体を冷やしたほうがパフォーマンスがアップするってホント?暑さ対策に新提案!
コア・コントロールを使うセリスタ株式会社伊藤承正社長
球児のみなさんは体のコア(深部)を冷やすということを考えたことがあるでしょうか?野球をしている人にとって、アイシングは今や誰もが知る常識となりましたたが、それとはまた一味違うもののようです。2020年の東京五輪は、過去に類を見ないほどの灼熱の五輪になるとも言われています。近年は夏の甲子園大会でも熱さ対策が問題となるなど、野球界にとっても重大な課題です。
この「コアを冷やす」という手法が、熱さ問題を解決へと導く一つの手がかりとなるかもしれません。では、体のコアを冷ますことによってどんなことが起こるのか?いったいどうやって冷ますのか?今はまだ分からないことだらけかもしれませんが、もしかしたらこれからの時代の常識となってくるかもしれません。
今回はアメリカ・スタンフォード大学の研究者らによって開発された「コア・コントロール」という、トップアスリートの間で広まりつつある秘密兵器の輸入・販売を手掛けるセリスタ株式会社の伊藤承正社長にお話を聞くことができました。
アメリカで広がりを見せる最先端の技術!
コア・コントロールとは、激しい身体活動で上昇した深部体温を、体を傷つけたりすることなく下げることを目的としているものです。アメリカ・スタンフォード大学で開発されたこの技術を使うことによって、深部体温を下げ、精神的または身体活動を行う能力や回復力が向上するというものです。アメリカでは既にアメフト選手などのトップアスリートや、酷暑の中活動する消防士などで徐々に広がっており、日本でも陸上競技や一部のトップアスリートが取り入れ始めてパフォーマンスの向上に役立てているとか。
「数年前に、日本陸連(日本陸上競技連盟)の方から、『2020年の東京オリンピックは過去に類を見ない灼熱のオリンピックになる。選手の熱さ対策に有用な製品を提案してもらいたい』と言われたことから、色々な論文を読んだり、色んな国を見ている中で、スタンフォード大学が開発したこのコア・コントロールという製品を見つけたんです。
この『手のひらを冷やす』というのはただの手段であって、目的としては体の深部の体温、コア・コントロールのコアというのは体のコア(深部)のことなのですが、体のコアの体温を下げることを目的とした機械です。これはスタンフォード大学の生物学の先生方が開発したものです。開発の経緯としては、元々はアメリカの国防省が暑さ対策のために開発することになったんです。」
手のひらの血管を冷やすことで体のコアの温度を冷やす!
「手のひらにはAVAs(アヴァース)という特殊な血管があるのですが、これが体温調節のための熱交換をしているんです。寒いときには自然とストーブに手をかざすと思うんですけど、これはみんなこの血管がどんな役割を果たしているのか知っているからなんです。車に例えるとラジエーターの機能を持っていて、寒いときには火に手をかざす、逆に体のコアを冷やそうと思ったら、手のひらを冷やせばいいんですね。
ところが、ただ単に冷やせば良いのかというと、そう単純なものではありません。外部から冷気が当たると、ホメオスタシスと言う体の恒常性機能が働くため、体を温めようという反応が起きてしまいます。ですから、体のコアを冷やしたいときに氷水でキンキンに冷やしてしまうと、血管が収縮してしまい、逆効果です。
コア・コントロールは、筒の中に手を入れて、ここから空気を吸いだして陰圧がかかった状態にします。これにより血管を膨張させて、血流を確保します。ここに、12~15度の適温に冷やされた水を流すことで手に当たるパットを冷やし、血液を冷やします。そこまで難しい機械ではありませんので、練習中に手を流水に当てて冷やしたり、タオルを巻いた保冷剤を握るというだけでも、似たような効果が得られるのではないかと思います。」
体温を下げてパフォーマンスアップにオススメの『ベースボールシャツ』は?
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遮熱素材「ソーラーカット」採用のクールスリーブシャツは、涼しく動きやすいぞ!
コアを冷やすことにより体内の酵素反応を活性化!
「そもそもなぜ体のコアの温度を冷やす必要があるかと言うと、体内でエネルギーを作り出す酵素の働きに関係があります。ATP(アデノシン三リン酸)というのが元気の素であり、筋肉の素でもあるのですが、このATPを作る過程でピルビン酸キナーゼという酵素の働きが関わってきます。
ピルビン酸キナーゼは40度を超えると反応を止めてしまうんですね。これによりエネルギーが作られなくなり、体が疲れてしまいます。ここで手のひらを冷やすと、冷やされた血液が心臓に戻り、コアの温度がストンと下がるのでまたピルビン酸キナーゼの反応が始まり、ATPが作られるという仕組みです。」
「このグラフに何が書かれているかと言うと、激しい活動をすると深部体温がどんどん上がっていきます。休憩中にも少し上がって、20分経っても下がり切らないんです。例えばサッカー選手が45分間走り回ったあと、20分の休憩の間に深部体温が下がり切らないまま後半戦を迎えるので、後半になるとくたくたになって動けなくなってしまうんです。
海外の大学でデモンストレーションを見せるときには、10人の選手をA、Bの二つのグループに分けて、30秒間でできるだけ腕立て伏せをしてもらいます。5分間の休憩の間にAグループはコア・コントロールを使い、Bグループは使わない。そしてまた腕立て伏せをやってもらうと、40%くらいパフォーマンスが違ってきます。わずか5分、10分の休憩でもこれを使うと復活するんです。」
着るものを工夫して体温の上昇を防ぐことは有効!
セリスタ株式会社伊藤承正社長
体温の上昇を防ぐことの重要性が広まりつつある今、そのトレンドを取り入れたベースボールシャツがあります。それが2月にミズノスポーツから発売された「クールスリーブシャツ」です。ソーラーカット素材という太陽光や熱を通しにくい生地を使い、体感でマイナス3度を実現したクールスリーブシャツについて、伊藤社長にご意見を聞いてみました。
「これは良いと思いますよ!体温の上昇を防げるのですか?それはいいですね。スタンフォード大学の先生の話によると、人の体には皮膚のバリアの機能があって、外から冷やしただけでは冷気は仲間で届かない。恒常性機能によって冷気を浴びた体は体温を上げようとする。
いずれにせよ皮膚を越えることができないようなんです。エアコンの効いた部屋に5~10分いてもコアの温度は下がり切らないんです。1~2時間いればまた別ですけどね。こちらは体感でマイナス3度ですか、これはもう製品化されているんですか?僕もスポーツをするので、自分で買いたいくらいですね。」
今回は「体温を下げることでパフォーマンスがアップする」という、今までにない考え方をご紹介することができました。これまでも水分補給、塩分補給、長袖を着て太陽光を防ぐなどの熱さ対策が取られてきましたが、球児のみなさんにぜひとも注目してもらいたい手法です。
体温を下げてパフォーマンスアップにオススメの『ベースボールシャツ』は?
・ミズノ クールスリーブ
遮熱素材「ソーラーカット」採用のクールスリーブシャツは、涼しく動きやすいぞ!