東海大菅生vs新宮
東海大菅生が逆転で招待試合2連勝！
適時打を放った勝俣翔貴（東海大菅生）
第2試合、東海大菅生はこの春、ベスト8の福岡新宮と対戦した。1回裏、福岡新宮が一死三塁から3番佐藤慎也（3年）の適時打で先制。2回表、東海大菅生は二死二、三塁から杉本 蓮（2年）が右前2点適時打を放ち、逆転に成功する。
だが3回裏、東海大菅生はミスが絡んで逆転を許すが、6回表、再び8番杉本が適時打を放ち、3対3の同点に追いつく、そして7回表、5番に座る伊藤 壮汰（2年）が勝ち越しの適時打を放ち、4対3。さらに9回表、二死二塁から4番勝俣翔貴（3年）が高々と打ちあがる大きなフライが中前に落ちて、適時打となって、5対3に。
その後は、8回裏から登板した山口淳久（3年）が守りきり、見事に2連勝で決めた試合となった。
東海大菅生の野手陣を総括すると、まずドラフト候補に挙がり、4番ファーストで先発出場した勝俣翔貴（3年）の打撃を振り返っていく。この2試合で2安打2打点と安打はすべて打点に絡むなど、結果としてみれば勝負強いという印象を受けるかもしれない。安打2本というのは、落ちる球を拾っての安打と打球が上がりすぎてのポテン安打と、綺麗な安打ではない。また凡退した姿を見ると、不調のように感じる。今日の勝俣は全体的にボールを捉えきることができず、ストレートにも差し込まれ気味で、しっかりと芯で捉えた打球がなかったのだ。
スイング自体は鋭い。実に恐怖感がある。芯で捉えれば、あっという間にスタンドにもっていくだろう。昨秋からそんな本塁打を何度も見ている。体のキレも鈍いわけではない。だが打ちに行くときに首を傾げて打ちにいく癖があるのか、ミスショットが多いのだ。勝俣は縦のスイングで振りにいきすぎる傾向がある。確かにこのスイング軌道で捉えれば、打球は高く上がりやすい。
しかし確実性が低く、安打量産が難しい。プロでも長打が打てる左打者は、状況に応じてレベルスイングになったり、アッパースイングになったりと上手く使い分けている。また目線のブレも小さい。
もう一度、ブレを小さくして、的確にボールを捉える形を作り上げることが課題になりそうだ。相手チームにとって怖いのは常に安打ができて、要所で一発を打てること。常に恐怖感を与え続ける打撃を夏へ向けて完成させることができるか。
新たな収穫として、一塁手の守備は実に上手いこと。グラブさばき、球際の強さ、守備範囲の広さは中々であった。
4安打の杉本蓮（東海大菅生）
またほかの野手では、勝俣翔貴の前後を打つ打者が良く当たっていた。第1試合は6番、第2試合では3番を打った小磯和貴（3年）はなかなか鋭いスイングから強烈な打球を飛ばす選手で、130キロ以上の速球に対しても、しっかりとタイミングを取ることができていた。また2試合続けて5番を打つ伊藤 壮汰（2年）はどの試合でも、安打を打つことができる打者。ボールの待ち方が良く、130キロ以上の速球が来ても、しっかりとくらいついて、少し甘いコースに入れば、クリーンヒットを放つ。そして第2試合では、4回から7回まで投げたが、130キロ～135キロの速球を投げ込み、キレのあるスライダーを織り交ぜた投球で無失点の投球を見せた。投打でソツなくこなす選手で、実に頼もしさを感じさせる。
そして第4試合で最も当たりを見せていたのは、8番を打つ杉本蓮だ。昨秋の序盤はレギュラーとして出場し、外野手の間を抜く当たりを何度も見せるなど、なかなかキレのある動きを見せていた。しかしその後、当たりが少なくなり、ベンチで控えることも多くなった。この日は杉本らしい広角に打ち分ける打撃で、4安打。一発を打つ選手ではないが、どの投手に対しても、しっかりと対応ができるのが強み。また2盗塁を決めた脚力の高さに加え、遊撃守備も落ち着いて処理ができており、さらに攻守ともに存在感を示すことができれば、スタメンで出場機会を得る可能性も十分にあるだろう。
また第1試合で2安打を記録した齋藤 駿汰はスローイングも2.00秒前後。コントロールも良く、リードしている姿を見ると、非常に落ち着きが感じられた。
投げては4番手の山口淳久（3年）が常時130キロ前半で最速135キロを計測。ここにあと決め球となる変化球が出てくれば、さらに安定感が出て信頼感を得られそうだ。
勝俣の前後を打つ打者の成長が目覚ましいので、あとは当たりが少なかった1、2番と勝俣の奮起になるだろう。まだミスが見られるが、夏へ向けて有力チームになっていく予感はした。
力投を見せる辻晃佑（新宮）
福岡県では進学校と知られる福岡新宮高校。短い練習時間の中、取り組むチームのようで、練習時のアップから1人ずつが統率して行って入る様子を見ると、意識が高く、良いチームと感じた。
エース・辻晃佑（3年）は肘をうまく使い、下半身主導のフォームから綺麗なストレートを投げ込む好投手。バランスが良い投球フォームをしており、筋の良さがある。球速は常時120キロ後半～133キロを計測。両サイドへ丹念に投げ分ける。大崩れしない投球ができる投手で、勝ち上がるのもうかがえた。
打線を見ていくと小技をいろいろ織り交ぜているが、その中でよかったのが2安打の4番伊藤 嵩人（3年）。ややすらっとした長身で、一塁手と外野手を兼ねる。グリップを高く構えた構えから、甘く入ったボールを見逃さず、中前安打を2本放った。対応力は高く、福岡新宮の打者の中では最も期待感が持てる選手であった。
この夏は福岡県大会の上位に勝ち進む力を残り1か月弱で身に付けていくか注目をしていきたい。
（文＝河嶋宗一）
