Interview

秀岳館高等学校 九鬼隆平選手「借りはセンバツで返す」

2015.11.13

 枚方ボーイズを強豪チームに育て上げ、中学硬式野球の名将と呼ばれた鍛治舎 巧監督が2014年4月、秀岳館の監督に就任。その鍛治舎監督のあとを追うように秀岳館に入学したのが九鬼 隆平である。鍛治舎監督とともに甲子園を目指し、主将に就任した今秋は見事、九州大会王者となって、明治神宮大会出場を決めた。

 しかし初戦東邦に敗れ初戦敗退を喫したが、東邦のエース・藤嶋 健人から適時二塁打を放ち、また力強いスローイングを見せるなど攻守でパワフルなプレーを見せ付けた。来年のドラフト候補として期待がかかる強打の捕手・九鬼 隆平に迫っていく。

九州大会で大活躍 九州屈指の大型捕手へ成長

九鬼隆平(秀岳館)

「中学の時の監督さんと高校の時の監督さんは全く違うんです」

 鍛治舎監督について説明する九鬼。高校野球で勝つとなれば、選手に求めるハードルも高くなる。それもあって鍛治舎監督はかなり厳しい練習を課し、選手に対する態度も厳しくなった。九鬼は怒られる方で、ミスが続くと、「グラウンドから出ていけ!」と叱責されながらも、負けじと鍛治舎監督についていく日々を送ってきた。

 最上級生となった九鬼は主将としてチームを引っ張り、また1年の時から出場を経験してきた選手たちが成長。熊本大会では開新戦以外、8点以上を奪う圧巻の戦いぶりで県大会優勝を決めると、九州大会では2回戦明豊戦は4対2で勝利。準々決勝八重山戦では九鬼が左中間を破る適時二塁打で、先制打を挙げると、さらにソロ本塁打を打って8対1で快勝。この試合を機に、徐々に調子を上げていくと、準決勝日南学園戦でも二塁打を放ち、2試合連続の長打を記録。

 そして決勝の長崎海星戦では4回表にはエンタイトル2ベース、7回表にはレフトスタンドへ豪快な2ラン、そして8回にも三塁打を放ち、あわやサイクル安打達成かと思わせる活躍を見せたのだ。

 神宮大会初戦の相手は、最速146キロ右腕・藤嶋 健人擁する東邦だった。藤嶋が速球派右腕であることは頭にあった。九鬼は藤嶋の速球に食らいつくことができていた。

 第1打席は藤嶋の速球を何度もファールをしながら、三ゴロ。そのファールの打球が非常に鋭い。スイングの鋭さ、打球の鋭さともに別格。九州屈指の強打の捕手と呼ばれるものを実感させた。

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[page_break:リード面で反省 来年こそ借りを返す]

リード面で反省 来年こそ借りを返す

九鬼隆平(秀岳館)

 なかなか捉えることができず、二打席目は捕邪飛、三打席目は初球を打って左飛。3打数0安打。リード面でも5回まで先発の堀江 航平を5回無失点に導いたが、6回裏に4番藤嶋 健人に対して、外そうとした変化球が高めに浮いてしまい、2ランを許してしまった。この2失点は自身のバットで取り返すしかない。

 8回表、一死一塁の場面で打席がまわってきた。この打席、九鬼 隆平は「狙い球は特に考えておらず、とにかく食らいつくことだけを意識していました」と6球目のストレートを見事に打ち返し、打球はあっという間に左中間に破り、外野へ転々と転がっていった。その打球は高校生ではなかなかお目にかかれない鋭い打球だった。やっと意地の一打を見せることができた。

 しかし8回裏、無死一塁の場面で、再び藤嶋に初球の変化球を豪快に捉えられ、2ラン本塁打を浴びた。九鬼の要求は初球からボール球で良い。確かにボール球へ外そうとしていた。しかしふり幅が大きい藤嶋のスイングにピタリと合うコースだった。外すならしっかりと外す。そこを徹底することができなかった。

「藤嶋君の投球はたぶん寒いからあまりスピードは出ていなかったと思うんですけど、打撃は想像以上でした」と脱帽した様子だった。

 だが初めての全国の舞台。その舞台を経験できたことに「収穫がありました」と語るように今の自分は何が足りないか、何が通用するかはわかってきた。

 リードして4失点を喫したが、5回まで0対0と投手戦を演じるリードを見せたように、全国でも強力打線と謳われる東邦相手にこの内容は悪くない。捕手というポジションを本人は楽しんでいるようで、「相手の裏をかくリード、配球をして、打ち取ったときが快感ですね」と捕手としての醍醐味を語ってくれた。

 そして何より素晴らしかったのは二塁でのスローイングだ。なんとタイムは1.8~1.9秒台を連発。「肩も自信があります」と神宮大会で強肩強打の捕手として全国の高校野球ファンにアピールすることができた。

 そして最後に冬へ向けて、「まだまだヘッドスピードが足りないので、重点的に鍛えていきたいですし、捕手としても磨きをかけていきたい」と課題も明らかになった。

 センバツ出場が実現すれば、東邦と対戦する可能性も十分にあるだろう。次、藤嶋と対戦するときは、今日のような活躍はさせない。逆に打って、借りを返す。その決意を新たにした九鬼 隆平

 数少ない強肩強打の捕手として来年、さらに大きくなった姿を見せることを期待したい。

(取材・文=河嶋 宗一


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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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