Interview

横浜高等学校 万波中正選手「大スターになるための課題とは」

2016.04.17


万波中正選手

 

 横浜期待の大型1年生・万波中正。コンゴ人の父を持つハーフ、さらに188センチ90キロと高校1年生離れした体格を生かした長打力で注目が集まっている。弥栄戦でスタメン出場したが、4打数2安打。改めて万波の課題が見えてきた。この万波が自慢の長打力を発揮するためには何を見直す必要があるのかを考えていきたい。

万波が抱える課題とは?

万波中正選手(横浜)

 万波を見た観客が口々にこういう。
「うわぁでかい!」 
188センチ90キロの高校1年生は漫画の世界でしかないものだと思ったが、実際に目をして、驚きの言葉しか出てこなかった。
 多くの好選手を輩出してきた東練馬シニア出身。そのポテンシャルの高さはメディアを通して伝わった。

 打てば本塁打連発、遠投100メートル以上、投手を務めれば最速138キロ。何もかも規格外の逸材として高校出の活躍が期待された。その選んだ先が、数多くのプロ野球選手を輩出した横浜高校なのだから、期待せざるを得ない。その万波は、県大会でベンチ入りを果たし、ここまで2試合に出場をしていて、まだ安打がない。シード権も確定した4回戦で初スタメンを果たしたのであった。

 その第1打席。初球、豪快なフルスイングを見せたが、これが高校生のスイングか?と驚愕だった。万波のスイングは日本に来る外国人助っ人のような豪快さがあった。結果は見逃し三振に倒れたが、しっかりと芯で捉えた時、どんな打球を飛ばすのかとワクワクさせるものだった。

 そして第2打席。万波は低めの変化球を泳ぎながら打ち返した。凡打と思ったが、打球は想像以上に伸びて、右中間を破る二塁打となった。姿勢を崩されていても外野の間を抜くパワーは恐るべし。しかし高いレベルを目指す万波。今の形は、木製バットならば、ただの内野フライに終わるだろう。

 第3打席は空振り三振。この打席を見て、完全に振り遅れが原因だ。まだまだ万波は高校生の投手のスピード、変化球に対応ができていない。だが第4打席で、万波は一工夫を行った。弥栄は140キロ左腕と呼ばれる篁将希がマウンドに登っていたが、万波はミートに徹し、振り幅が少ないスイングに。なんとか右前安打に持っていき、対応力の高さを披露した。

 4打数2安打とマルチヒットと活躍を見せたが、改めて課題を残した試合となった。万波の課題は始動の遅さ。万波は投手がリリースした瞬間に動きを始める。だがトップの形成が遅れ、タイミングを測ることができないまま振りだしてしまうので、空振りをしている。この始動の遅さはMLBの選手を参考にしているという。だが、MLBの選手は確かにステップした時はリリースの直前だが、予め、バットの動きを見ると、なるべく早く、トップの形成ができる準備ができている。特に万波が憧れるジャンカルロ・スタントン(現・マリナーズ)はバットを寝かせた状態で待ち構えていて、トップの形成が立ち遅れていない。早くバットを振りだすのではなく、トップをしっかりと作って、そのため自分の間合いで打ち返すことができているのである。

 打撃フォームは大きく変える必要はないものの、トップの形成で立ち遅れないにはどうすればいいのか?という視点で、スタントンを見直す必要があるのではないだろうか。

 清宮幸太郎早稲田実業)より飛ばす力は上といわれるが、体格そのもの、またスイングスピード、始動の仕掛けの遅さを見ると、清宮よりも長距離打者の素質があると感じた。清宮は稀有のコンタクト能力、対応力の高さがあるので、今は清宮の方が良く見えるだろう。だが万波も今の課題を乗り越えたとき、潜在能力の高さを発揮して、清宮に並ぶ活躍を見せてくれるに違いない。

 またキレの良い先輩野手と比べるとまだキレが鈍い。自慢の強肩も、シートノック見る限り確かに強肩なのは伺えたが、もっとモーションは速くできるし、一つ一つの身こなしが素早くしないと刺せる外野手にはなれないだろう。野球選手として課題はまだ多い。
 今のままだと、夏はベンチ入りできるか?ということになる。春は25人だが、夏は20人。横浜はこの試合、出場がなかった増田珠など逸材揃い。レギュラーどころかベンチ入りするのも容易ではない。だが逆にそういう環境こそ、慢心せず万波を伸ばしやすいともいえる。

 まとめると、
・トップの形成が遅れているので、自分の間合いで打てる準備を
・体のキレ、俊敏性が鈍い点
の2つが現在の課題。それを乗り越えたとき、大スターに相応しい活躍を見せてくれるに違いない。

(文=河嶋宗一


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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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