履正社vs水口
水口のエース・高橋康
初戦の那賀戦で見せた、力みのないゆったりとしたフォームが、少し一転した印象がみえたのだ。「相手が履正社と言うことで、ちょっと力が入っていましたね。彼の場合は、球速よりも球のキレで勝負するピッチャーですが、今日はキレがなかったですね」と小関監督はいう。
2番手で登板した谷(水口)
打点の高い投球フォームが魅力の2番手・谷も、履正社打線の集中打を浴びた。8安打4失点、相手の主砲・小保根に特大の本塁打を浴びて降板。「緊張していて、最初から自分の力が出せなかった。バックの声で落ち着いたんですが、最後は捉えられてしまった」と唇を噛む。
2人で10失点をしながらも、彼らを取り上げるのは、何も同情しているからではない。彼らには魅力があるからだ。
高橋は186センチという長身が武器になだろうし、打点の高い投球フォームから駆使する谷のストレートは、一味違う。ただ、課題が多い。高橋は「今日は甘い球も、コースに投げた球も全部持って行かれた。この冬、しっかり走り込んで、甘くても打たれない、ストレートで空振りが取れるピッチャーを目指して行きたい」と再起を誓う。
一方、この日が故障明けの復帰登板だったという谷。昨夏にひじを故障し、今大会が復帰してから初めてのマウンドだった。だから、「投げられたのが良かった」と語るが、半面、課題もあったのも、また事実である。
「怪我をして投げられなかった時は、高橋が投げているのをみて、悔しかった。これからはエースを取るくらいのつもりで頑張りたい」と谷は話している。
共に135キロ前後と言うストレートの球速は、まだまだ物足りない。大きな武器を持つ二人が「良いライバル関係」として切磋琢磨することで、その力は大きく伸びるはずだ。履正社と対戦した事も大きな力になるだろう。小関監督は言う。
「履正社と対戦して、全国レベルを肌で感じ取られたことは大きな財産になる。投手陣は、全体的なレベルアップをして、この経験をこれからに生かして欲しい」と小関監督は今後に期待を込める。
「二人で競って二枚看板となって、来年の夏には甲子園で履正社にリベンジしたい」と意気込む二人。
近畿大会という舞台で、二人は何を感じたのか。その価値は、これからの彼らの努力で大きく変わる。
(文=氏原英明)