試合レポート

都立大泉vs都立中野工

2013.09.01

強豪に勝つために打撃、走塁も妥協なく

都立大泉vs都立中野工 | 高校野球ドットコム 

先発する有吉(都立有泉)

 この夏、5回戦まで勝ち進んだ都立大泉都立中野工の対決。試合序盤で試合が決着がついた形となった。

 1回表、都立大泉は1番八代 和樹(1年)が左前安打で出塁。盗塁を仕掛け、2番斎藤の一ゴロで一死三塁として、3番西 泰佑(2年)の四球で、4番梅田 城太郎(2年)の四球で一死満塁。5番古田 龍将(2年)の押し出し死球で1点を先制する。さらに6番青木の右前安打で2点目。なおも一死満塁で、7番宮原はレフト線を抜ける二塁打で、2点を追加し、4対0。一死二、三塁で8番今別府は四球で一死満塁。9番有吉の左飛で二死となり、1番八代が放った痛烈な三ゴロを三塁手が弾く。失策が記録され、一気に5点を入れる。試合を優位づけた都立大泉だが、その裏、都立中野工が反撃。 

 1回裏、都立中野工は二死から3番工藤佳が中前安打で出塁。4番石黒 賢斗(2年)のレフト線を破る二塁打で1点を返す。だが2回表、都立大泉は一死一塁から5番古田の左超え適時二塁打。さらに6番青木の四球、7番宮原が中超えとなる2点適時打を放ち、計3点を追加し、8対1とする。

 4回表には一死三塁から1番八代が4安打目となる中前適時打で9対1。八代は盗塁を決め、2番斎藤の犠打で二死三塁として、3番西の左前適時打で10対1。5回表には5番古田が中超え三塁打でランナー三塁とすると、6番青木が左超え適時二塁打を放ち、11対1。これで10点差を付ける。

 その裏、都立中野工は一死から7番田中が中超え三塁打を放つものの、後続が倒れゲームセット。都立大泉の先発左腕・有吉 達見(2年)は5回6奪三振1失点の好投で、11対1の5回コールドで都立大泉が勝利を決めた。


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注目の1年生・八代和樹

 勝利した都立大泉の増子良太監督は高校時代、都立雪谷が甲子園に出場したときの主将である。甲子園を知っているからこそ、選手たちに求めるものは高い。試合後、この試合の試合内容を伺うと、攻撃内容、走塁内容について厳しく指摘していた。

「スコアでは打っているように見えますが、簡単にフライを打ち上げていることがまだ多い。簡単に打ち上げる打撃は強豪私立、強豪都立を当たった時に命取りになりますし、そういう詰めの甘さがチームの課題です」

 フライを打ち上げるということはフライを打ち上げるようなフォームになっていたり、配球に手を出しているということだ。しっかりと自分のポイントで捉えることができているか。またランナー三塁の場面で、レフトフライ。だがこれをタッチアップせず三塁にとどまった。増子監督はすぐに三塁走者と三塁コーチを指摘。

「レフトは体勢が乱れているので、走れる当たりでした。まだ経験がないから走ることができないのでしょう。だからこそ失敗してもいいからスタートすることが大切。失敗して次に生かして、夏に出来るようになってほしい」 

 タッチアップの判断は難しい。走らない限り、どういう守備位置で走ればいいか理解出来ない。夏に出来るためにトライすることが大切である。まだスタートしたばかり。この夏の先輩を超すために実戦の中で、課題を見つけ、修正し、そして自分の課題を克服するためにトライし、強いチームを作り上げていきたい。

 初戦の堅さが目立った中で、新チーム初の公式戦に動じずプレーできていたのが1番の八代は面白い選手であった。179センチ77キロ。と恵まれた体格をしており、1年夏からベンチ入りし、試合には出場しなかったが、ベンチからでも夏の経験をしたことで、秋にしっかりと生かすことができているようだ。 

 とにかく強く振ることができる選手で、外角球に対して、踏み込んだ右足をしっかりと踏ん張り、ボールを強く振ることができている。一打席目に鋭い球足で三遊間へ抜けていった左前安打、2打席目も痛烈な三ゴロ失、3打席目も左前安打、4打席目も中前安打とすべて単打であったが、今の打球の速さに角度が伴えば、二塁打、三塁打を量産できる選手になるだろう。八代も本塁打も外野の間を抜く打球を放つことに快感を感じているようで、1番打者として突破口を切り開くために二塁打、三塁打を多く求めている。

「高校野球で活躍するのはもちろん、高校野球で終わらず、大学で続けられる選手になりたい」
 体が大きいだけではなく、志も高く、良い選手であった。言葉だけではなく、常に全力疾走を怠らずに、一歩でも先の塁を狙い、打者としても喰らいつきが良かった。いわゆるガッツのあるプレーヤーだ。

(文=河嶋宗一

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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