試合レポート

報徳学園vs神戸弘陵

2012.07.21

ラストサマーらしく、熱のこもった熱戦

9回表の攻撃。二死後に打席に立った神戸弘陵の5番魚森章太(3年)が空振り三振に倒れると、石原康司監督は静かにその時を受け入れた。
「コーチ、監督を合わせて約30年、最後に良い投手と対戦して終われたので、それは良かったと思っています」

長らく歩いてきた指導者としての道を、この試合をもって終えることになった石原監督。
複雑な思いはあるだろうが、その花道にふさわしいピッチングを相手の報徳学園エース・田村伊知郎(3年)は披露してくれていた。

1回こそ、2四球で自らピンチを招くも後続を断ち、回を重ねるごとに自分らしさを取り戻していく。
「今日は腕をしっかり振ることを心掛けてきました。でも、初回は制球に気を遣いすぎて腕を振れていなかったです。そんな中でも、早いカウントから勝負できたし、自分のピッチングは出来たと思います」と田村は振り返る。

9回を投げ、打球が外野に飛んだのはわずか5球。高低をしっかり突ける絶妙なコントロールに「予想以上の出来だった」と石原監督も舌を巻いた。


でも、神戸弘陵の投手陣も負けてはいなかった。先発の西田裕亮(3年)は3点を失ったものの、被安打は3。
5回途中からマウンドに立った井上和真(2年)もその流れを引き継ぎ、報徳学園打線から快音を許さなかった。

ただ、1回の好機を逃した後の失点は、やはり悔やまれる場面だった。
「(二死一、二塁の)チャンスで田村君に打席が回ってきたとき、歩かせてもいいかな…と思っていたのですが。それでも、以降のピンチでもピッチャーは粘り強く投げてくれました。ヒットは結局うちが2本しか打てませんでしたが、良いゲームが出来た。最後の試合が報徳で良かった」と指揮官は感慨深い様子だった。

試合後のナインも、ただ涙に暮れるだけではなく、実に清々しい表情を見せていた。
甲子園出場経験のある名門同士がぶつかった一戦は、指揮官の最後の姿を見送ると同時に、神戸弘陵の新しいスタートを告げていた。

スターティングメンバー
神戸弘陵
9池上純人
8戸田聖哉
4長谷川奨 (主将)
7小池郁弥
5魚森章太
3大浦制覇
1西田裕亮
2他谷新平
6阿部力哉

報徳学園】 (主将)上野太一
6佐渡友怜王
8勝岡静也 
4永岡駿治
9吉田昌矢 
1田村伊知郎 
3片濱大輝
2中村寛
5岸田行倫
7伊地知悠真

(文=沢井史)

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

関連記事

応援メッセージを投稿

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

RANKING

人気記事

2024.05.12

【春季新潟県大会】プロ注目右腕・茨木佑太が完封!元プロの芝草監督は素材、メンタル面も絶賛!

2024.05.12

【春季京都大会】センバツベンチ外の西村がサヨナラ打!新戦力の台頭目立つ京都外大西が4強進出

2024.05.12

プロ注目の200cm右腕・菊地ハルン(千葉学芸)がセンバツ出場校との交流戦でまさかの7失点…夏までの課題は?

2024.05.12

学法石川の好捕手・大栄利哉が交流戦で復帰! 実力は攻守ともに世代トップクラス!身長200センチ右腕を攻略し、完封勝利!

2024.05.12

【和歌山】智辯和歌山が和歌山東を破って2年ぶり優勝、中西が1失点完投<春季大会>

2024.05.08

【全国各地区春季大会組み合わせ一覧】新戦力が台頭するチームはどこだ!? 新基準バットの及ぼす影響は?

2024.05.11

【24年夏全国地方大会シード校一覧】現在28地区が決定、長野では松商学園がノーシードに

2024.05.07

【鹿児島】神村学園は昨秋4強の鶴丸と初戦で対戦<NHK旗組み合わせ>

2024.05.07

【山陰】益田東と米子松蔭、鳥取城北が石見智翠館と対戦<春季大会組み合わせ>

2024.05.07

【北海道】函館大有斗、武修館などが初戦を突破<春季全道大会支部予選>

2024.04.21

【愛知】愛工大名電が東邦に敗れ、夏ノーシードに!シード校が決定<春季大会>

2024.04.22

【春季愛知県大会】中部大春日丘がビッグイニングで流れを引き寄せ、豊橋中央を退ける

2024.04.29

【福島】東日本国際大昌平、磐城、会津北嶺、会津学鳳が県大会切符<春季県大会支部予選>

2024.04.23

【大学野球部24年度新入生一覧】甲子園のスター、ドラフト候補、プロを選ばなかった高校日本代表はどの大学に入った?

2024.04.22

【鳥取】昨年秋と同じく、米子松蔭と鳥取城北が決勝へ<春季県大会>