイングが魅力な栗原 健常葉菊川)は3打数0安打に終わった。もう少し見てみたい選手だっただけに初戦敗退試合レポートは残念。一塁までの全力疾走を見ても非常に脚力のある選手であり、今後も注目したい逸材だ。超高校級捕手として注目される九鬼 隆平秀岳館)は、スローイングタイム1.85秒を計測するなど、強肩ぶりをアピール。だが打撃は4打数1安打とドラフト候補としては物足りなさを感じる。4番打者として打撃で貢献したい思いはあるだろう。3回戦以降で大爆発なるか注目をしていきたい。

(文・河嶋宗一

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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