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いつものストレッチをバージョンアップ!

2015.03.15

 こんにちは、アスレティックトレーナーの西村 典子です。

 早いものでもうすぐ春休み。本格的な野球シーズンがやってきましたね。日頃からウォームアップクールダウンといったことはチーム全体、または個人で取り組んでいることと思います。今回はこうした実践練習の前後で行うコンディショニング、特にストレッチについてお話をしたいと思います。普段行っているストレッチ方法を見直し、さらにバージョンアップさせるためにはどのようなことに注意すればよいでしょうか。

どんなストレッチを行っていますか?

動きの中で関節可動域を広げていくダイナミックストレッチ

 ストレッチは筋肉や腱といった軟部組織の柔軟性を高め、ケガ予防やパフォーマンスアップに効果があるといわれています。またとても手軽で、比較的スペースを必要としないので、自分一人ででもチーム全体としても毎日行いやすいコンディショニングと言えるでしょう。

 このように取り組みやすいストレッチですが、状況にあわせてより効果的な方法があるのを知っていますか?いつも同じパターンでストレッチを行うのではなく、ウォームアップの時とクールダウンの時に意識してほしいことをまとめておきたいと思います。

ウォームアップの時
・体温を上げ、筋温を上げて柔軟性を高め、プレー中のケガを予防する
・「今から野球をやる」という意識づけとして、なるべく立ったままでストレッチを行う(メンタル面での準備も含む)
・関節の動きを意識したダイナミック(動的)ストレッチをメインに行う
・全身の血流をよくして運動に適した状態にする(酸素をより多くとりこむことができ、運動負荷に負けない体に近づく)

クールダウンの時
・疲労物質をより早く代謝させるために血流をよくし、疲労の蓄積によるケガを予防する
・練習を終え、心身ともにリラックスすることを目的としてストレッチを座って行う
・一つ一つの筋肉の柔軟性を高めるため、時間をかけてゆっくり伸ばす
・スタティック(静的)ストレッチをより多く取り入れる

 あくまでも大まかな指標としての位置づけですが、ウォームアップクールダウンでは行うストレッチの内容に違いがあらわれます。

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[page_break:ストレッチ内容を決める要因 / ストレッチがパフォーマンスを低下させる?]

ストレッチ内容を決める要因

時間をかけてゆっくり伸ばすクールダウン時のストレッチ

 ウォームアップクールダウンといった状況にあわせてストレッチ内容を決めるのはもちろんですが、このほかにもさまざまな要因がストレッチの内容を左右します。

■外的(環境)要因
・気温・天候(暖かいときと寒いときとではストレッチにかける時間はおのずと変わる)
・風(風が強い日は体感温度が低く感じられる。風1mに対し、体感温度は1℃下がるといわれている)
・場所(屋内、屋外、グランド、地面がアスファルトなど)
・人数(大人数で行うときはある程度のスペースが必要、一人で行うときは畳一畳分でもOK)
・練習や試合前、試合後のスケジュール(どのくらい時間をかけられるか)

■内的(個別)要因
・ケガや不安部位へのセルフケア
・その日の体調 など

 ストレッチは環境要因とともに個人要因にも配慮する必要があり、チーム全体で行うストレッチが不十分なときは、あらかじめ個人でもストレッチを行うようにしましょう。

ストレッチがパフォーマンスを低下させる?

 座った状態でゆっくりと伸ばすスタティックストレッチは筋肉の柔軟性を高める反面、パワーの出力が一時的に落ちるといわれており、試合前は不適切だという指摘があります。確かに筋肉や腱の柔軟性が高まると瞬発的な動きがやや遅くなるという研究などもあり、試合前に筋肉をゆるめてしまうとそこから素早い動きにうつるのに時間がかかってしまうのは理解できるところです。しかしその影響力は数%程度のものであり、ストレッチにかける時間によっても変わるため、一概に「スタティックストレッチをするとパフォーマンスが下がってしまう」と判断してしまうことは避けたほうが賢明でしょう。

 ウォームアップの時にスタティックストレッチを行うのであれば、特に肩関節や股関節を中心に関節の可動域(動く範囲)を広げる目的で行うとよいでしょう。ストレッチにかける時間を1部位につき、20~30秒程度にとどめ、ストレッチを行った後に専門的な動作を含むウォームアップドリルを行うようにすると、スムーズに野球のプレーに移行することができます。

 ストレッチを上手に活用して、ケガの予防、パフォーマンスアップに役立ててくださいね。

【いつものストレッチをバージョンアップ!】
ストレッチは手軽に取り組めるコンディショニング方法の一つ
ウォームアップの時はプレー中のケガを予防するために
クールダウンの時は疲労蓄積からくるケガを予防するために
ストレッチには外的(環境)要因とともに内的(個人)要因を考慮する
●スタティックストレッチはパワーの出力が一時的に落ちるという報告がある
ウォームアップ時のスタティックストレッチは関節可動域を意識して、1部位20~30秒程度に

(文=西村 典子

次回コラム公開は3月30日を予定しております。

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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