川越東vs甲府商
「8回ピンチで圧巻の三者連続三振。高橋無四球完封で川越東が初戦突破」
無四球完封した川越東先発・高橋 佑樹
埼玉県屈指の左腕が、関東大会でもその前評判に違わぬピッチングをみせた。
初の関東大会へ駒を進めた川越東対5年ぶり7度目の関東大会出場となる甲府商業との一戦、先発は川越東が高橋 佑樹、甲府商業はこれまでの甲府県大会のパターンとは違い、左腕山本(恭)ではなく右腕石川が先発し試合は始まる。
石川はオーソドックスな右投手であり、直球は目測でMAX130kmほど、スライダーや縦変化などの変化球を中心にかわすタイプの投手である。
序盤はやや甲府商業ペースで試合は進む。甲府商業打線は一巡目から高橋の低めの変化球に手を出さず、甘いボールを確実に捉えていく。このあたりは高橋を研究してきたという印象を受けた。事実高橋は初回変化球が思ったように決まらなかったこともあるが苦しんでいた。
だが、2回以降は高橋が立ち直る。この日走っていた直球を中心に組み立て甲府商業打線を抑え込む。
一方の川越東というと、序盤は硬さからか攻撃がややチグハグであった。初回一死から2番・大南が死球で出塁する。相手キャッチャーの肩を見ても、すぐさま単独スチールを仕掛けても良い場面であったが、続く駒崎が初球を打ちファーストゴロに終わる。走者こそ得点圏へ進めたが、後続も倒れ無得点に終わる。
2回裏には、この回先頭の鈴木が四球で出塁するが、続く高橋は犠打を2球失敗しヒッティングに切り替えると、結果はショートゴロ併殺に終わる。
7回裏に三塁打を放った福岡 高輝(川越東)
それでも先制は川越東。
3回裏、この回先頭の星野 裕帆がライト線への2塁打を放つと、続く藤野が送り一死三塁とする。ここで1番・福岡 高輝がセンター前タイムリーを放ち川越東が幸先良く1点を先制する。
川越東は5回裏にもこの回先頭の星野が四球で出塁すると、続く藤野が送り一死二塁から1番・福岡がファーストへの内野安打で一死一、三塁とチャンスを広げる。二死後、3番・駒崎が四球を選び満塁とすると、続く吉澤も押し出しの四球を選び2点目を奪う。
川越東は、7回裏にも二番手山本(恭)を攻め、先頭の福岡が右中間へ三塁打を放つと、続く大南がレフトへ犠飛を放ちリードを3点に広げる。
この試合のハイライトは8回表であった。
甲府商業は、この回先頭の布施にレフト前ヒットを放つと、続く望月(大)も三塁線を破る二塁打を放ち、無死二、三塁とチャンスを広げる。だが、ここからの高橋のピッチングが圧巻であった。8番・三井を変化球で、9番・山本(恭)を直球で共に三振を奪うと、続く1番・好打者清水も変化球で三者連続三振を奪い高橋はマウンドで雄叫びをあげる。
すると、その裏今度は打線が高橋の頑張りに応える。二死から7番・札葉がライト前ヒットを放つと、続く星野もライト前ヒットを放ち山本(恭)をマウンドから引きずり降ろす。さらに、代わった3番手清水に対し、9番・藤野がレフト越えの2点タイムリー二塁打を放ちリードを5点に広げる。
マウンドに集まる甲府商
最終回、高橋はやや勝ちを意識したか、この回先頭の伊藤に内野安打を浴びるとその後も中込、布施の連打などで二死満塁のピンチを招くが、後続は抑え8安打を浴びながら粘投で無四球完封勝利を飾った。
甲府商業は上位打線の振りが鋭く打線全体に粘りもあった。ヒット数も川越東と同数の8安打を放ったが、悔やむべくはチャンスであと一本が出なかったことか。
一方の川越東だが、この日も初の関東大会という緊張からか序盤なかなか犠打が決まらないなど、目指す細かい野球の部分でミスが出た。だが、エース高橋は決して万全ではなかったが要所を締め、守備面でもこのチームの看板である二遊間福岡、駒崎を中心にノーエラーと埼玉県大会同様の戦いぶりは見せた。
特に、7回表には無死一塁から功刀のライナー性の当たりをワンバウンドさせ併殺を奪った、セカンド駒崎の頭脳プレーなどは秀逸であった。打線では全くデータのない投手に序盤こそ苦しんだが、2巡目以降は一応に捉えてはいた。星野に当たりが出始めたのも収穫であろう。
とはいえ、次の相手は千葉の1位校木更津総合だ。球場も風が強い[stadium]QVCマリンフィールド[/stadium]であり、会場の雰囲気もアウェーになるであろう。苦戦が予想される。そうなるとやはり命運を握るのは高橋のピッチングである。ロースコアの試合に持ち込みたい。川越東悲願の甲子園へまずは初陣を飾った。
(文=南 英博)