樟南vs大島
打席の修正、好打生む・樟南
樟南・今田塊都の二塁打で3点を先制
エースが抑え、堅実に守り、得点機をそつなくものにして勝つ。
今大会5試合目にして「一番良い試合ができた」(山之口和也監督)が5年ぶりとなる九州大会出場を勝ち取った。
1回裏のビッグチャンスをものにしたのが大きかった。
ヒット、エラー、四球で二死満塁と絶好の先制機を作る。6番・今田塊都(2年)は初球から果敢に打っていったがファール。
「大振りせず、腰を入れて打て!」
ベンチから山之口監督が檄を飛ばした。チャンスで積極的に打ったのは良いが、今田の悪い癖である身体が伸びて右の脇が空いたスイングになっていた。打席の今田もその声で修正ができた。
「下半身をしっかり使って、上からボールを叩く」
2球目を左中間に運び、走者一掃の二塁打で3点を先制した。
「前の打者が打ち上げて二死になって、嫌な流れだったのを変えることができた」と山之口監督は値千金の一打をたたえた。
これで勢いづいた樟南は、2、3、6回といずれも四死球やエラーなどで作ったチャンスを、きっちりタイムリーで返してコールド勝ちを決めた。
2010年秋に山之口監督が就任して、13年夏の甲子園は出場したが、九州大会の出場は初めてだ。
「公式戦を数多く経験できることが、何より夏につながる」と喜んでいた。
初の決勝進出への意気込みとは裏腹に、鹿児島大島は全てが空回りして無念のコールド負けだった。
エラーや四死球で傷口を広げ、適時打で返される。9失点の全てがこのパターンだった。準々決勝まで4試合、投手の好投と無失策の堅守でリズムを作った野球とは、真逆の展開に自らはまり込んだ。
「樟南を意識し過ぎた」と白井翔吾主将(3年)。昨秋の初戦(試合レポート)で完封負けした相手を意識するあまり、地に足がついていなかった。
「試合に入り切れていなかった。集中できなくて、ボールがしっくりこなかった」。2回、5失点で降板したエース前山優樹は悔しがる。
昨秋は初戦敗退で、勝ち上がる経験ができなかった。一冬を越えて、守備から攻撃のリズムを作り、接戦を勝ち抜くという「スタイル」を確立させ、過去の先輩たちと同じベスト4までたどり着くことはできた。
しかし、チームが最終的に掲げる「甲子園を勝ち取る」ためには、ここからあと2試合を勝ち抜かなければならない。そこでは、この日の樟南のような勝負強さを持った相手が待ち構えている。相手を意識しすぎて自ら崩れていては、勝算はない。
「きょうの経験を次に生かしたい」と白井主将は雪辱を誓っていた。
(文=政 純一郎)