Column

「緻密な制球力を築くには」

2015.02.28

 「上原浩治が語るピッチング・メソッド」第2回では、緻密な制球力を磨くためのアドバイスを上原浩治選手から頂きました。
上原投手の最大の武器であるフォークボール。いずれフォークを習得したいと考えている球児にとって大きなヒントになったと思います。ただフォークは真っ直ぐがあっての変化球。真っ直ぐを追求する姿勢も忘れません。今回は上原投手の緻密なコントロールに迫ります。

打撃投手でコントロールを磨いた高校時代

 上原投手はコントロールに優れた投手としても知られる。日本時代、制球力を示す通算与四死球率は第1位(通算1000投球回以上)の1.20。通算1549回投げて、四球はわずか206だった。メジャーでも四球は350回1/3を投げて46と少なく、狙ったスポットに投げる能力が長けていると認識されている。

上原 浩治投手(ボストン・レッドソックス)

 そんな上原投手のコントロールはいつ培われたのか?筆者は以前、東海大仰星高時代に上原投手を指導した西豊 茂監督(現総監督)から「上原は連日打撃投手として200球、300球投げることで、ここに投げればいい当たりをされ、ここに投げれば凡打になるという感覚をつかんだのでは」という話を聞いたことがある。それを上原投手に伝えると、こう返してくれた。

 「確かに打撃投手をすることで、コントロールが良くなったところはあると思います。なにしろ5球投げたら、全てストライクを投げなければなりませんからね。

 当時はど真ん中しか投げてませんでしたが、“ここでボールを離せばど真ん中にいく”ということを意識しながら投げてました。ど真ん中に投げるコツがわかれば、コースの投げ分けもできるようになります。狙いをど真ん中から少しずらせばいいわけですからね。

打撃投手は打者に打ってもらうのが仕事ですが、投手にとってもあながち軽視できない、レベルアップの場だと思います。僕はプロに入ってからも、積極的に打撃投手をしてました」

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[page_break:制球力を高めたいならキャッチボールを大切に]

 制球力を高めたいならキャッチボールを大切に

上原 浩治投手(ボストン・レッドソックス)

 制球力を高めるために、もう1つ上原投手が勧めるものがある。それはキャッチボールだ。上原投手は「日本ではノックを処理して暴投を投げるとうるさく言われる反面、その前の段階、これはキャッチボールですが、野球教室などで少年野球を見ても、指導を徹底しているチームは少ないように感じます。ですが、実はキャッチボールこそが重要で、キャッチボールで狙ったところに投げられない選手は、投手はもちろん、内野手も外野手もできないと思いますね」と言葉に力を込める。

「反対に、長い距離でもコントロールした送球ができる野手なら、投手になっても狙ったところに投げられると思います。たとえば(肩の強さと送球の確かさで定評がある)巨人の由伸(高橋 由伸選手兼コーチ)にしても、マウンドからもしっかりコントロールされた145キロの真直ぐが投げられましたから」

 とはいえ「キャッチボールであっても、ピンポイントに投げるのは難しいと思います」

 そこで目標を“このあたり”にする。「“このあたり”なら、プレッシャーもかからない」からだ。上原投手はフォークボールを修得する際も「はじめから狙った所に投げようとはせず、まず“ホームベース付近”に投げることから始めた」という。

 そして5mの距離で、きっちり“このあたり”に投げられるようになったら、10m、15m、20mと少しずつ伸ばしていき「50m、60mでも投げられるようになったら、第一関門はクリアです」

 試合ではど真ん中は危険なコースだが、投手がレベルアップするためには、練習すべきコースともいえる。そしてプロ野球選手はキャッチボールを大事にするが、その理論がとても具体的だ。何故、キャッチボールをしなければならないのか、明確になったはずだ。次は上原投手のフォームのメカニズムに迫っていく。

(文・上原 伸一

第3回では、「理想のフォームの作り方」を上原浩治選手にたっぷりと語っていただきます!次回は3月7日(土)に配信予定です。お楽しみに!

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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