試合レポート

成章vs犬山

2011.07.12

成章vs犬山 | 高校野球ドットコム

山本大貴(成章)

「軟投派」と「素材型」 成章、対照的な2年生リレー

夏の高校野球愛知大会は10日、1回戦25試合を行い、[stadium]豊橋市民球場[/stadium]では成章が6対1で犬山を下し、2回戦進出を決めた。

試合は初回、3番打者の松坂竜希が三塁強襲ヒットで出塁すると、4番の山本大貴がライトへタイムリー二塁打を放ち先制。バットのヘッドで高めのスライダーを巻いた上手いバッティングだった。その後も5番竹内瑞貴のタイムリーや相手守備陣のエラーで加点し、序盤から試合を優位に進めた。

それでも、試合後の糟谷寛文監督は若干、不満な様子も見せた。スクイズをフライにしてしまうなど、好機で無得点に終わった2回裏の拙攻を例に挙げ、「押せるところは押さなければ。隙が出てしまった。そのため、相手チームに『何とかなるかも』という雰囲気が出てきてしまったんです。普通に打てばいいところでも(自軍の打者が)力んでしまって…」と、攻めきれなかった試合運びを反省した。

そんな中踏ん張ったのが、成章の2年生投手陣だ。初戦の相手が犬山に決まった時から、糟谷監督が先発起用を予定していた原田拓希。「打たれるけど崩れない。球が遅くても、打たせてとることができる」(監督談)という原田が、相手打線に本来のバッティングをさせなかった。原田はランナーが出ると、走者牽制の意味もあってか、じっくり間をとって投げる。試合時間短縮を求めるあまり、試合進行を急かされることも多い高校野球だが、1点を守るため、与えられた時間をいっぱいに利用しながら1つずつアウトを重ねるピッチングは、まさに「崩れない」原田の持ち味だ。
「先発は試合前のアップのときに言い渡されましたが、心の中では最初から先発で投げる気でいました。味方が守ってくれるので、周りを信頼し、四球だけは出さないように気をつけました」と、この日の好投をさわやかに振り返った。


成章vs犬山 | 高校野球ドットコム

米田一貴(成章)

原田のあとを継いで終盤2イニングスを抑えたのが米田一貴だ。さきの原田は、上背や球速がない分コントロールで勝負する「軟投派」。それに対し、米田は187センチの長身で、球は荒れても力で抑える「素材型」。やや変則気味に腕を下げたフォームだから、右打者にとっては自らの背中より後方から球が来るように感じるはずで、「俺ならバッターボックスに立ちたくない」と糟谷監督が言うほどだ。しかも、長い腕がなかなか出てこないため、練習試合で対戦した強豪校の打者も詰まっていたという。「結構周りが見られて、リラックスして投げることが出来ました」と、こちらも爽快な様子で話した。

スタイルが対照的な2年生投手のリレーで、次戦に駒を進めた成章。08年春、21世紀枠でセンバツ甲子園に出場した学校だけに、地元の期待も大きい。

敗れた犬山は、ベスト16まで勝ち進んだ前年の快進撃を再現できなかった。今年は守備のミスなどで失点を許す厳しい展開になった。

5番に座る西山祐太郎は昨夏、5試合で2本のホームランを放った長距離砲だ。173センチ・103キロという見るからにパワー溢れる体型で、バットのヘッドに当てただけでも打球は飛んでいく。この日は第3、第4打席にヒットを放ったものの、チャンスで三振した前半の打席を「つまらない変化球に手を出してしまった」と悔やんだ。自身やチームにミスが続いたことについては、「普段は、行動に自ずと結果がついてくるという『行動意識』を心がけてきたのに、今日は勝とうと思いすぎて結果ばかり求める『結果意識』になってしまった」と、心理面の微妙な動揺を原因に挙げた。それでも、冬のケガ・手術を乗り越えて、スイングスピードも戻ってきてはいた。グラウンドでその存在感は発揮していた。
先発のエース・松本新太は、変則的なモーションから腕を押し込むサイドハンド。敵将・糟谷監督が「球がキレていた」と認める投球で、序盤に3点を失っても、集中力の糸が切れることはなかった。

(文=尾関 雄一朗

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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