Column

栄養学セミナー開催!特別コラム(2) 『夏の大会までに改善しておきたい食生活とは!?』

2015.03.04

 3月1日、東京都内にて高校野球ドットコムのコラム「セルフコンディショニングのススメ」でお馴染みの西村 典子トレーナー(東海大学硬式野球部専属トレーナー)による栄養学セミナーを開催しました。

 前回は、「食事の大切さ」、「3食を摂る重要性」、「ポジション別に栄養を摂る必要性」について解説しましたが、今回は、体を大きくするためにはどんな食生活をすればよいか、試合前の食事の摂り方、知っておきたい熱中症の予防策について、講演会の内容を紹介します。

タンパク質をどう摂取するのか?

タンパク質をどう摂取するのか?

 最初に、球児にとって興味のある「体を大きくするための話」。前回の「なぜ3食摂らなければならないのか?」でも解説したが、一度に消化できる量にも上限があるため、球児たちは3食で分割して摂取する必要がある。

 体を大きくするには、タンパク質が重要となってくる。タンパク質は身体のあらゆる部位の材料となり、食材としては肉、魚、卵に含まれている。

 この身体に必要なタンパク質を補給するために、「サプリメントやプロテインを摂取する」という考えが、世間でだいぶ広まっている。だが西村トレーナーは、食事から摂ることが最優先だと語る。これを大前提に考えられた上でプロテインを摂取する場合は、アスリートは「体重×2グラム/日」が目安だと説明した。

 例えば体重60キロの選手であれば、1日に120グラムのタンパク質を摂取してほしいという。しかし食材から1日120グラムのタンパク質を摂ることは非常に難しい。実際にタンパク質を含んだ食品の栄養価を見ると、サーロインステーキが150グラムで、含まれるタンパク質は25.1グラム。紅鮭100グラムで22.3グラム、と食品から全てを摂取するのは難しいことが容易に想像できる。

 それに加えて、食事で全てのタンパク質を摂取しようとすると、脂肪を摂りすぎてしまう。そのため、プロテインは食品と違って余分な脂肪分を摂らないで済むメリットがある。

 タンパク質は体を大きくするためには必要だが、摂取の方法を間違えると、余計に体重が増えてしまう場合もある。さらに、タンパク質を摂りすぎると、肝臓、腎臓に負担をかけてしまうそう。そのことを踏まえながら、タンパク質を摂取していくべきであろう。くれぐれも、「食事」から摂ることを最優先に。

このページのトップへ

[page_break:試合当日の食事で意識するべき5つのポイント]

試合当日の食事で意識するべき5つのポイント

 指導者、選手、父母の方々も多く参加していたことから、参加者が一番興味を持って聞いていたのが試合当日の食事についてだ。

西村トレーナーは、意識してほしい点を5つ挙げた。

・試合開始時間から逆算して食事を摂る(約3時間前が目安)
・消化に時間がかかるものはなるべく早めに
・試合時間が近づくにつれて糖質を中心とした消化のいいものを
・試合の日は、プレッシャーなどで消化吸収能力が低下していることも考えれるため、脂っこいものや食物繊維が多いもの、お腹が張ってしまうものはなるべく避ける
・消化を助けるために、いつも以上によく噛んで食べる

炎天下で熱中症にならないために

 簡単そうに見えてなかなかできないのが、この5項目だという。これら5項目を意識して行えば、試合でもベストパフォーマンスを出せると語る西村トレーナー。

 最後に熱中症にならないための水分補給の重要性ついて。実際に、西村トレーナーが関わる現場でも、水分不足による熱中症は非常に多いようだ。

 水分不足での熱中症にならないにならないために、選手・指導者が意識してほしいこととは?

【選手】
・通気性の良い服装を選び、必ず帽子を被る
・のどが渇いたと思う前の水分補給

【指導者】
・軽い運動から始め、少しずつ暑さになれる
・激しい運動のときは30分置きに休憩を取り、水分補給を行う

 こちらも簡単そうに見えても出来ないことが多く、体調管理の面で多く指導者から相談を受けるのだとか。

このページのトップへ

[page_break:日頃から意識して、食生活に取り組めるか]

日頃から意識して、食生活に取り組めるか

参加者の質問に答える西村典子トレーナー

 こうして2時間のセミナーはあっという間に終わった。

 ここで参加者の声をお届けしようと思う。
「初心者向けであることから、分かりやすかったです。選手たちの食事を今日から変えてみます」

「栄養学について、初心者向けから応用編まで幅広く教えてくださったので、明日から早速選手のサポートに活用したい」

「野球でベストパフォーマンスを出すための食事の重要性を再認識できました。明日から部員の差し入れを作る時に、今日学んだ知識を生かして取り組んでみます」

 参加して非常に満足できた、という声が多く聞けた。

講義を終えて西村典子トレーナーは、
「栄養が変わればチームも勝てるようになるので、栄養学の重要性について今後も伝えていきたいですね」
と振り返った。

 今回、「栄養学」をテーマにし、分かりやすく解説してくれた西村トレーナー。どれも難しいことではなく、やろうと思えば、今すぐにでも実践できるものが多い。しかし生活をしていても、夜更かしをしたり、朝食を抜いたり、健康管理を怠ることが多いが、最後は自分に返ってくる。そのことを意識して、日頃の食事、練習に取り組めるか。

 継続して取り組み、その積み重ねで、夏ではベストパフォーマンスを発揮できる選手が1人でも多く出てくれば幸いである。

このページのトップへ

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

関連記事

応援メッセージを投稿

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

RANKING

人気記事

2024.05.18

【長崎】長崎西、島原中央などが初戦を突破<NHK杯地区予選>

2024.05.18

【春季関東大会】鹿島学園が逆転勝利!左腕コンビのリリーフで樹徳との接戦を制する!

2024.05.17

【春季関東大会注目野手一覧】超高校級のショートトリオ、健大高崎の強肩捕手など24人の逸材野手をピックアップ!

2024.05.18

国民的人気だった韓国の高校野球はなぜ凋落したのか? “韓国の甲子園球場”の撤去、少数エリート制度の弊害……【韓国高校野球事情③】

2024.05.17

【関東大会注目チーム紹介】13年ぶりの春季埼玉王者・花咲徳栄打線は超強力!ドラフト上位候補スラッガー・石塚を中心に県大会58得点!

2024.05.15

【全国各地区春季大会組み合わせ一覧】新戦力が台頭するチームはどこだ!? 新基準バットの及ぼす影響は?

2024.05.13

【24年夏全国地方大会シード校一覧】現在29地区が決定、愛媛の第1シードは松山商

2024.05.14

大阪体育大の新入生に兵庫大会8強の145キロ右腕、金光大阪の1番センター、近大附の4番打者など関西地区の主力が入部!

2024.05.16

【宮城】仙台一、東北、柴田、東陵がコールド発進<春季県大会>

2024.05.13

大阪桐蔭、山梨学院、慶應義塾…強豪校・名門校の昨年度卒業生はどの進路を歩んだのか?【卒業生進路一覧】

2024.04.21

【愛知】愛工大名電が東邦に敗れ、夏ノーシードに!シード校が決定<春季大会>

2024.04.29

【福島】東日本国際大昌平、磐城、会津北嶺、会津学鳳が県大会切符<春季県大会支部予選>

2024.04.22

【春季愛知県大会】中部大春日丘がビッグイニングで流れを引き寄せ、豊橋中央を退ける

2024.04.22

【鳥取】昨年秋と同じく、米子松蔭と鳥取城北が決勝へ<春季県大会>

2024.04.23

【大学野球部24年度新入生一覧】甲子園のスター、ドラフト候補、プロを選ばなかった高校日本代表はどの大学に入った?