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第9回宮城県高等学校野球連盟 リーダー研修会

2012.12.22

 12月15日、「第9回宮城県高等学校野球連盟 リーダー研修会」が仙台工を会場に開催された。宮城県高野連に加盟する硬式、軟式野球部の主将85人が参加。午前中は「研修1」として講演を聴き、午後は「研修2」として分科会が行われた。

前チームから現チームへ 仙台育英前主将のメッセージ

 研修Ⅰではまず、「前チームから現チームへ」をテーマに、今夏の甲子園に出場した仙台育英の前主将・小杉勇太(3年)が語りかけるように現在の主将たちへメッセージを送った。

主将の経験を話す
仙台育英の小杉前主将

「冬場が一番、辛い。(2年の)夏にベスト8で負けて、早く新チームが始まり、秋も結果がついてこなかった。自分たちは仲がいいと言われていたけど、冬はそうではなかった。陰で悪口を言うやつもいた。正面からぶつかることが大切だと思い、先生(佐々木順一朗監督)にお願いして何度もミーティングをした。不満をすっきりして冬を乗り越えた。
 宮城から甲子園に行けるのは1校。結果が見えないから楽しい。考え方次第で変わる。仙台育英は(この秋の)神宮大会で優勝したけど、今、全国で一番油断するチームは仙台育英。夏はどこが勝ってもおかしくない。

 途中、イップスになって試合に出られないことが悔しかった。でも、108人の中でチームを思っていた気持ちは負けない。自分は甲子園が決まった瞬間も(甲子園で)作新学院に負けた瞬間も忘れられない。高校野球でキャプテンをやり、大学でもやるぞと思った。大学でもキャプテンを目指す。髪を伸ばしたり、遊んだりすることはOBになればいつでもできる。今、やっているものに全力で取り組んで欲しい。練習を見に行くと現役をうらやましく思う。
 目指すところは甲子園だと思う。これから、自分は高校野球の監督を目指す。お互い、頑張りましょう。」

講座1「関節のケアとコンディショニング」

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写真左から 東北大学大学院医学部整形外科・黒川大介先生
東北大学肢体不自由分野非常勤講師 東北大学病院リハビリテーション部・村木孝行先生

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 続いて、講座1「関節のケアとコンディショニング」と題して、東北大学大学院医学部整形外科・黒川大介先生、東北大学肢体不自由分野非常勤講師東北大学病院リハビリテーション部・村木孝行先生がスライドを使いながら講義した。

 まずは黒川先生が、関節とは骨と骨をつなぐ靭帯であることを説明し、ストレッチの目的を紹介。
 静的ストレッチよりも動的ストレッチの方が効果的であることを話した。また、「しなやかさ」の意味を説いた上で、肘や肩にかかる負担を数字で表し、「関節と筋肉がしなやかに連動することが重要」とし、プロ野球選手の投球動画や写真などを使って説明。障害の発生は、コンディショニング不良、使いすぎ、(悪い)フォームが積み重なって起こることも解説した。

 村木先生は「自分の身体はどうなっているのか?」と話し、柔軟性について説明。どのくらい上体を反らせることができるか、ブリッジはできるかなど柔らかさの判断基準を示したりした。

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講座2 「組織作りと冬場のトレーニング」

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講演する全日本の小島監督

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 講座2では、日本野球連盟全日本監督・小島啓民氏が「組織作りと冬場のトレーニング」と題して講演した。

 小島監督は11月28日~12月2日に台湾で開催され、優勝を飾った「第26回アジア選手権」を指揮したばかり。笑いを交えながら自己紹介し、自身の経験を語った。

ウエート・トレーニング用のプレートを使用し、
トレーニングの実践例を披露

 長崎の進学校・諫早高で二度の甲子園出場。練習時間は1時間半~2時間ほどだったという。また、猛勉強で早稲田大を一般受験した話では、「1年夏の甲子園後の実力テストで450人中449番だった。でも、そこから勉強し、早稲田に入った。野球部はほとんど、成績悪いでしょ(笑)。でも、やればできるっていうことを、伝えたかった」。

 早稲田大を卒業後、三菱重工長崎でプレー。23歳で主将になり、27歳の時にバルセロナ五輪に出場した。その後、三菱重工長崎で3年間、プレーイングマネージャーを経験し、監督に就任。そういった経緯から、主将は監督とチームメートをつなぐ役割であることを話した。

「でも、監督と話すの嫌でしょ? 悩みは分かる」とした上で、「なぜ、監督に向かって進言できないのか。ここが大事」と投げかけ、持論を展開。「欲求の強さがない。勝ちたい気持ちもない。まぁ、いいかとなる。ここで苦しむ。本心でぶつかるのが大事。甲子園に行きたいというけど、本当に行きたいのか」。
 ホワイトボードに「本気」と書いて「なんと読む?」と問いかけると「ほんき」という答えが返って来たが、「違うよ!マジ!君たち、使うでしょ」と高校生の気持ちに近づけて話した。「本気なら、何でもできる」。

小島監督の話に真剣に耳を傾ける

 また、バルセロナ五輪の時にゲッツーを取るために送球を10センチずれることも許されなかったことや、「お前のミスで得点が入ったじゃないか」など選手同士で指摘しあったエピソードを話し、「グラウンドに勝ちたい気持ちが落ちているかどうか」と語気を強めた。

 最後に、巨人・杉内俊哉投手が在籍していた三菱重工長崎の監督時代の冬場に食事やプロテインの摂取を徹底したと言い、「チーム全員が同じ方向を向けるか。ここ(冬)でやらなければ、夏はない。体力がない選手は技術もいいフォームもできない」と話した。

 小島監督の後にはスポーツプログラムスの佐竹彬トレーナーが「トレーニングをいかに野球につなげるか」というテーマでトレーニング方を実践して紹介した。

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[page_break:「リーダー研修会」を開催する狙いとは???]

「研修2」8班に分かれての分科会

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それぞれの分科会の様子

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 午後からは「研修2」として、8班に分かれて分科会が開かれた。内容は以下の通り。

1) 各校から、「絆プロジェクト」について報告
・ 昨年度の取り組み(良かった点、反省すべき点)
・ 来年3月にやってみたい具体的な活動(その意気込み)
・ チームで決めたキャッチフレーズ(その趣旨)の紹介
→各分科会で1つに絞り、計8つある候補から1月の常任理事会で、来年度のキャッチフレーズは決まる。(今年度は登米が提案した「笑顔・元気・勇気を球児から~咲かそう絆の花~」が採用され、各大会のパンフレット等に使用された)

2) 各校が考えたキャッチフレーズの中から、分科会としての代表作を選定

3) 討論
・ 分科会1~3…チームの運営、モチベーションの向上
・ 分科会4~6…守備の強化、バッティングの強化、機動力の向上
・ 分科会7…冬期の練習メニュー、オフ・シーズン中留意すべきこと
・ 分科会8…チームの強化。目標作り。年間スケジュール。役割意識の定着

 互いにどんな練習をしているかを話したり、チームの課題についてどう解決していくべきか意見を求めたりもした。閉会行事で各分科会の司会者が成果を発表。「チーム状況を発表しあい、とてもタメになった」「最初は硬さが目立ったが、後半はいい雰囲気で討論ができた。悩みが消えて、いい収穫になった」「各校の課題の解消法を話し合えてよかった」「冬期メニューなどを話せて今後に生かす材料を学べた」など感想が述べられた。

「リーダー研修会」を開催する狙いとは?

 宮城県高野連では2004年から「リーダー研修会」を開催している。

 大きな狙いは交流、加盟校が絆で結ばれることにある。当初は組織作りに困っているチームの下支えだったが、回を重ねるごとに、練習メニューに困っているチームへのメニューの提案など目的は多様になっている。また、各校のモチベーションの差を埋める目的もある。
 主将が一堂に会する機会は年3回。このリーダー研修会、次は夏の選手権宮城大会の抽選会、そして、選手権宮城大会の開会式だ。

最後に分科会の司会者が感想を述べた

 現在、部員が1人だけだという宮城松山・久連山龍也選手は「1人でもできそうなメニューを聞けてよかったです。夏に会えるように、部員を勧誘したいと思います」。
 東北学院佐藤翼選手は「(分科会で)県北や県南の人が多くて、関わりのない高校と関われてよかったです。僕たちは普段、震災の影響がありませんが、宮城水産のキャプテンは今もグラウンドが使えない状態で、石巻北に行って練習していると言っていました。当たり前に野球ができる幸せを感じました」。

 チームの士気が下がったり、目標を見失ったりしやすいオフ・シーズン。キャプテンとして悩みも多くなる季節だが、この機会でだいぶ、気持ちがスッキリした人もいるのではないだろうか。チームリーダーとしての自覚が増したキャプテンもいるはずだ。

 夏、硬式で甲子園出場を勝ち取るのは1校、軟式は県と南東北大会も勝ち上がらなければならない。試合となれば敵・ライバルになる。交流を図ったことで、意識する相手が増え、全チームが目標を高く持つことによって宮城県のレベルアップにつながる。

(文・高橋昌江

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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