日大三vs日大鶴ヶ丘
日大三、捕手・坂倉の三塁打で先制、強豪対決を制す
背番号2の坂倉 将吾(日大三)
「それにしてもよく当たるね」
周囲からそんな声が思わず漏れるほど、日大三と日大鶴ヶ丘はよく対戦する。ほぼ2か月前も、西東京大会の4回戦として対戦したばかり。この時は6対1で日大三が勝利した。この日の日大鶴ヶ丘の先発である山﨑 章雄は、2か月前も先発している。一方日大三の先発の小谷野 楽夕は、2カ月前は途中から登板している。
今回日大三のメンバーで目立つのは、2か月前は外野手であった坂倉 将吾が捕手として出場していることだ。
「夏までは外野手でしたが、中学生の時はキャッチャーをしていました」と、日大三の小倉 全由監督は言う。前のチームには、小藤 翼という好捕手がいたため坂倉は外野手であったが、新チームからは、もとのポジションに戻ったわけだ。送球などをみると、肩はかなり強い。そしてこの試合の先取点は、坂倉のバットから生まれた。
1回表日大三の1番宮木 紳道が遊失で出塁した後、2番木村 慧士が送り、3番坂倉は右中間を破る三塁打。宮木が還り、日大三は、貴重な1点を先取した。
初回に先取点を許したものの、日大鶴ヶ丘の先発・山﨑は、2回以降は落ち着いて緩急をつける投球をし、追加点を許さない。
日大三の小倉監督が「この夏中心になってやっていました」と語る日大三の先発・小谷野は、わずか2か月見ない間に、随分成長した気がする。それは、球威や投球術といった技術的な面だけでなく、球に魂を込めた投球をするといった精神的な側面である。夏までは、中心投手であることは間違いなかったが、田村 孝之介、桑村 和哉という三本柱の1人であったが、新チームからは、文字通りのエースであるからだ。
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被安打7、奪三振8の完投勝利の小谷野 楽夕(日大三)
少々走者を出しても、危なげない投球をしていた小谷野であるが、危なかったのは6回裏。この回日大鶴ヶ丘は二死後、2番高島が中前安打で出塁し、3番井上 洸喜はライトオーバーの二塁打。高島は一気に本塁を狙うが、三本間に挟まれる形で余裕のアウト。日大三の小倉監督は、「あれは大きかった」と言うプレーであった。
日大鶴ヶ丘の萩生田 博美監督は、「球場での試合経験があまりないですから」と語る。高島の走塁は暴走ともいえるが、この時期ミスを気にすると野球が小さくなる恐れもあるので、兼ね合いが難しい。
8回表は、好投していた小谷野 楽夕が左前安打で出塁し、自らチャンスメークをする。1番宮木の犠打の後、2番木村が右飛に倒れ、二死二塁。3番坂倉には無理をせず四球。4番山本 幸次郎も四球で満塁。ここで5番古田 虎支郎が右前安打を放ち、2人が還り、勝負をほぼ決めた。
8回裏に日大鶴ヶ丘は1番金井の右前安打などで1点を返したものの、時すでに遅しで、結局3対1で日大三が勝利した。
日大三の小谷野は119球を投げて、被安打7、奪三振8の完投勝利であった。ただ日大三の小倉監督にすれば、相手の投手もいいので、そうそう打てないことは分かっているものの、都大会に向け「もっと打たないと」と、打線の奮起を促した。
一方日大鶴ヶ丘は、敗れはしたものの、収穫もあった。この1年萩生田監督は「ピッチャー探しの段階」と言う言葉を繰り返していたが、この日は山﨑が好投。9回は坪根という変則投法の投手が登板したが、球筋が面白い。
「1年前にまいた種が、出てきつつあります」と萩生田監督は手応えを感じる。春以降の成長が楽しみだ。
(文=大島 裕史)