野球におけるスタミナアップとコンディショニング(1/2)
第53回 野球におけるスタミナアップとコンディショニング2011年12月30日
特集『身体と心のスタミナアップ法』タイアップ企画
野球において必要なスタミナについて殖栗正登が解説
皆さんこんにちは。(有)ベースボールトレーナーズの殖栗正登です。今月の高校野球ドットコムの特集『身体と心のスタミナアップ法』とタイアップし、今回は野球という競技においてのスタミナアップトレーニングについてお話します。
野球というスポーツと有酸素能力
野球の試合は2-3時間かかり、攻守が明確に分かれていて、攻撃中はダグアウト(ベンチ)で座って休みがとれます。もし走ったとしても最も長くてランニングホームランの120mくらいです。
守備中は、内野の守備範囲は20m位、外野で50m位であるので、エアロビック(酸素を十分に摂取しながら行う長時間の運動)な持久力は必要ではないとされています。しかし、投手においてはどうでしょうか。
■野球選手の有酸素能力について
エアロビックパワー(有酸素能力)の指標である最大酸素摂取量ですが、プロ野球選手で3.55±0.38l(リットル)/分です。体重で割ると、44.5±3/0ml/分となり、メジャーにおいてもこの値が50ml以上はほとんどいません。このことから、野球選手においてエアロビックキャパシティ(容量)は低いと言えます。
また、野手と投手の差もほとんどなく、他のトップスポーツ選手と比べても低い値であることがわかります。野球選手の有酸素的レベルはトップスポーツ選手より低く、一般人より少し高いといった所なのです。
野球選手の筋持久力
次に野球における筋肉が、いかに長時間作業できるかについて考えて行きましょう。
■握力&腕力
プロ野球選手で、5秒に1回握力を図り、50回でどれほど筋力が落ちるかというテストがありました。その結果、1回目の握力を100%とすると、50回目で投手で76.8%、野手で74.9%まで低下しました。投手の方が持久力に優れていることがわかります。腕力のテストでも同じ結果が得られました。
■肩
肩においてはどうでしょうか。スローイング動作のメインである内外旋について、中間位での内外旋300度/秒で30回を行ったサイベックス350の実験によると、外旋62.6%、内旋61.2%まで肩の力が低下しました。投手、野手の差は少なかったのですが、非投球腕(球を投げる腕の逆)の内旋は、投手が63.7%、野球が54.9%と大きい差がありました。
■ヒザ
ヒザの屈曲は軸足53.6%、踏み込み足50.3%、ヒザの伸展は軸足52.5%、踏み込み足51.6%で、投手と野手に差はありませんでした。しかし、投手の軸足の伸展能力には差がありました。
■腹筋
プロ野球選手の腹筋回数(30秒あたり)の平均は、投手で35回、野手で33回と差はあまりありません。
測定結果から考える身体のスタミナアップ法
以上の計測結果から考えると、野球のコンディションからエアロビック能力においては、体重あたり45~50ml/kg/分が必要です。エアロバイクなどで最大酸素摂取量を測定して、この数値より低ければエアロビックパワーのトレーニングが必要です。
すでに十分な数値であれば、野球選手においては、必要以上に長距離走やインターバルトレーニングを行う意味はないと言えます。なのでコンディション維持のために、週に一度か二度のインターバルトレーニングをお勧めします。
今回は野球におけるスタミナアップとコンディショニングということで、持久力の目安となる数値について解説しました。次回は実際のトレーニング方法についてご紹介していきます。