金沢高等学校(石川)
金沢高等学校(石川)2011年01月26日
一年の半分は室内で練習
常に工夫を凝らした練習をする浅井監督
石川金沢高校の場合、毎年11月から2月までの4カ月間、そしてシーズン中でも、雨でグラウンドを使えない日を含めると、なんと一年のうち約半分は室内練習場で野球をしている計算になる。そんな環境の中でも、昨秋は北信越大会の頂点に立ち、7年ぶりのセンバツ出場への切符を手繰り寄せた。また、過去8回出場しているセンバツでも初戦で敗れたのは二度だけ。さらに同大会でベスト8に3回進出を果たすなど、グラウンドが使えない環境であっても、センバツに向けて完璧に照準を合わせてくるという驚異的なチームだ。
「そりゃ毎日外で野球をやっているチームには勝てません。
でも、もしそういったチームに勝とうと思うなら、私たちがもっと考える力をつけなければいけませんよね」
今年で就任18年目(部長時代を含むと30年目)となる浅井監督は思考を凝らし、室内練習場をいかに有効に使えばいいかを日々自問してきた。
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【目次】
1ページ:一年の半分は室内で練習
2ページ:限られた空間で金属バットを使った打撃練習
3ページ:室内は選手との距離が近いからこそ、気付ける長所
4ページ:「ちゃんと考えていますか?」
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限られた空間で金属バットを使った打撃練習
オフシーズンでも室内で金属バットを使った打撃練習
最近、私立の強豪勢の中には大きな室内練習場を完備するチームが増えているが、石川金沢高校の室内場は昭和58年に造られたもので、決して充実しているとは言い難い。投球練習するにも、横に4人並んで投げられるだけの幅だ。そんな中での打撃練習といえば、普通ならトスバッティングや、バッティングピッチャーを入れても木製バットで打つのみで終わるが、金沢の場合は違う。打者を5人並べて金属バットで思いっきり打つのだ。ピッチャー5人の前と左右には、既存のネットをうまく組み合わせて、どこからもボールが入ってこないよう完全防備。室内であっても、外で野球をしているチームさながらの実践的な打撃練習。実はこの練習は、既存のネットをどの配置で、どう置くのかがミソとなる。これも浅井監督が地道にネットの大きさを測って、どうしたら安全に金属バットで打つことができるかを計算し尽くして完成した執念の練習方法なのだ。
さらに、打つだけではなく、打率も意識させる。バッティングピッチャーの後ろには、バッターの打率をメモする係の選手たちが控える。フライ・ライナー・ゴロの数をメモ帳に記入し、その日一日の打率を伝える。最低ラインは5割以上。
「5割いかない子は体の軸が動いていますよね」と、練習を見ながら選手たちに細かくアドバイスを送る浅井監督。
また、トスバッティングにおいても日替わりで5種類のメニューが組まれている。『左右打ち(200~400本)・早打ち(50~100本)・息止め打ち(150~200本)・2個打ち・伸脚打ち』とバリエーション豊か。この日のメニュー『左右打ち』は、右打ちであっても、右で打ったあとすぐに後ろからトスがあがるため左打ち。またすぐに後ろからトスがあがって右打ちと、繰り返していくもの。体の軸を上手く使えるようになることで、自然と“壁”も作れるようになる。
守備練習でも石川金沢は実践を意識したメニューをこなしている。カットプレーやランダンプレー。4~6か所ボール回し、内野ボール回しのダブルプレー編など。これも大きな室内練習場がなくても、「どうしたらできるかを考え続ける」ことでグラウンドにいる時と同じ流れで練習を行うことが可能になるのだという。
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【目次】
1ページ:一年の半分は室内で練習
2ページ:限られた空間で金属バットを使った打撃練習
3ページ:室内は選手との距離が近いからこそ、気付ける長所
4ページ:「ちゃんと考えていますか?」
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室内は選手との距離が近いからこそ、気付ける長所
練習や寮でも選手と監督の会話が多い
室内練習場は、グラウンドよりも選手と指導陣との距離が物理的に近くなる。狭い室内であればあるほど、必然と選手一人ひとりのプレーを近くで見ることができるからだ。
そのメリットを生かして、浅井監督は常に選手の長所を探している。
「毎日発見ですよね。近くで見れる分、守備でも色んな動きをさせることで当てはまるポジションが見えてきます」。
昨夏まで投手だった2年生の丹保雄志も、秋から捕手に転向した一人。捕手になって初の公式戦で、好投手・釜田佳直をリードして、秋の北信越大会では優勝捕手となるなど、彼のポテンシャルの高さを浅井監督は見事に見抜いた。
投手としてもチームの2番手としてマウンドにもあがった。他の選手においても、浅井監督の頭の中にはすでに複数のコンバート構想があるようだ。
「丹保のような選手がチームに一人でもいないと困る。だから毎年、見つけ出すんです」。マネージャー陣もそうだ。ふとした時の行動を見て、浅井監督がその選手をスカウトする。監督から選ばれるだけあって、金沢高校のマネージャー陣は“気付き力”がとても高い。
休むことなく、常に自分で仕事を見つけては動き回っている。マネージャーにしても、ポジション転向にしても「適任者がいない時はどうするんですか?」の問いに「必ずいるんです。それを見つけ出すんです」と浅井監督は言い切る。
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【目次】
1ページ:一年の半分は室内で練習
2ページ:限られた空間で金属バットを使った打撃練習
3ページ:室内は選手との距離が近いからこそ、気付ける長所
4ページ:「ちゃんと考えていますか?」
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「ちゃんと考えていますか?」
練習にマンネリ化はない。多くのメニューが掲示されている
全国の3分の2の高校野球チームが、この時期もグラウンドに出て練習をしている。「センバツに出たら、できれば毎日外で野球をやっているチームと戦いたいですね」と話す浅井監督。一年の半分は室内練習場で過ごすことはハンディにはしない。この春、センバツに出たら、創意工夫の練習の成果を発揮するつもりだ。
(文=安田 未由)
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【目次】
1ページ:一年の半分は室内で練習
2ページ:限られた空間で金属バットを使った打撃練習
3ページ:室内は選手との距離が近いからこそ、気付ける長所
4ページ:「ちゃんと考えていますか?」
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