Column

自分から望む厳しさ

2016.08.04

遠藤友彦の人間力!

 甲子園出場チームが決まり、ほとんどが新しいチームとしてスタートをしています。どのようなスタートを切っているのでしょうか。夏の敗戦を悔やんでいる暇はなく、二年生は最上級生としてチームを引っ張っていかなければいけません。お客さんのようだった一年生も秋からはチームの主力として登用される選手もいるはずです。

「強い選手」とはどんな選手?

試合に向けて練習に励む球児(写真はイメージ)

 新チームになればすべてが白紙。ここから新たな競争が始まり、前のチームと違ったチームが出来上がっていきます。夏大会前から準備をして「我こそは」と思っていた控え選手は一歩リードです。自分というキャラを確立し、指導者から「こいつは必要だな」と思わせる戦力になっている選手もいることでしょう。

 来夏に向けて大事なのは、チームとしても個人としても「同じ過ちを繰り返さない」ということです。まずは夏大会の振り返り、先輩たちはどのように負けたのでしょうか・・。

「あれだけ練習試合では活躍した先輩が沈黙した・・」
「失策なんて見たことなかったのに最後の試合で・・」

 普段通りにプレーをしようと思っても、「最後」という魔法に最上級生はかかってしまったことでしょう。調子を維持するのは簡単ではなく、大会の中でも波があった選手も多かったはずです。

 うまい選手が結果を残すのではなく、強い選手が結果を残していきます。ビハインドで迎えた終盤、大チャンスで固くなって身体が動かなかった選手。リードしていて迎えた終盤、最大のピンチで腰を引いてしまった選手。

 夏大会までは強いと思っていた選手も、最後になるとイマイチだったのではないでしょうか。逆に、夏大会直前までは普通だった選手が、最後に覚醒して活躍するというパターンもあります。

 最後の最後で活躍できる「強い選手」とはどんな選手なのでしょうか。様々な要素はあると思いますが、技術的にある程度のものを持っているのは当然ですが【ぶれない自分】(揺れない自分)であるかどうかです。

 一般的に使われる言葉は「プレッシャーに強いか弱いか」ですが、強い選手はプレッシャーを飲み込んで力に変えていきます。プレッシャーを感じる場面では、相手も同じようにプレッシャーがかかっています。得点をする失点をしない、得点が絡むときは自分も敵も心が揺れ動きやすくなります。

 プレッシャーに強くなれ!

 今までの野球人生の中で、何度も指導者に言われ続けてきて親や家族からも言われてきた言葉です。プレッシャーに強くなれと願ってもなれるものではなりません。何をすれば強くなれるのかを選手であれば誰でも知りたいのです。

[page_break:自ら選択して動くことで強くなれる]

自ら選択して動くことで強くなれる

試合を想定して練習することが大事(写真はイメージ)

 強豪私学に対し、公立高校が勝利するためには「ひとつのミス」も許されません。ミスをすれば能力ある選手たちは一氣に襲いかかってきます。弱者はノーミスで初めて互角に戦えるのです。

 ミスが許されない・・

 ミスに意識がいくようでは身体が動かずに縮こまります。今夏、高校野球の予選を何試合も観戦しましたが、厳しい場面で崩れていくチーム(選手)がたくさんいました。

 新チームになって「来年の夏は絶対に!」と思ってこのコラムを読んでいる選手(指導者)も多いと思うので、「どうすれば・・」を書きたいと思います。

 厳しいに慣れる

 この一言に尽きます。厳しいの真逆である楽を選択すると、面白いように色々な試練が襲いかかってきます。この試練は、なかなか乗り越えられない試練です。自分から求めていないで降りかかってきた試練は容易に乗り越えられません。しかし、自分から欲した厳しい(試練)は立ち向かう前提で飛び込んでいるので、苦戦しますが乗り越えていけるのです。

 自分から望むのか
 仕方がなく降りかかってくるのか

 この二つはまったく違います。新チームになって時間があります。秋の大会はすぐそこですが、来夏を充実させるため計画的に自分を強くしていくことが重要です。

 夏大会で本命視されたチームが早い段階で敗戦しました。技術能力があって力はあったでしょうが強くはなかったのです。夏以外の大会に成果を出して、練習試合でも無敵だった。でも、夏大会では・・よくあるパターンです。

 厳しい環境は指導者が作り上げてくれます。例えば「監督がかなり怖い」「練習が厳しい」などがありますが、そんなことは当然であり当たり前のことです。怒りやすい監督を目前に逃げるのか立ち向かうのか。「はいはい」言っていれば逃げられる人もいます。逃げることを前提に監督と接するのではなく、成長するために逃げずに正面から対峙するのです。

 練習が厳しいのはどこも同じですが、厳しい練習をこなす感じではなく厳しい練習の中で「さらに厳しく」できるかどうかです。やらされる感覚ではなく、自ら飛び込む感覚。何かを何回やれと言われたらそれ以上にやるという闘志。納得するまでやり続ける選手は、自分に対して厳しいやつです。

 厳しいを最大限に受け入れて強くなるのは自分次第です。呪文のように「強くなりたい」「自分は強い」と唱えても何も変わりません。普段の練習や生活の中で、自分がどのように向き合っていくのか・・です。

 最後の夏を何度も見てきて、「強さ」が勝敗を決めると痛感します。新チームになった今、どのように自分を一年間かけて強くしていくのか。技術だけが勝敗を決めない野球、コラムを何度も読み直して「強いやつ」に近づいて欲しいと思います。

 欲するだけでは変わりません。自ら選択して動いて初めて強くなるのです!

(文=遠藤 友彦


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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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