試合レポート

日大三vs習志野

2011.10.06

日大三vs習志野 | 高校野球ドットコム

サヨナラのホームを踏もうとする横尾(日大三)

劇的なサヨナラ弾で日大三が優勝

3年生にとって約2年半という濃密な時の流れが、クライマックスを迎えようとしていた。8回裏の攻撃を終了し、2-3と1点ビハインドの日大三は、それぞれが各ポジションに就こうとベンチから飛び出し、投手の吉永健太朗もマウンドに向おうとしていた。すると三塁手の横尾俊建が、吉永に歩み寄ってこう声を掛けた。「3者連続三振で勢いをつけてくれ」
するとどうだろう。吉永は7番・松山大志、8番・泉澤涼太、9番・片桐憲吾をものの見事にすべてフォークで3者連続三振に仕留めたのである。
「お願いしたことを本当に吉永がやってくれたので、これでいけると思いました」(横尾)

そして迎えた9回裏、日大三の攻撃。二塁打で出塁した金子凌也を二塁上に置きながらもすでにツーアウト。習志野の優勝が目の前に迫っていた。しかし、日大三の4番・横尾にとっては、プレッシャーなんて皆無だというような雰囲気さえ漂わせ、逆の言い方をすれば、まさに見せ場がきたなと楽しんでいるようでもあった。

「後ろに高山がいますし、正直、これが甲子園だったら、繋ぎにいくという大事なところだったのですけど、(ホームランを)狙いにいきました」

その横尾に対して、それまで超強力打線の日大三を被安打8の失点2に抑えていた習志野の泉澤は、142球目にフォークボールを投じた。満身の力で横尾が捉えた打球は左翼に舞い上がり、そのままスタンドに突き刺さった。横尾にとって高校通算58号となる国体決勝での劇的サヨナラ弾だ。一塁側ベンチから飛び出した日大三ナインは、ホームベース付近に集まり、横尾は揉みくしゃにされ、歓喜の渦を巻き起こした。
「ストレート待ちだったのですけど、ホームラン狙いだったので、甘いところにきた球を振っていきました」とホームラン狙いとはいえ、好球必打の姿勢は区切りの一打でも変わらなかった。超高校級の強烈なスイングと正確さ、失投を待ち構える落ち着きから放たれた一発が最高の結末を生んだ。

この日、第3打席でも右越えの本塁打を放ち、2本塁打を含む4打数3安打。さらにチームの全打点となる4打点を稼ぐなど打ちまくった横尾は「受験勉強であまり練習ができなかったのですけど、食べる量は同じなので、体重も82キロから85キロまで太って打球が飛ぶようになりましたね」と最後には報道陣を笑わせていたが、国体の2回戦が行われた10月3日の夕方には慶大合格ということ吉報も届いていた。早大進学予定のエース吉永らとともに今度は舞台を神宮に移して東京六大学の門を叩くことになる。

試合後、日大三の小倉全由監督が「甲子園の優勝で周りから注目されているので、当たり前ですけど、いい野球をやることで責任を果たせた」というように、あくまで自分たちの野球を貫いた日大三に野球の神様が微笑んだのだろうか。
ただ、これだけははっきりしている。超高校級のタレントが揃うチームと言われながらも、昨秋から最も成長を遂げたチーム、それが今年の日大三である。

(文=編集部:アストロ

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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