Interview

大和広陵 立田 将太×向谷 拓巳 バッテリー対談 前編「二人が組むきっかけと苦労談」

2014.12.16

 「今日はよろしくお願いします!」

 取材部屋に指定された大和広陵高の校舎内の一室。その日のすべての授業が終わると、元気な挨拶と共に登場したのが、大和広陵の前チームのエースで、今秋のドラフトで北海道日本ハムファイターズから6位指名を受けた立田将太投手と、プロ志望届を提出、今年の指名はなかったものの、NPB入りを目指す向谷 拓巳捕手の2人だ。

 同時インタビューということもあってか、少し、照れくさそうな表情でソファーに並ぶように腰を下ろした二人。
「今日の主テーマはバッテリーとコミュニケーションなんです」
「わかりました!」
さぁ、いったいどんな話が聞けるだろうか。

キャッチャーコンバートの経緯

試合中の向谷拓巳捕手【平成26年度春季奈良県大会 準決勝 智辯学園戦】

――昨年の新チーム結成前までは、向谷選手は外野手でしたが、どういった経緯でキャッチャーにコンバートすることになったのですか?

立田 将太選手(以下「立田」) きっかけは、僕がキャッチャー転向を勧めたことです。彼は周りもしっかりと見れるし、肩も強い。総合的な能力値がものすごく高い選手なので、間違いなくいいキャッチャーになると思ったので「新チームからキャッチャーやってくれへんか?」と直接お願いしました。

――そうだったんですか。向谷選手は過去にキャッチャー経験はあったのですか?

向谷 拓巳選手(以下「向谷」) 小学校のときに少しやった程度ですね。実質、キャッチャー初心者でした。

立田 一回、試しにブルペンでボールを受けてもらったんですけど、初心者としてはすごくキャッチングが上手かったんです。普通に練習を重ねていけば、すぐにいいキャッチャーになれると思いました。監督も最初はコンバートをためらっていた様子だったのですが、一緒に練習を続ける中で、バッテリーを組むことを認めてくれました。

向谷 立田に勧められる前から「立田の球を受けてみたいな」っていう思いは実はあったんです。外野を守りながら。
彼は小、中と有名な選手だったので、「注目されてるピッチャーの球を受けてみたい!バッテリーを組んでみたい!」という願望はずっとあって。

――じゃあ告白したのは立田投手だったけど、実際は両想いだった。

向谷 そういうことになりますね(笑)

チーム内 コミュニケーション術

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[page_break:最初に心がけたこと]

最初に心がけたこと

試合中の立田将太投手【平成24年度秋季近畿地区高校野球大会 準々決勝 龍谷大平安戦】

――キャッチャーに転向し、立田くんをリードする女房役となったわけですが、まず心がけたことはどういったことでしたか?

向谷 まずはピッチャー・立田の頭の中を知らなければいけないと思いましたね。彼がどういう考え方をしているのか。試合中、練習中に関係なく、お互いの意見を言い合うことを徹底して繰り返しましたね。

――お互いがなにを考えているのかを知るところから把握しないといいバッテリーになんかなれないと。

向谷 そうです。配球面に関して言えば、イニングが終わるごとに、攻め方の反省と、次の対策をマメに話し合って。

立田 そんな特別なことはやってないと思うんですけど、そういう話し合いはマメにやりましたね。やはりキャッチャーに転向して日が浅いですし、バッテリーを組んだ日数も浅いわけで。とにかくあらゆる面で数をこなそうと。一球でも多く、自分のボールを受けてもらいたかったので、必ずキャッチボールの段階からコンビを組みました。

――向谷選手は「自分のバッティング練習の時間を削ってでも一球でも多く立田投手のボールを受けてやる!」くらいの意気込みだったのではないですか?

向谷 そうですね(笑)。少しでも一緒にいる時間を作ろうと意識していました。

――バッテリーを組むまで、そもそも二人は仲が良かったのですか?

立田 (お互いの顔を見合わせながら)普通かな?

向谷 普通やな(笑)

――バッテリーを組むことによって、仲が深まったのでしょうか?

立田 そうですね。話す機会が激増したので、自然と。学校の帰り道も帰る方向も距離も違うのですが、途中まで一緒に歩いて、立ち止まってしゃべったり。まぁ、そういうときは野球の話ではなく、他愛もない話の方が多いんですけど。でもそんな日々を繰り返しながら、気心がどんどん知れる仲になっていきましたね。

チーム内 コミュニケーション術

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[page_break:最初は全く息が合わなかった]

最初は全く息が合わなかった

左から立田 将太投手と向谷 拓巳捕手(大和広陵)

――バッテリーを組み始めた当初はサイン交換をしてもなかなか意見が合わないことも多かったんじゃないかと推測するのですが。

立田 そうですね。

向谷 全然合わなかったですね。

立田 自分の中では今までずっと投げてきた中で得てきた感覚というものがあるんですよ。こういう配球をしたら打ち取りやすい、みたいな。それと合わないサインが出た時は、やはり首を振ってましたね。
はじめは「うーん、なんでこのカウントでそのサインなんだ…」と思うことはよくありました。そういう自分の思いは全部、彼に伝えるようにはしてましたけど。

――立田投手に言われたときは向谷選手はどういう気持ちになるものですか? 「おれの考えの方がもっといい!」という気持ちがあったりしたのでしょうか?

向谷 最初のうちは首を振られたら、素直に違うサインを出してました。でも「自分の考えもいいんじゃないか?」という思いも半分はありましたね。半分半分です。

――キャッチャー初心者だからと、立田投手の言いなりになるのではなく、自分の考えをしっかりと持って、それをきちんと伝えられる選手だからこそ、立田投手もキャッチャーに推薦したのではないですか?

立田 そうですね。自分の考えというものをしっかりと持っている選手なので。ぼくの新たな可能性みたいなものを彼なら引きだしてくれるんじゃないかという期待はありましたね。

向谷 でも夏が終わって、バッテリー組んで、その年は息が合わないまま、終わってしまったよね。

立田 そうやな。秋は無理やったな。シーズンが終わって、冬の間に徹底して息を合わす練習をして。次の春には息がばっちりと合うようになっていました。

 バッテリーを組んだけど、なかなか息が合わない。高校球児の皆さんもそんな経験があるはず。ここから2人は息がぴったりのバッテリーに成長をしていきますが、どんな取り組みを重ねていったのでしょうか。具体的な取り組みを紹介していきます!

(インタビュー・服部 健太郎

【続きを読む】大和広陵 立田 将太×向谷 拓巳 バッテリー対談 後編「意思疎通のスタートはキャッチボールから」

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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