試合レポート

大阪桐蔭vs常総学院

2015.03.30

永遠のテーマ

 7回に逆転を許してしまった常総学院のエース・鈴木昭汰(2年)。
 「自分の力不足です。終盤に自分の甘さが出てしまった試合でした」とお立ち台で唇を噛みしめた。

 このゲームで大きなポイントとなったのが、7回に大阪桐蔭の8番・吉澤一翔(2年)に打たれた同点のタイムリー二塁打だ。
 そこまで吉澤は鈴木から2本のヒットを放っている。中学野球に詳しい大阪桐蔭の西谷浩一監督によると、少年野球の全国大会で吉澤は鈴木を攻略していたそうだ。それだけ、鈴木にとっては相性が悪い相手と言えるだろう。

 話を7回裏に戻す。
 鈴木は二死から大阪桐蔭の7番・福田光輝(3年)にヒットを打たれて、一塁に走者を背負った状態で吉澤と対することになった。
 1点リードで二死一塁、そしてこの試合で2安打の吉澤という状況で、次の打者はピッチャーの田中誠也(3年)。ここで鈴木とキャッチャーの髙瀨将太郎(3年)が考える選択肢は多い。鈴木は、「吉澤で勝負する」と考え、キャッチャーの髙瀨は、「インコースではなく、アウトコースということで、長打だけは避けようと思った」と話し、最悪シングルヒットや四球ならばOKだったとの認識だった。

 1球目からファウル、ボール、ボール、ファウルで2ボール2ストライクと追い込みながらも並行カウントになった。そして運命の5球目となった前に、鈴木は牽制球を一つ挟む。これもバッテリーの選択肢の一つだ。

 5球目、鈴木が直球を投げると真ん中付近の甘いコースになってしまった。「狙い球は決めず、何でもこいという感じだった」と思っていた吉澤のバットが反応。右中間を低いライナーで破り、スタートを切っていなかった福田でも一塁から悠々と本塁へ還ってこられる打球となった。

 バッテリーが一番やってはいけないことと考えていた長打。しかも次の打者であるピッチャーの田中の目の前で福田が同点のホームを踏んだ。同点ではあるが、流れは逆転した瞬間だったと言えるのではないだろうか。

 さてこの吉澤の場面。
・カウントによっては吉澤との勝負を避けて、あえて次のピッチャー・田中と勝負する (デメリットは逆転のランナーを出してしまう)
・吉澤と勝負しながらエンドランを警戒 (カウントを悪くするのと、福田が走ってこないかもしれないとうのがデメリット)
など他にもいくつかの選択肢が考えられる。

 キャッチャー出身である大阪桐蔭の西谷監督に、自分がキャッチャーとして同じ状況になったとしたら、当たっている吉澤に対して、次のピッチャー・田中まで見据えたリードをするのかどうかを聞いてみた。
 「その時の状況にもよりますが、相手が代打という作戦をとってくるチームなのか、その辺りも(探りながら)考えると思います」とまだ選択肢はあるとの考えを話した。

 「次の打者までは頭に入ってなくて、ただ勝負という考えで、打たれちゃいけない所に打たれてしまった。試合が終わった今考えたら、2安打浴びていたので、厳しい所を攻めながら次の打者(田中)と勝負しても良かったのかもしれない」と話した鈴木。
 キャッチャーの髙瀨は、「大阪桐蔭などは下位打線でも長打がある。そういった状況でどう対応していくのかを見極めるということをこれから考えていきたい」と大きな勉強をしたという気持ちを話してくれた。

 この場面でどんな選択肢が正解だったのか。野球では将棋や囲碁のように長考ができるわけがなく、短時間で答えを探すのは難しい。さらにはっきり言えば、答えは一つだけとは限らない。
 ただ後から振り返ると、こうすれば違う状況もあったのではということなど、色んな検証材料を得ることができた試合と言えるだろう。次の同じような場面になった時、常総学院バッテリーがどんな選択肢をチョイスしてくるのか、楽しみにしてみたい。

 
  
 

 

もっとセンバツ情報を知りたい方はこちら

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

関連記事

応援メッセージを投稿

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

RANKING

人気記事

2024.06.07

【夏の甲子園地方大会抽選日&開幕日一覧・近畿地区】近畿一番乗りの抽選は17日の大阪、4府県が7月6日に開幕

2024.06.07

【夏の甲子園地方大会抽選日&開幕日一覧・北信越地区】新潟で21日に抽選会、7月5日の富山で組み合わせが出揃う

2024.06.07

明日夏の組み合わせ抽選! 今年の神奈川は「投手王国県」だ!東海大相模の198センチ左腕を筆頭に、ノーシードにも140キロ超え投手が続出【神奈川注目投手リスト】

2024.06.07

【夏の甲子園地方大会抽選日&開幕日一覧・東北地区】24日に宮城、秋田の抽選!7月6日の宮城が東北一番乗りで開幕

2024.06.07

大学日本代表候補42名が発表! 金丸(関大)・中村(愛知工大)・西川(青学大)のフル代表トリオや164キロ右腕らが選出! 今季不調の宗山(明大)は選出されず

2024.06.04

神村、鹿実の壁を破れ! 国分中央は「全力疾走・最大発声・真剣勝負」で鹿児島の頂点を狙う

2024.06.02

福岡に逸材現る! ケガから復帰後即144キロ! 沖学園2年生エース・川畑秀輔に注目だ!

2024.06.02

【鹿児島NHK選抜大会】神村学園が期待の2年生エース・早瀬の完投勝利で決勝進出!

2024.06.06

大阪桐蔭が選抜ベスト8の阿南光ら4チームと対戦!<招待試合>

2024.06.05

【24年夏全国地方大会シード校一覧】現在36地区が決定、徳島の第1シードは阿南光!第2シードに池田!<6月5日>

2024.05.21

【大学野球部24年度新入生一覧】甲子園のスター、ドラフト候補、プロを選ばなかった高校日本代表はどの大学に入った?

2024.05.15

【全国各地区春季大会組み合わせ一覧】新戦力が台頭するチームはどこだ!? 新基準バットの及ぼす影響は?

2024.05.21

【24年夏全国地方大会シード校一覧】現在33地区が決定、岩手では花巻東、秋田では横手清陵などがシードを獲得〈5月20日〉

2024.05.13

【24年夏全国地方大会シード校一覧】現在29地区が決定、愛媛の第1シードは松山商

2024.05.19

【24年夏全国地方大会シード校一覧】現在30地区が決定、青森では青森山田、八戸学院光星がシード獲得