試合でバントをしないことと、選手がバントの練習をしないことはまったく違う
昨今、高校野球ではバントをしないチームや監督(指導者)が増えています。
しかし、『試合でバントをしないことと、選手がバントの練習をしないことはまったく違う』と思います。
そう思わせてくれた場面が昨日開幕した社会人野球の第69回JABA京都大会でありました。
[stadium]わかさスタジアム京都[/stadium]で行われた日本新薬vs三菱自動車岡崎の試合。
日本新薬は1点を追う5回に先頭打者の二塁打のあと、4者連続でバント。相手の失策も絡んで一気に逆転しました。
さらに同点の9回裏には1アウトから内野安打で出塁すると、2者連続でバント安打を決めて満塁とし、犠牲フライでサヨナラへと繋げました。
指揮を執る吹石徳一監督は、「バントがうまく決まりましたね」とサヨナラ勝ちを喜びました。この試合で3安打を放ち、そのうち2本がバント安打だったのがルーキーの大崎拓也選手(智辯学園→法政大学)です、50メートル5秒8の俊足を存分に生かしましたが、試合後に語ったのはバントの重要性でした。
「自主練習でこれだけバントの練習をやるとは入社前は思ってなかった。高校や大学の時と考え方が違います」。
社会人野球では今シーズン、これまで以上にバントが重要になってきています。それがタイブレーク制度の変更。これまでの1アウト満塁から、国際ルールの0アウト一、二塁になったことで、バントでしっかりと転がせるかが勝負のカギを握ります。実際に日本新薬の吹石監督のバントの重要性を説き、チーム全員がバントの練習に取り組んでいるそうです。高校時代は智辯学園で3番を打っていた大崎選手はこれまであまりバントのサインを出されることはなかったことそうです。しかし、「タイブレークになれば4番でもバントをしっかりと出来るようになってないといけない」とバント練習に取り組んできたことを明かします。
そこで、「今、後輩に伝えるなら、バントの練習だけはちゃんとやっておいた方が良いと言いますか?」と聞くと、大崎選手は、「そうですね。上で野球をやるのであれば、練習しておいた方が良いと思います」と答えました。
話を冒頭に戻します。
バントを戦術として使わず、エンドランやバスターなどを含めて強攻策を多用する高校野球の監督(指導者)やチームが増えています。選手が野球を高校までで辞めるのならば、その監督(指導者)の方針で良いと思います。でも上(大学、社会人、プロ)でやってほしい、あるいは選手が上でやりたい希望を持っているならば、バントの練習だけはちゃんとやっておかないと、上で苦労することに繋がることもあります。さらに、チームが異なる高校日本代表に選ばれた時も、バント練習ができているか否かでチームの戦術の幅が広がります。
以前、ある大学の指導者から、「高校でバントの練習をあまりやってなかったことを、大学に入学してから知りました。相当練習しないと、試合でこの選手にバントのサインを出せない」という声を聞きました。
こういった声を総合すると、やはりバントの練習だけはちゃんとやっておいて、いざという時に使えるようにしておいて損はありません。高校、あるいは少年野球の時からバントのクセだけはしっかりとつけておくことが大事です。
高校野球では相手チームとの初対戦が多いですが、大学や社会人では同じチームと何度も対戦がありお互いの手の内を熟知していることがほとんどです。タイブレークの戦術も高校と大学や社会人では異なることが多いでしょう。お互いの手の内を熟知しているからこそ、基本がより大事になってきます。
バントを戦術としてあまり使わないというチームの皆さん。将来、上で野球をやる希望があるのなら、バントの練習だけはしっかりとやっておいてくださいね。
そして社会人野球は高校球児にとって学ぶことばかりです。ぜひ、一度試合や練習を見に行ってみてください。
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(文:松倉雄太)