県立岐阜商vs天理
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3回裏県立岐阜商業・追撃の大会第5号ソロを放った8番・山元駿介(3年)
県立岐阜商業、3年ぶり国体Vへホームで王手!
ここ近年、中央では存廃論議が様々な場でなされている国民体育大会、通称「国体」。が、実際に毎年開催地を訪れてみると、地域の皆さんが国体に抱く想いや、期待感は相当のものであることがみてとれる。
実際、この岐阜県でも新聞、テレビでのニュースは連日国体一色。ボランティアとして運営に参加される人々や、観客として会場に詰め掛ける皆さんもほとんどが笑顔。それも長い準備期間を経て作り上げたスポーツの祭典だからこそ。高校野球でも魅力の1つとしてあげられる「郷土愛」の原点がこの国体には詰まっている。
よって開催県の活躍があればその盛り上がりは2倍・3倍となる。実際、3年前の新潟国体では甲子園準優勝・日本文理の初戦においては日曜ナイターという好条件も重なり、[stadium]HARD OFFエコスタジアム新潟[/stadium]になんと22,000人が詰め掛けたこともある。高校野球は成績に応じて得点が加算されることがない「公開競技」にもかかわらず、県立岐阜商業の初戦となるこの試合でも平日昼にもかかわらず4,000人以上の観衆が[stadium]大野町総合運動公園レインボースタジアム[/stadium]を埋め尽くした。
4番・古田塁(2年)のタイムリー。6番・畔田幸大(3年)の2点三塁打。先発投手8番・中谷佳太(3年)のタイムリーで計4点。天理の猛攻に1回表はため息がバックネット裏を支配した。が、3回裏に県立岐阜商業が8番・山元駿介(3年)のセンターバックスクリーン横まで飛ばす大会第5号本塁打をきっかけに3点を返し、反撃を開始すると、スタジアムもそれを後押しするように拍手の数が増えることに。
「甲子園後は学校行事とかもあって全体練習を行ったのは1回くらい。途中でばててしまった」(橋本武徳監督)天理にも多少助けられる形になったが、5対5の7回裏に6番・藤後彰太(3年)が勝ち越し打を放ち、さらに8回裏に4点を奪うと拍手と歓声は頂点に達したのである。
地元国体における勝利の校歌に感慨深げな表情を見せる県立岐阜商業・藤田明宏監督
3年前の新潟国体で都城商業(宮崎)を破り単独優勝。「3年生にとって最後の大会ということで、持っているいいところを出して、最後に笑えるように日本一を目指すことができる」国体の楽しみ方を十分に知る藤田明宏監督は10対5で初戦を突破した試合後、こう話した。
「地元での国体は光栄に感じています。甲子園で力を出し切れずに初戦敗退(新潟明訓に1対6)に終わった悔しさはみんな持っているのし、3年生が全国で勝ちたい気持ちをよく出してくれました」
さらに、その国体優勝と、選手権全国ベスト4を見て入学してきた主将・大川鉱平(3年)はこんな話をしてくれた。
「県岐商ではベンチの中に2つのプレートがあって、全国大会で優勝すると金のプレートに名前が、準優勝すると銀のプレートに名前が刻まれるんです。3年前の先輩方は金のプレートに名前を刻まれたので、自分たちもぜひ金のプレートに名前を刻みたいです」。
今大会は台風17号の影響によって大会が一日順延となったため、決勝戦は開催されない。よって準決勝を勝てば2校が「優勝」扱いとなるため、明徳義塾と仙台育英学園の勝者と対戦する3日(水)の準決勝が即、優勝戦となる。
ならば、地域の皆さんの声援を受ける県立岐阜商業にとって有利な材料はそろった。4日(木)に同球場で市立岐阜商業との秋季県大会決勝戦「岐阜ダービー」を控えた1・2年生を励ますためにも、そして3年ぶりに金プレートに名前を刻むためにも。男子マネジャー1人を含めた3年生ベンチ入り17人の心は地元での国体優勝へ1つになろうとしている。
(文=寺下友徳)