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【センバツ】第86回選抜高校野球大会 大島 42年目に叶った悲願 「想い」胸に甲子園へ

2014.01.24

【センバツ】第86回選抜高校野球大会 大島 42年目に叶った悲願 「想い」胸に甲子園へ | 高校野球ドットコム

悲願の選抜初出場を決めた大島ナイン

大島 42年目に叶った悲願 「想い」胸に甲子園へ

 「残る鹿児島の『悲願』は離島からの甲子園だ!」
 昨年、尚志館が大隅から初の選抜出場を決めた日、喜界の床次隆志監督はそんな言葉でナインに檄を飛ばしたという。あれから1年、鹿児島大島が21世紀枠での選抜出場を決めた。1972年夏に大島工徳之島が初めて甲子園を目指す挑戦を始めて以来、42年目で実現した「奄美から甲子園」の悲願だった。

 21世紀枠の推薦基準は「恵まれない野球環境の克服、文武両道の実践、積極的な地域貢献活動など他校の模範となる学校」となっている。今回、選考委員会で大島のプレゼンテーションを担当した鹿児島県高野連の佃省三理事長は「総合的に21世紀枠の基準に叶っていたのではないか」と鹿児島大島が選出された要因を話す。

 選考委員会のプレゼンの中で佃理事長が強調したのは「離島のハンディーの克服」だった。練習試合の相手が少ないこと、公式戦に出場するためには宿泊費などの負担がかかること…数々のハンディーを克服し、昨春、秋と県大会で4強入りし「甲子園に手が届くほどの力をつけてきた」と佃理事長。加えて2010年の奄美豪雨災害時の復旧活動や、奄美群島が世界自然遺産登録を目指す中で、海岸の清掃活動などの地域貢献活動にも積極的に取り組んだことも、評価の対象だった。

 「60年前の本土復帰の頃も含めて、いろんな人の想いが届いたのではないか」と佃理事長は言う。戦後8年間、奄美群島は米軍統治下におかれた時代があった。昨年12月25日で、日本復帰60周年だった。鹿児島大島の甲子園出場は、群島民にとって節目の年を締めくくる「朗報」だった。

 奄美の「高校野球」は軟式の時代が長かった。鹿児島大島に硬式野球部ができたのは72年夏。当時のエース前里佐喜二郎さんらが「最後の1年はどうしても硬式をやって甲子園を目指したい」と硬式への移行を部員数人で校長に直訴した。夏休みに土木作業などのアルバイトをして部費をねん出し、自分たちでつるはしやスコップを持ち込んで学校の裏山の安陵グラウンドを整備し、硬式野球部が産声をあげた。「42年前、こんな日が来ることを思い描いて野球部を立ち上げた。我がことのようにうれしい」と前里さんは喜ぶ。

 大島も含めた離島のチームは、「離島のハンディー」の前に県大会で1勝することにさえ、四苦八苦した時代が長く続いた。喜界で31年間監督を務め、元広島の高橋英樹や西武の美沢将らプロ野球選手を輩出した久保正樹監督らがけん引し、離島のレベルも徐々に上がっていく中で、05年秋に徳之島が鹿児島大会で準優勝し、初の九州大会出場を勝ち取った。この時も21世紀枠の最終候補だった。残念ながら「吉報」は届かなかったが、それ以降、徳之島を含む奄美群島の学校にも20~40代の熱意ある指導者が赴任し、県大会ベスト16以上の好成績を継続して残せるようになった。今回の鹿児島大島の快挙は、そういった先人たちが積み重ねた歴史の上に実現したといえるだろう。

 奄美で野球に携わってきた人すべての「想い」を胸に、鹿児島大島は選抜に挑む。これまで県大会に出場すること自体が、宿泊を伴う遠征だった。奄美勢にとって「ハンディー」だった遠征を豊富に経験していることも、甲子園の戦いでは「アドバンテージ」に変わる力を秘めている。昨秋、鹿児島玉龍にサヨナラ勝ちし、樟南に打ち勝った「大高旋風」が甲子園でも吹くことを期待している。

(文 政純一郎  写真提供 奄美新聞社)

今回の出場は初出場。注目選手、歴代の戦歴は下記の高校別データをチェック。

■高校別データ
鹿児島大島

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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