Interview

広島東洋カープ 前田 健太 選手(後編)

2013.02.25

第131回 広島東洋カープ 前田 健太 選手(後編)2013年3月01日

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 前回は、日本を代表するピッチャーのひとり・前田健太選手に、オフシーズンの取り組み方を中心にお話しを伺いました。今回は高校球児にとって、シーズン開幕直前のこの時期に、真っ直ぐへのこだわりや調整法、マウンドでのマインドについてアドバイスをいただきました!

僕は、コレで真っ直ぐを磨きました

広島東洋カープ 前田健太選手

――真っ直ぐを磨くために、大事なものとは何ですか?

前田 健太選手(以下「前田」) 遠投も大事ですね。遠くに投げられるということは、速い球も投げられるだろうし、そもそも“遠くに投げる”ということは、色々考えないと投げられないと思うんですよね。
 このフォームで投げれば、一番遠くにいくとか、力が入りすぎれば逆に遠くにいかないなとか、そういうことを考えながら、キャッチボールでも遊びの感覚も持つというか、色々と考えながら、やるといいと思います。

――前田投手は、実際にどんな発見をキャッチボールや遠投からされたのでしょうか?

前田 僕の場合は、ちょっと左手を意識したら、すごく良いボールがいったなとか、リリースの瞬間だけ意識して力を入れたほうが遠くまで飛んだなとか。

 遠投やキャッチボール、またブルペンでもそうですけど、ムダのないフォームで投げるというのが一番ですよね。でも、遠くに投げようとすると変なところに力が入ってします。
 僕自身も、『リリースの瞬間だけ力を入れる』ということに気付いた時に、真っ直ぐもすごく速くなったし、ムダな力が抜けて、すごく良いボールが投げられるようになりました。だから、そういうものをキャッチボールやピッチング練習でも探していってほしいですね。

――それは高校生であっても、すぐに実践できますね。

前田 もちろんです。毎回、同じように投げるのではなくて、今回は力を抜いたリリースで投げてみようとか、この一球は左手を意識してみようとかやっていけば、『これ、いいな』と思ったりするものです。でも、僕は、高校生の時は出来なかったですね(笑)今だから言えますが、自分の納得行かないボールが多くて、どうやったら良くできるかな?と色々と考えながらやっているうちに、たどりつきました。
 高校生は一発勝負で負けられないので、色々と試している時間もないし、もし打たれたらエースから2番手になる可能性もあるし、そういった怖さもあると思います。でも、良くするためにピッチング練習や、練習であっても味方に投げる時に色々試していって、バッターやキャッチャーに『あのボールどうだった?』と聞いてみるのもいいと思います。

――フォームに関しては、どのようなところをポイントにして完成させていくのでしょうか?

前田 まずは、自分で気持よく投げられるフォームが一番いいですね。あとは、自分の投球のリズムを覚えること。フォームの中で、確認箇所を作ったりとか、リズムを作るっていうのが大事です。
 僕の場合は、グラブでリズムを取っていますが、そういった気持ちよく投げられるポイントを自分で探しながらピッチングをしていったり、キャッチボールをしていったらいいとおもいます。

――前田投手は、グラブでピッチングのリズムを取られているのですね。

前田 そうです。僕は1回左足あげたときに、1回グラブを腰のあたりまで下ろしてから上げるんです。この『下ろしてから、上げる』というリズムが大事。やっぱり、一定していないとコントロールが乱れてしまうので、自分の形を探していけば、ピッチングは安定すると思います。

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[page_break:『1点も、やりたくない』]

自分がチームを“勝たせるんだ”という思い

「チームを勝利に導く意識で投げています」

――前田投手は、入団3年目以降、チームのエース格として徐々に結果も残されてきましたが、勝てる投手に必要なものは、どんなことだと思われますか?

前田 入団1~2年目と、3年目以降での違いというのは、『勝たせてもらおう』という気持ちがなくなったことですね。逆に、チームを勝利に導こうという気持ちが出て来ました。
 最初の頃は、先輩たちに勝たせてもらおうとしてましたが、今は自分がしっかり抑えてチームを勝たそうという気持ちに変わってきましたね。野球は、ピッチャーが勝率の8割を握っていると思うので、それくらいの気持ちで投げています。
 もちろん、周りに守ってもらわなければいけないけど、自分が勝たすんだという思いでマウンドにあがっていけば、自然と野手も助けてくれるもの。ピッチャーが不安そうだったり、弱そうだったりすると、チームも弱くなってしまうでしょ。
 高校時代もその気持ちが強くて、打順も4番だったので、自分が抑えて打ってという思いがありました。

――練習や試合に臨む上で大切にしているマインドはありますか?

前田 練習は楽しく、明るくやるのが一番です!いつも気合を入れていたら、もたない。その分、試合の時は自然と気合が入ってきますね。
 試合でピンチの場面であれば、抑えることしか考えてないです。展開によりますが、もう1点あげてもいいやと思って投げる時もあるし、ここは1点もあげられないという場面もあるので、そこは気持ちは変わりますけど、基本的には1点もやりたくないという思いで投げてますよ。僕は、マウンドを降りる時が一番悔しい。情けない気持ちになりますからね(笑)

――そういった思いを持つために、大切なことってなんでしょうか?

前田 僕たちも、嫌だなとか不安だなとか思う時もあるけど、とにかく自分に自信を持つことが一番です。
 不安というのは、自分に自信がないから生まれるもの。だから、そういう不安がなくなるように練習して、『俺はこれだけやってきたから大丈夫だ!』って自信を持つことが大事。なぜなら、試合になれば、自分を信じることでしか力が発揮できないと思うんです。

――では、大会前の調整方法についてお伺いしたいと思います。

前田 高校の時は、調整のために投げ込みはしていなかったですね。投げ込みをしない中でパフォーマンスをあげるには、少ない球数でも、しっかり意識を持ってやるということですね。
 数を投げればいいと思うと満足感で満たされるだけの選手も多いと思う。とはいえ、投げなければいけない選手もいるかもしれないですけど、数少ない中でどれだけ意識して投げられるかが大事だと思うんです。
 当時は、冬が終わって、大会が始まる前にすごく追い込みました。体が疲れきって、そこから疲れを取るために、軽い練習に切り替える。投げるのは、その合間にガンガンやる。
 大会前に練習試合が多く含まれているときは、連投をしましたけどね。3連投の練習として練習試合で3連投とか、そういうものありました。

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[page_break:高校球児へメッセージ]

高校野球が終わってから気付くこと

「最後の一年をすごく大事にして欲しい」

――前田選手は、ご自身の性格についてはどのように分析されているのですか?

前田 僕は基本的に人の意見を聞き入れないタイプです(笑)
 というと間違った捉え方をされてしまうかもしれないですが、もちろん人からのアドバイスは聞きますが、自分の考えを持った上で聞くようにしています。
 人の真似も好きではなくて、野球の本を読んで投球フォームを真似ることはなくて、それよりも、自分で色々と工夫しながら考えながらやってきて、今のフォームを見つけていきました。
 それでも、やっぱり多くを経験している人の意見は大きいですね。コーチとかキャッチャーとか、いつも見てくれている人から『フォームがちょっと崩れている』という意見はすごく参考になることもあります。

――では、夏に向けて頑張る高校生の皆さんに、メッセージをお願いします。

前田 僕の場合は、高校3年生最後の夏に予選で負けて、すごく悔しい思いがありました。甲子園出たかったですね。高校野球が終わった瞬間に、『もっとやりたかったな』とすごく思ったんですね。だって、今いる後輩とか同級生と野球できるのって、ほんと最後なんですよね。でも、そういうのって、終わってから気付くんですよね。もうちょっと野球したかったなって。あの時、楽しかったなとか。

 だからこそ、最後の一年をすごく大事にしてほしい。一生の思い出になると思うんで。そういう大切な時間だと思うので、大切に過ごしてもらいたい。

前田選手、ありがとうございました。いよいよ始まるWBC。日本代表のエースのひとりとして、前田選手の活躍も応援しております!

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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