試合レポート

鳴門渦潮vs高知

2014.05.05

鳴門渦潮、2試合連続サヨナラ勝ちで8年ぶり決勝進出!

鳴門渦潮vs高知 | 高校野球ドットコム 

9回裏サヨナラ安打を放った2番・中川武士(鳴門渦潮)

 試合前、鳴門渦潮・高橋広監督と高知・島田達二監督が共にポイントとしてあげたのは「連投の先発がどれだけ投げられるか」。その出来は対照的なものとなった。

 前日に強打西条打線を6回わずか84球で2安打無失点に封じた高知先発左腕の鶴井拓人(2年)は、初回二死二塁から鳴門渦潮4番・多田大輔捕手(3年)に甘いボールを左前に痛打され1点を失うと、3回にも多田の連続タイムリー含む4連打で2失点。4回以降2番手の酒井祐弥(3年)が伸びのあるストレート、落差のあるカーブ・フォーク・スライダーを駆使し「よく試合を作っていい投球をしてくれた」(島田監督)ことで試合は接戦に持ち込めたが、10日間で5試合を戦う短期決戦となる夏の高知大会を見据える上において大きな課題を抱えたことは確かだろう。

 一方、1回戦では三本松相手に延長10回を力投した鳴門渦潮左腕・松田知希(3年)。
この日はその影響で自慢の最速141キロストレートが走らず、スライダー・チェンジアップ・フォーク主体の投球を強いられた。

 が、それでも135球6安打5奪三振4与四死球3失点完投。3点先行直後にもかかわらず2暴投と守備の乱れも絡み7番・杉本武蔵右翼手(3年)に2点適時打、代打・藤堂雅己(3年)にも適時打を浴びてたちまち同点に追いつかれた4回表の内容を除けば「連投でも余裕があった。少しは進歩したと思う」と高橋監督も合格点を与えるものだった。

 こんな両校の思惑が交錯する中、クライマックスはまたも終盤に訪れる。
9回裏、鳴門渦潮は先頭の途中出場7番・近本直球三塁手(2年)が遊撃手上を越える安打で出塁すると、ベンチは連続犠打を指示。「酒井くんが変化球の制球に自身がなさそうだったので、サードに置いたらストレート主体になると思った」名将の読みは、四球後、2番・中川武士二塁手(3年)による「テンションは上がったけれど、外より高めストレートを右方向は意識して打った」一・二塁間サヨナラ安打。2試合連続サヨナラ勝ちにつながった。


鳴門渦潮vs高知 | 高校野球ドットコム

3回裏、右前適時打を放った4番・多田大輔(鳴門渦潮)が

 かくして一昨年4月の統合後初、前身の鳴門工業・鳴門第一時代を含めると8年ぶり4度目の春季四国大会決勝進出を決めた鳴門渦潮。しかし常に最悪の事態想定から物事を組み立てる高橋監督は決勝戦の話になると途端に表情を曇らせる。

 「4月19日の練習試合では岸(潤一郎)くんに7回コールドで完全試合をされてますからねえ。しかも1個も外野へ飛球が飛ばなかった。正直、明徳義塾とはやりたくないですよ」

 確かに1990年代から2000年代にかけて甲子園を席捲。2005年夏の第87回大会準々決勝ではいまやMLBニューヨーク・ヤンキースの勝ち頭である田中将大が2年生エースだった駒大苫小牧を土俵際まで追い込んだ鳴門工業「うずしお打線」のような猛打は正直ない。

 ただ、現在広島でプレーする3年前の大黒柱・美間優槻や、現チームの高校通算本塁打12本の5番・平間隼人遊撃手(3年・主将)、高校通算本塁打15本の多田大のように「ツボに入れば何かを起こせる」雰囲気は現在も十分に漂っている鳴門渦潮

 そこに2試合連続サヨナラ勝ちにもつながった「松田が踏ん張って流れを逃さない」(平間)戦いができれば、初の春季四国王者獲得も不可能ではない。

(文=寺下友徳

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

関連記事

応援メッセージを投稿

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

RANKING

人気記事

2024.05.08

【全国各地区春季大会組み合わせ一覧】新戦力が台頭するチームはどこだ!? 新基準バットの及ぼす影響は?

2024.05.09

プロスカウトは190センチ超の大型投手、遊撃手、150キロ超右腕に熱視線!この春、浮上した逸材は?【ドラフト候補リスト・春季大会最新版】

2024.05.09

「指導者はどこにいる?」九里学園(山形)が 選手主体の”考える野球”で成果着々

2024.05.09

【新潟】日本文理、開志学園、帝京長岡、関根学園が4強<春季県大会>

2024.05.09

【福島】10日に県大会抽選!聖光学院は春4連覇をかける<春季県大会>

2024.05.08

【全国各地区春季大会組み合わせ一覧】新戦力が台頭するチームはどこだ!? 新基準バットの及ぼす影響は?

2024.05.06

【2024年夏 全国地方大会シード校一覧】現在27地区が決定!

2024.05.03

【埼玉】春日部共栄の「反撃」なるか、5年ぶりの関東切符狙う<春季県大会>

2024.05.06

センバツV・健大高崎は夏も強い! Wエース抜きで県大会優勝、投打に新戦力が台頭中!

2024.05.03

【春季埼玉県大会】山村学園の打線が爆発!エース西川も好投!立教新座を一蹴し準決勝進出!

2024.04.21

【愛知】愛工大名電が東邦に敗れ、夏ノーシードに!シード校が決定<春季大会>

2024.04.22

【春季愛知県大会】中部大春日丘がビッグイニングで流れを引き寄せ、豊橋中央を退ける

2024.04.29

【福島】東日本国際大昌平、磐城、会津北嶺、会津学鳳が県大会切符<春季県大会支部予選>

2024.04.23

【大学野球部24年度新入生一覧】甲子園のスター、ドラフト候補、プロを選ばなかった高校日本代表はどの大学に入った?

2024.04.21

【兵庫】須磨翔風がコールドで8強入り<春季県大会>