Column

連戦に臨むための準備

2011.07.05

第24回 連戦に臨むための準備2011年07月05日

こんにちは、アスレティックトレーナーの西村典子です。

甲子園を目指す夏の地方大会のシーズンがやってきました。三年生にとっては高校野球最後の大会です。持てる力を十二分に発揮して悔いのない戦いをしてほしいと思います。さて今回はそんな地方大会を勝ち抜くために、知っておきたい試合前の準備や、連戦になった場合の対応などについてお話をしたいと思います。

試合前に心がけることとしては、身体に疲労をためないようにすることと、試合への準備を行うことがあげられます。大会にかける意気込みから練習量が増えたり、練習時間が遅くなったりすることも考えられますが、練習での疲労を残しているようでは、肝心の試合時に「力が発揮できなかった」ということにもなりかねません。生活リズムは出来るだけ普段通りに行い、試合に向けて万全の準備を行いたいところです。

《疲労をためない工夫》
技術練習後は、軽くジョギングやウォーキングなどを行うようにしましょう。使った筋肉を軽い運動でほぐすことで疲労物質を体内にため込まないようにします。その後、クールダウンとしてストレッチを行うことや、痛みや違和感のある部位に関してはアイシングを行うことも効果的です。短時間のアイシング(10~15分程度)は疲労回復にも良い影響を及ぼすと言われています。自宅に戻ってからは必ず湯船につかって入浴を。疲労回復のためのキーポイントは「体内の血液循環を良くする」ことなのです(第14回コラム「入浴でしっかり疲労回復」を参照)。


《試合に対する準備》
試合日程や時間が決まったら、その試合に向けての準備を行いましょう。特に意識してほしいのが睡眠です。寝不足で試合を行うことは当然パフォーマンスにも悪影響を及ぼしますが、ただたくさん寝ることだけでも準備不足。試合開始時間にはしっかりと体が起きた状態で動くことが出来るように、逆算して睡眠をとるようにしましょう。個人差はありますが、最低でも起床から2~3時間経たないと身体は覚醒しないと言われています。ウォームアップや試合会場に行くまでの時間を考えて、余裕をもった睡眠を心がけるようにしましょう。何日か前から試合に向けて、起床時間を調整することも準備の一つです。

早朝の試合日程になった場合は、試合開始時間から逆算するとかなり朝早く起きなければならないこともあるかもしれません。そんなときは朝、目が覚めたらまずはお風呂場へ直行。入浴やシャワーなどで目を覚ましましょう。出来れば湯船につかって入浴をすると目が覚めるだけでなく、身体の中が温まるウォームアップ効果も期待できます。肩まで全部つからずに腰のあたりまで湯船につかる半身浴でも効果はあります。早朝の試合に、実際に選手全員に入浴を指示しているチームなどもありますが、理にかなった試合前の準備といえるでしょう。

さて試合当日は必ず朝食をとるようにしましょう。朝食をとることで、体温が上昇します。暑い時期ですがなるべく身体を冷やさないよう、冷たい食べ物は出来るだけ控えて常温や温かいものを食べるようにします。朝食についてはすぐにエネルギー源となる炭水化物(ご飯、パン、うどんなど)を中心に食べるようにしますが、食べ過ぎは身体が重くなってしまうことにもつながるので注意が必要です。炭水化物は消化されるのに4時間程度はかかるため、少し控えめにして、試合時の補食(バナナやゼリー、おにぎり、パンなどすぐに食べられるもの)で補うようにしましょう。


《連戦への対応》
日程が詰まって試合が毎日続くようになると、試合当日の疲労をいかに翌日に持ち越さないかがポイントになります。疲労をためない工夫として紹介した一連のクールダウンはもちろんですが、試合後の食事には疲労回復のビタミンとも呼ばれるビタミンB1を含む食材を多くとるようにしましょう。代表的なものが豚肉です。豚肉料理を中心にバランスの良い食事を心がけ、生ものはなるべく避けるようにします。生ものは火を通さないだけに食あたりを起こすリスクがあるからです。明日の試合に腹痛で力を発揮できなかった、という悔しい思いをしたくはないですよね。

またサプリメントなどの補助食品を準備できるのであれば、筋肉痛や筋疲労への効果が期待できるBCAA(分岐鎖アミノ酸)を。ただしこちらはあくまでも補助食品ですので、過信は禁物です。

また暑い時期だと部屋ではクーラーをつけていることも多いかと思いますが、寝る前にはクーラーを切るようにしましょう。クーラーの風を直接受けて寝てしまうと身体が冷えてしまい、体調不良の原因となります。くれぐれも疲れ過ぎて、クーラーをつけっぱなしで寝てしまったということのないようにしたいものです。薄手でもいいので長袖・長ズボンで身体を冷やしすぎないことも大切です。冷たいタオルや氷などをうまく使って、暑さをしのぐ工夫を心がけてください。

《日焼け対策》
野球は日焼けするのが当たり前と思われていますが、日焼けに対しても適切な対応をとる必要があります。日焼けは皮膚が炎症を起こした状態とであり、疲労の原因ともなるからです。少しずつ暑さや日差しに慣れることで身体は順応していきますが、連戦の続く炎天下では日焼けによる疲労を考慮し、日焼け止めを塗るなどの対応を行うようにしましょう。日焼け止めはSPFの数値が高いものがより効果が高いとされています。ただ汗などによって流れてしまうことも考えると、試合前、そして試合中にもこまめに塗りなおしましょう。また必要以上に屋外に出ないことも大切です。試合後のミーティングやストレッチなど、出来る限り日差しを避けて日陰で行うように心がけましょう。

夏の試合に向けた対応についてお話をしてきましたが、出来るだけ良いコンディションで臨むことが良いパフォーマンスを引き出します。明日の試合に向けて、出来ることを今から取り組んでみてください。皆さんの健闘を祈ります!!

(文=西村 典子

次回、第25回公開は07月30日を予定しております。

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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