試合レポート

春江工vs浦和学院

2012.11.13

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春江工vs浦和学院 | 高校野球ドットコム

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1番・竹村春樹(浦和学院)

大金星

2回表を終わって5対0で浦和学院のリード。このままでは浦和学院の快勝に終わってしまうのではないかと思っていた。2時間後。春江工浦和学院に大金星を挙げたのだ。公立校好きな方にとってこれほど爽快な気分をさせるゲームはないだろう。この試合を振り返っていきたい。

1回表、浦和学院は1番竹村 春樹(2年)がレフト前ヒットで出塁。2番贄 隼斗(2年)が犠打。3番山根 佑太(2年)はライトフライで二死となって、4番髙田 涼太(2年)が高めのスライダーを打ってセンター前へ先制のタイムリー。さらに5番木暮 騎士(2年)がレフトへヒットを放つと、一塁走者の髙田が一気に三塁へ。三塁へ投げるのを見計らって、木暮は二塁へ進む。6番斎藤 良介(2年)は2ボール2ストライクからスライダーを押し込んで左中間を破る二塁打。一気に2人が生還し、3対0と試合の主導権を握る。

さらに2回表には、一死から9番服部 将光(2年)が3ボール2ストライクから四球で出塁。1番竹村はセカンドゴロがエラーとなって、服部は三塁へ。この場面で2番贄がスクイズを成功させて1点を加えた。さらに3番山根がレフトの頭を超える二塁打となり、5対0とする。

追う春江工は2回裏、5番小野 翔大(1年)がセンター前ヒットで出塁。中島 悠(2年)は犠打で送ると、7番濱出 翔太(1年)が右中間へ落ちるタイムリーを放ち1点を返す。さらに8番坪田 和大(2年)が犠打で、9番関 隆行(1年)の死球で一死一、三塁とチャンスを広げる。1番西 啓太(1年)がライトの頭上を超える二塁打を放ち、5対2に。二死二、三塁となって、2番梅村 拓実(2年)がカーブを打ってライト線を抜ける二塁打となり、二者生還で1点差。3番木下 恵吾(2年)は2ストライク1ボールから変化球が抜けてしまい、パスボールで5対5の同点となった。浦和学院の先発・涌本 亮太(2年)はこの回で降板することになる。


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3回からマスクをかぶった高田(浦和学院)

3回から渡邊 剛(2年)をマウンドに送った浦和学院。そしてシートも、キャッチャーの西川元気(2年)をファースト。ファーストの木暮がサード。サードの髙田がキャッチャーと大きく入れ替えた。この変更の意図を浦和学院・森士監督に聞くと、

「5点取られた時にバッテリーが慌てていた。このままではさらにばたばたしてしまうので、流れを変える為に変えました」
だが勢いづいた春江工打線を凌ぐことはできなかった。

3回裏、先頭の4番栗原 隆也(1年)がセンター前ヒット、5番小野は犠打、6番中島はセンター前ヒットで一死一、三塁。7番濱出が打席に立ったところで、渡邊がボークを犯して勝ち越しに成功。
ボークによりリズムを崩した渡邊は制球が定まらず、濱出は四球。8番坪田はレフト前ヒット。満塁となったところで、伊藤 祐貴(2年)をマウンドに送った浦和学院。だが、春江工は仕掛けに出る。9番関は初球スクイズ。見事に投手・一塁手の間に転がし、スクイズ成功! 
7対5として、試合を一気にひっくり返した。

4回表、浦和学院は髙田の右中間を破る三塁打で1点を返すが、その後が続かず0を積み重ねる。リードされているという焦りが浦和学院の本来の打撃ができなくなっていた。その心理を突くように、春江工のエース・坪田はストレート、カーブ、スライダーを散らせて凡打を積み重ねていった。

追加点を入れたい春江工は7回裏、6番中島がストレートを打ち返し、センター前ヒットで出塁。7番濱出が2ストライクから犠打を決め、一死二塁。二死となって。9番関が1ボール1ストライクからのストレートを打って一、二塁間へゴロが転がる。セカンド・贄がグラブを出してとりに行くが、僅かに及ばず。打球がそれほど強くなく、前進していたライトはボールを処理するのにやっと。タイムリーとなり、貴重な追加点を決めた。

追う浦和学院だが、8回は一死一塁から9番佐藤 慶太(2年)がダブルプレーに倒れ、無得点。
試合は9回表に入る。1番竹村は1ボール2ストライクから低めのチェンジアップを流し打ちし、レフトフライ。2番贄は2ボール2ストライクから高めのカーブを捕えてセンター前ヒット。だが、3番山根がライトフライに倒れると、4番髙田はサードゴロに終わり、春江工が逃げ切った。


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粘り強く投げ抜いた坪田(春江工業)

 試合後、春江工の川村忠義監督の会見。
「試合の入り方が良くなく、どうしたんだ?と心配するほどの慌てぶりでした。とにかく選手たちには腐るな、諦めるなと伝えました。2回裏に追い付いてからやっとですが、試合に入ることができるようになって、彼らの持ち味である粘り強さを発揮してくれました」

野球は序盤で決まるものではない。9回までやって点数が高いチームが勝ちなのである。序盤で大量点を取られて、終わりだと思った時点で試合は捨てたことになり、大差で負けることにつながるのだ。彼らは諦めなかったからこそ、逆転劇を起こした。北信越大会でも接戦に強く、4試合中3試合が逆転勝ち。決勝で県大会決勝で2対15で敗れていた敦賀気比に、2対1で勝ったのだから、浦和学院という名前負けする様子は見られなかった。まさにミラクル春江工と襲名するには相応しい好ゲームだった。

敗れた浦和学院・森監督の会見
「まだ奢りがあり、自覚を持ってやっている選手とそうでない選手の偏りがある。まだ選手たちの中で、誰かがやってくれると頼りにしているところがあったと思います。チーム全員で戦うことができなかった」

今回の敗戦でいろいろと足りないものを痛感したゲームだった。選手の個々の能力は高く、今大会出場校の中でもトップレベルだろう。ただチームは成熟に達していない。自分たちの甘さを痛感した明治神宮大会。今年の冬で心身ともに逞しくなり、来年は今回の敗戦の悔しさを晴らすつもりだ。

(文=河嶋宗一

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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