創志学園vs鳥取中央育英
創志学園、富田一成投手
決勝に挑むオール1年生の創志学園
“神在月”
出雲の国、すなわち現在の島根県出雲地方では、全国で唯一、10月のことを“神在月”と呼んでいる。
それは出雲大社に全国から神様が集まってくるため、出雲地方以外は神様がいなくなる、といわれているからである。
その出雲大社のすぐ近くにある[stadium]島根県立浜山球場[/stadium]で神がかり的な勢いで勝ち上がってきたチームが決勝へ進出した。
創志学園は、学校創立126年目を迎えた岡山県内の私学で最も古い歴史を誇り、野球部は今年の4月に創部したばかりで、もちろんオール1年生メンバーである。
1回戦の松江商を延長11回の末、3-2で粘り勝ちすると、続く準々決勝の広島国際学院を2-1で勝利し、2試合連続で僅差をものにし、勝ち上がってきた。
対する鳥取中央育英は、2003年4月に由良育英高等学校と赤碕高等学校が合併した、鳥取の県立高校。
こちらも1回戦の宇部鴻城、準々決勝の岩国(2010年10月24日)と山口県勢相手に競り勝ち、鳥取県勢としては2008年の鳥取城北以来2年ぶりのベスト4に進出した。
互いに初の決勝進出を懸けた一戦。
それは同時にセンバツ当確ランプを点灯させるという大一番でもある。
3位表彰を受ける鳥取中央育英
1回表、創志学園の先頭打者・友森尚哉が左前安打で出塁すると、2番・野山慎介が投手と一塁手の間に絶妙なバントを決め、これが内野安打となり、一、二塁。3番・吉田大樹は三振に倒れたが、4番・金山高大の三塁ゴロで一塁への送球が暴投となり、この併殺崩れの間に友森がホームインし、創志学園が先制した。
「初回の守りは、みんな硬かった。これを切り替えることができなかった」と司令塔である主将の小谷翔太が振り返る。
追う鳥取中央育英は、4回裏、3番・布袋匡希が左越えの本塁打を放ち、試合を振り出しにした。
しかし、粘り強さのある創志学園は、6回2死から3番・吉田が、三遊間を破る適時打で再び1点を勝ち越すが、鳥取中央育英は7回に6番・箕浦康介の中越え三塁打を置いて、7番・日下部竜太が右犠飛を放ち、同点。
続く8番で投手の福田峻がジャストミートした打球は右中間を見事に破った。しかし、福田は三塁を狙うが、数m手前でアウトとなった。
「空回りしたところがあった。あのアウトは大きかった」と福田。
追いついた勢いで、初めて追い越せるチャンスだっただけに本人も悔やんでいた。
創志学園は8回と9回に適時打で1点ずつ追加し、点差を2点に広げるが、鳥取中央育英は9回裏、代打・西村卓人、9番・小川典の連打で1点差まで追い上げをみせたが、あと一歩及ばなかった。
試合を締め括った山本(創志学園)
この試合、創部6ヶ月、オール1年生の創志学園が決勝進出という話題性のある試合だが、鳥取中央育英の齋尾博幸監督が「選手は最後まで諦めなかった」というように最後の最後まで諦めない、ひたむきなプレーの鳥取中央育英ナインに改めて拍手を送りたい。
そして、明日の決勝に挑む創志学園は、岡山大会決勝で1-17の大敗を喫した関西との試合となる。
「今日は全員が一生懸命ようやりましたね。気を引き締め直したい。明日の決勝があるので」と話す長澤宏行監督。柔らかな口調の中にもリベンジに燃える芯の強さが宿っていたように感じられた。
岡山県の高校野球の勢力図を変えそうな勢いの創志学園。
“神在月”の神をも味方につけた、この勢い。
岡山大会決勝の雪辱を果たすためにも、もう立ち止まるつもりはない。