徳島商vs阿南工
練習試合と公式戦の「違い」
5安打4奪三振完封の育田 佑輝(徳島商)
「練習試合の結果が公式戦の結果にそのままつながるわけではない」。
字にしてしまえば当たり前の話だが、今回のセンバツでは開幕前の練習試合1分3敗の松山東(愛媛)が開幕前の練習試合で好調をキープしていた二松学舎大附属(東京)を破ったことにより、改めてその論理が生きていることが証明された。
練習試合ではチームや個人の課題をいかに導き出し、公式戦までに様々な部分で準備を整えられるかが公式戦で力を出すポイントになる。練習試合を活かす意識が高かければ高いほど、そして公式戦のステージが大きければ大きいほど、その差は勝敗の部分にまでかかわってくる。
そぼ降る雨の中で行われたこの試合でもそういった現象がみてとれた。
結果的にはサイドハンドから多彩な変化球を駆使した育田 佑輝(3年・投手・右投右打・176センチ78キロ・鳴門市第一中出身)が97球で5安打4奪三振完封し6対0も、「先日の練習試合でも6対0で作新学院(栃木)に快勝しているのに、まだ受け身になってしまうんだよね」と浮かない表情なのは徳島商業・森影 浩章監督。
「相手に1つアウトをやりながら、自分たちのペースを維持する」意図を持って行ったバント失敗が2回、50メートル走6秒1・昨年11月に開催された「体力・技術向上研修会」でもベースランニング14秒02を叩き出した1番・平野 善常(3年・右翼手・右投両打・176センチ69キロ・牟岐町立牟岐中出身)も「脚を使いたい」気持ちがやや空回りする場面が見られた。
「公式戦で勝てていないからね」と指揮官が語るように、徳島商の県大会ベスト4以上は、2013年春以来丸2年ぶり。2012年秋以来の四国大会出場権をかけた鳴門渦潮との準決勝は、練習試合の内容を公式戦でいかに表現できるかがカギになりそうだ。
一方の阿南工業も昨秋県大会初戦敗退から今大会はベスト8。初戦の穴吹戦で最速140キロ越えを果たし5安打8奪三振で完封したエース・片山 雅斗(3年・投手・右投右打・182センチ75キロ・阿南市立加茂谷中出身)をはじめ、複数選手がインフルエンザにかかり出場不可能な状態。それでも2回戦で昨秋県大会ベスト4の海部を破る原動力となった笠井 公貴(3年・一塁手兼投手・左投左打・179センチ96キロ・阿南市立羽ノ浦中出身)と井筒 仁斗(3年主将・捕手・右投右打・167センチ72キロ・美波町立由岐中出身)のバッテリーばかりでなく、背番号二桁の選手たちも粘り強く戦った。
「ここで力不足を感じた後に行動してほしい。名前負けはしなくなってきたので、それはできるはずです」と選手たちの奮起を促す福岡 秀祐監督。これも公式戦でないと味わえなかった感情だろう。
はたして今後、両校が練習試合と公式戦との「違い」をどう感じ、どう研鑽していくのか?その答えは7月に出る。
(文=寺下 友徳)