向陽vs和歌山西
向陽 東山拓真投手
ケガの功名?
昨春の選抜大会に21世紀枠で出場した向陽。夏の和歌山大会でも準優勝と、旧チームは大いに沸かせた。その次の代のチーム。甲子園でスタメン起用された選手が4人残るが、秋の大会は一次戦の3回戦で紀央館に敗れて、9月23日の時点で連続出場の望みが断たれた。
その秋に大きな課題として残ったのが、公式戦で表れる硬さ。そしてエースになった東山拓真(3年)の覚醒が大きなカギになっていた。
この春。県大会1回戦で和歌山高専を完封し、兆しを見せた東山拓。2回戦となったこの日は、思わぬ形でチームの成長度が問われた。
立ち上がりを「ヤバかった」と振り返った東山拓。4本のヒットを浴び、エラーなども重なって3点を失った。「東山(拓真)は、昨日の練習でものすごく調子が悪かった」と石谷俊文監督の不安が的中した。
ただ、チームの成果をみる上では、この3点ビハインドは大きな要素になった。
1回裏、2回裏と向陽は1点ずつを還す。しかし共に相手のエラーによるもの。
「練習試合では打てるのですが、公式戦になると硬くなってしまっている」と石谷監督は課題がまだ克服できていないことを実感していた。
一方、点を返したことで勇気をもらったのはエース。「コースは高かった」と反省したが、直球のノビは戻り、キレ味するどいスライダーで和歌山西打線を手玉に取っていった。結局2回以降で打たれたヒットは2本だけ。
向陽 津村勇宜主将02(4月から捕手に転向)
打線は4回に1番後藤拓磨(3年)の二塁打で同点、5回には7番長田龍誠(3年)の犠牲フライで逆転に成功。1点差での勝利をものにした。結果的には1回に失った3点のビハインドを取り返したのである。ケガの功名ではあったが、勝てたことで一つのテーマはクリアしたと言えるだろう。
『甲子園に出た次の世代』
何代も続けて出ているチームならいざ知らず、久々に出たチームは次の世代が経験をどう生かすか難しい問題だ。
秋に早い時点で敗れた向陽は、この春もまだ試行錯誤の段階。昨春の選抜でサード、新チーム結成時にショートを守っていた主将の津村勇宜(3年)が4月からキャッチャーにコンバートされたのがその一例。
「捕手がウイークポイントだった。津村が3週間前からマスクを被って、東山(拓真)とのバッテリーでまだ負けていない」と石谷監督は話す。
東山拓も「今までは練習でも受けてもらったことはなかった。でも津村も去年から経験を積んできているので、安心して投げられます」と信頼を送る。
試行錯誤しながらも、公式戦を勝てていれば、経験値は計り知れない。48年ぶりに春の県大会を制した一昨年のように今はまず勝ち続けることが夏への第一歩だ。
(文=松倉雄太)