鹿屋vs鹿屋中央
照屋和輝(鹿屋)
勝負根性
1点リードの9回-。
普通、どんな凄いピッチャーでもそのマウンドに立つということは、意識するものである。
しかもその先頭の相手が前の打席でセンターオーバーの三塁打を放っている4番打者というのだから、その度合いも増すはず。
そんなマウンドに立ったのは、鹿屋の2年生右腕・照屋和輝。
カウント、3ボール2ストライク。
三塁打を打たれた前の打席でも同じカウントだった。
「自分で逃げているなと思ったので、思いっ切り投げました」(照屋)
力いっぱい投げた高めのストレートに鹿屋中央の4番・東瑞樹の打球を詰まらせ、センター・児玉茂喜のグラブに収まった。
まさに投手としての真骨頂を発揮した一球だった。
そんな照屋、前日の準決勝・神村学園戦(2011年04月03日)で8回を10安打、6失点と打たれたことで悔し泣きをしていたという。
それをある人から聞いた山内昭人監督は「その悔しさをみせてもらいたかった」と前夜にこの日の先発を照屋に言い渡した。
この日の相手は、新チーム結成以来、4連敗中の鹿屋中央。同じ鹿屋市内にあり、最も近くの高校である。
試合前、円陣を組んだ鹿屋ナインに山内監督はこういった。
「我慢して(引きつけて)ショート方向にゴロを打つように」
そして前日の負けた経験を生かすために“ゴロを転がす、四球を出さない”という野球の原点を再確認した鹿屋ナインは、それをキッチリと守った。
まず、“ゴロを転がす”を実行した鹿屋は、初回、2番・山之内克明が三遊間へゴロを転がして内野安打。それを皮切りに5番・栗田晃仁の左前適時打などで鹿屋が2点を先制した。
投げては、照屋が決して調子がよいとはいえない状況の中、緩急をうまく使い、無四球(“四球を出さない”)の完投。
負けた経験を生かし、その力を最大限に発揮した鹿屋は、3位決定戦という舞台で、4戦連敗中の鹿屋中央に初めて勝ったのだ。
九州大会では、センバツ出場の鹿児島実をはじめ、今大会ベスト4の計5校が鹿児島代表として出場する。そして唯一の公立校・鹿児島県立鹿屋は鹿児島の3位校として挑むこととなった。
山内監督へのインタビューの中で、今年の鹿屋というチームを象徴しているコメントがあった。
「ミスをなくして食らいついていけば、やれないことはない」
その“勝負根性”、みせる舞台は整った。
(文=PNアストロ)