今治西vs坂出
4回裏今治西・二死三塁から3番・越智樹捕手(2年)が左翼線適時二塁打
今治西、「臆病さ」脱皮への胎動
1回表。1番・田村 紘章中堅手(2年・左投左打・158センチ63キロ・香川大学教育学部附属坂出中出身)が二遊間を破ったのを口火に5番・豊嶋まで怒涛の5安打2得点。まるでここがレクザムスタジアムかと思わせるほどの鮮やかな坂出打線の攻勢にあっても、今治西陣営は全く慌てていなかった。
その伏線はグラウンドコンディションが整わず順延が決まった試合前夜にある。今治西・大野康哉監督は神野 靖大・越智 樹の2年生バッテリーを銭湯に誘い出し、裸の付き合いをする中でこんな話をした。
「打たれるたびに丁寧になりすぎる。変えていく勇気を持て。繊細でなく、もっと思い切って大胆に攻めていくことが必要だぞ」
西条との秋季愛媛県大会決勝戦では鮮明に、秋季四国大会1回戦の高知追手前戦でも見え隠れした「臆病さ」からの脱皮を促したのだ。
その効果はてきめんだった。最終的には失点を初回のみに止め、2回裏には一死二・三塁から勝ち越し左犠飛。さらに4回裏には自らのバットで試合を決める4点目を叩き出した3番・越智 樹はこう語る。
「今までは初回に5安打打たれたら『ヤバい』となっていたのが、今日は『いつもうまくいくとは限らない。ここからバックを信じていこう』と思えました」
大野監督が「インコースを攻めていた。あそこは大きかった」と指摘した2回表一死二塁からの二直併殺。直後「もうちょっと得点を取れる予定だった」(搆口秀敏監督)坂出の落胆を突いた今治西が勝ち越した時点で、勝敗は決まったと言えよう。
ただ、彼らが本当に「臆病さ」を払拭できたかは準決勝の内容で問われるもの。同じ坊っちゃんスタジアムで秋季四国大会を制した4年前以来となる明徳義塾との激突は、今治西にとって4年ぶり13度目のセンバツ出場を賭けた一戦になると同時に、チームカラーを変えられるかを賭した重要な試合となる。
(文=寺下友徳)