目的設定していますか?
目的設定していますか?2011年05月10日
目標と目的の違いを意識しよう
東日本大震災から2ヶ月…選抜では東北高校の勇姿が、プロ野球では東北楽天ゴールデンイーグルスのプレーが全国の皆さんに勇気と元気を与えています。今回のコラムは、その要因が分かるかと思われます。
前回のコラムで『本気』と『一生懸命』の違いを説明させて頂きました。
どうですか?皆さんは今まで『本気』で取り組んでいましたか?野球の練習のみならず、日常生活を含むあらゆることを…
今までは『一生懸命』だったな…これからは『本気』でやろう!!と思った素直な皆さん。必ずこれから上達しますよ。しかし、まだどうしても『本気』になれない……という選手もいることでしょう。では、なぜ『本気』になれないかを今回は説明したいと思います。
皆さん、『目標設定』はされていますか?ほとんどのチームがされていると思います。そして大半の高校が『甲子園出場』ではないでしょうか?このような『目標設定』はかなり重要です。これに関しては色々な方が言われていることで、異論はないと思われます。しかし、それ以上に重要なのが、『目的設定』なんです。
皆さん『目標』と『目的』の違いは何か分かりますか?今回は『目標』と『目的』の違いについてです。どんな違いがあるのか、考えてみて下さい。
燃え尽き症候群とは?
まず『目標』とは、『結果』でしかありません。『日本一』『甲子園出場』『県大会出場』『プロ野球選手』これらの『目標』は全て『結果』なのです。
『結果』は必ず達成できるものではありません。達成できないことも、もちろんあるのです。しかし、達成できるものではないと分かっていても追い求めなければなりません。
できるかできないかではなく、やりたいかやりたくないかで、考えなければなりませんから。ただ『目標設定』のみで『目的設定』をしていなかった選手がどうなる可能性があるのか。
これはよく聞かれると思います『燃え尽き症候群』『バーンアウトシンドローム』です。なぜそうなり易いのか?
先ほども説明させて頂いたとおり、『目標』は『結果』ですので、必ず達成できるわけではなく、叶わないときがあるのです。 そうなると選手はどう感じるのか。
『やっぱ俺たちダメだった』『今までこれだけ練習してきたのに』『これからどうしよう…』
となってしまい、今までやってきたことを次に繋げることができなくなるのです。これは小学生でも中学生でも最後の大会の後に選手が生じ易いのです。それで有望な選手が野球を辞めてしまっている現状があるのです。そんな選手を沢山見てきました。では、『目的設定』とはどうすればいいのか?
憧れの地 甲子園球場
それは簡単に言うと『何のために』なんです。『何のために』その『目標』を達成しようとしているのか?これがあるかないかで、選手の将来がかなり変わってしまうのです。
私は現在、この『目的設定』をかなり重要視して選手に指導させて頂いております。皆さんは、『何のために』、『日本一』『甲子園出場』『県大会出場』『プロ野球選手』の目標を叶えようとしているのですか?これが重要なのです。
それは何故かというと、この『目的』が明確であれば、『目標』は違う『目標』に変えることができるからです。
これは元西武ライオンズの工藤投手が講演会で話していたことですが、工藤選手は野球をすることが嫌いだったそうです。では『何のために』工藤選手は『プロ野球選手』になったのでしょう。
それは『お金に苦労して育ててくれたお母さんを楽にしてやりたい』という『目的』があったからです。だから嫌いな野球でも、お母さんのために必死で頑張り、結果を残していったのです。
日々の練習の中で何を考えるか
元巨人の桑田さんの『目的』は何だったのか
小さい頃からスパルタ教育でお父さんから野球指導されていた桑田さん。その桑田さんを優しく見守ってくれていたのがお母さんなのです。そんなお母さんに桑田さんは家を買ってあげたいと思っていたそうです。
ですから、桑田さんはPL学園在学中、『甲子園で優勝』してもお母さんには家を建ててあげられない。『プロ野球選手』にならないと、と思いながら日々の練習に取り組んでいたそうです。
野球の能力に恵まれてプロ野球選手という夢が叶った2人ですが、もし、『結果』である『目標』(プロ野球選手)が達成されなかったら、この2人は違う仕事でも『お母さんを楽にしてあげたり』『お母さんに家を建ててあげたり』していたでしょう。お金の大小はあったとしても、しっかりと『目的』を達成したと思います。
ですから『目的設定』をしていれば、『目標』が達成できなくても、必ず違う『目標』で『目的』を達成することとなるのです。
甲子園出場ではない別の目的とは
記憶に新しい2009年夏、花巻東が準決勝で優勝した中京大中京に敗退した試合…皆さんこの試合の終了後に、甲子園史上珍しい出来事があったのを覚えておられますか?これこそ『何のために』がしっかりとしている高校だなと感じた出来事でした。
それは花巻東の選手たちが敗退後、アルプススタンドへあいさつを終えた後に起こります。
選手たちはベンチ前で泣きじゃくるのです。選手みんなが肩を叩き合い、抱き合い、涙を流しながら、声を出しながら集まっているのです。すると、通常甲子園で試合終了後に見られる光景が見られません。それは何なのか?
それは甲子園伝統の儀式ともいわれる「甲子園の土」を取らないのです。誰一人として甲子園の土を取らないのです。
1・2 年生でまた来年甲子園に来るんだ、という思いで甲子園の土を取らなかった選手はいたでしょうが、3年生を含む選手全員が甲子園の土を取らなかったのは本当に珍しいことでした。彼らは甲子園の土を取るよりも、今まで一緒に戦ってきた、練習してきた、生活してきた仲間たちと健闘を称えあうことが、彼らの『目的』を達成させることだったのだと思います。
『甲子園に出場する』『負けたら甲子園の土を持って帰る』などという『結果』ではなく、彼らなりの『目的』が明確であったはずです。でなければあのような行動を取らないでしょう。感動と共に感心させられた出来事でした。
自分だけではなく応援してくれる人のために
そしてこの『目的』には2つの種類があるのです。それは『自分のために』と『誰かのために』の2つです。これは2つとも大事となります。
『自分のために』の代表的な『目的』が、『野球が好き』です。他にも『有名になりたい』『目立ちたい』『モテたい』などでしょうか。これも非常に重要な『目的』です。『野球が好き』であれば、甲子園に行けなくても、プロ野球選手になれなくても、野球に関わる仕事につくことで『目的』は達成されるでしょう。『目立ちたい』のであれば、甲子園に行けなくても、プロ野球選手になれなくても、他の何かで目立つようなことができれば『目的』は達成されるでしょう。
そしてもう1つ『誰かのために』これは先に挙げた工藤選手や桑田さんの話がこれにあたります。どちらも重要な『目的』ですが、やはり『誰かのために』の方が強い気持ちを持つことができます。『自分のため』は諦め易いのです。辞めても困るのは自分だけですから。しかし『誰かのため』は、そう簡単に諦められません。どんなに苦しんでも、『誰かのために』目の前にある苦しい練習を耐え抜くのです。だから『本気』になれるのです。
楽天の嶋選手が地元で初の試合をした後に、このような言葉を口にしました。
『この1ヵ月半で分かったことがあります。それは、誰かのために戦うものは強いということです』
正しく『誰かのために』ですね。今年の楽天は本当に頑張って欲しいものです。
さあ、皆さんも是非『目的設定』してみましょう!しかも『自分のために』と『誰かのために』の両方を立てて下さいね。そうすれば、これからの人生どんな困難なことがあっても必ず乗り越える大きな力になると思います。次回は私の『目的』を紹介させて頂きます。
(文・久保田 正一)