Column

疲労回復を促すふくらはぎのコンディショニング

2016.08.31

 こんにちは、アスレティックトレーナーの西村 典子です。

 長かった夏も終わりに近づき、早いところでは秋の地方大会が開催されています。夏休み期間中に積み重ねた練習の成果が試合で発揮できるよう、がんばってくださいね。さて今回は疲労回復にぜひ着目してほしい下腿三頭筋(ふくらはぎ)のコンディショニングについてお話をしたいと思います。

ふくらはぎは第二の心臓

ふくらはぎのミルキング・アクション効果が疲労回復につながる

 下腿三頭筋(ふくらはぎ)の筋肉は、人間が四つ足歩行から二足歩行へと進化していく過程の中で発達し、体重を支える上で非常に大切な筋肉となっています。二足歩行が可能になったことで人間は重力の影響を受けるようになり、ふくらはぎには常に体重がかかった状態を強いられることになります。このためふくらはぎの筋肉は疲労がたまりやすく、硬くなりやすいことが特徴として挙げられます。

 また重力の影響によって、心臓からの血液が身体の下にたまりやすくなりますが、ふくらはぎの筋肉は伸びたり縮んだりという収縮を繰り返すことで下肢にたまった血液を循環させ、心臓へと戻す役割を担っています。ふくらはぎが「第二の心臓」と呼ばれるのは、こうした血液循環の役割を担っているからです。

 ちなみにこのふくらはぎの筋肉が心臓へと血液を送り返す働きは、牛の乳搾りにたとえて「ミルキング・アクション」と呼ばれています。乳搾りのように収縮を繰り返してポンプのような働きを行い、全身の血液循環に貢献しているのです。

血行を改善させるために

 練習後のクールダウンでは、体内にたまった疲労物質をなるべく早く分解・代謝させるために、軽いジョギングやストレッチなどを行うことが多いと思いますが、これもふくらはぎの筋肉を意識することでより効果が高まることが期待できます。下肢にたまりがちな血液を心臓へと戻すためにふくらはぎの筋肉を収縮させることで、たまった疲労物質を早く体外に排出するためのサイクルを促進することにつながるからです。練習後に入浴で湯船につかって身体を温めることも、こうした全身の血液循環をよくすることにつながり、やはり疲労回復効果が期待できます。

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[page_break:ふくらはぎのストレッチは二種類 / カーフレイズは代表的なふくらはぎトレーニング]

ふくらはぎのストレッチは二種類

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  • 踵を地面につけ、膝を伸ばしたままで行う腓腹筋のストレッチ

  • 踵を地面につけ、膝を曲げた状態で行うヒラメ筋のストレッチ

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踵を地面につけ、膝を伸ばしたままで行う腓腹筋のストレッチ

踵を地面につけ、膝を曲げた状態で行うヒラメ筋のストレッチ

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 ふくらはぎのストレッチといえばアキレス腱を伸ばすように行うことが多いと思いますが、実は下腿三頭筋は腓腹筋(ひふくきん)とヒラメ筋という二種類の筋肉から構成されているため、この二種類の筋肉を伸ばすようにすることが大切です。踵を地面につけ、膝を伸ばした状態でアキレス腱を伸ばすように行うのが腓腹筋のストレッチ、膝を曲げた状態で行うのがヒラメ筋のストレッチです。実際に行ってみると伸びている部位の違いが感じられると思いますので、ぜひこの二種類を行うようにしましょう。

カーフレイズは代表的なふくらはぎトレーニング

段差を利用して行うつま先立ちのトレーニング

 ふくらはぎの筋肉を収縮させるためのトレーニングとしてまず挙げられるのがカーフレイズと呼ばれる、いわゆる「つま先立ち」のトレーニングです。その場で背伸びをするように行っても良いのですが、もし段差として利用できるものが近くにあれば、段差から踵を空中に浮かせたポジションをとり、そこから大きく上げ下げするようにすると、よりふくらはぎの筋肉が伸ばされます。この場合、バランスを崩して転んだりしないように、壁に手をつくなどして身体を支えるようにすると安全に行えるでしょう。

 またトレーニングを行う時には体重のかかっている位置を意識することも大切です。足の外側寄りに体重がかかってしまうと拇指球に体重が乗りきらず、足からの力がうまく伝達できません。また拇指球に意識を置きすぎると今度は膝が内側に入ってしまい、膝を痛める要因を作ってしまうことになりますので注意が必要です。ニュートラルなポジションを意識しながら行うようにしてみましょう。

●ふくらはぎの筋肉は体重を支える重要な役割をもつ
●下肢にたまりがちな血液を筋肉の収縮によって心臓にかえすミルキング・アクション効果がある
疲労回復には血液循環をよくすることが大切
●ふくらはぎのストレッチは腓腹筋とヒラメ筋の二種類を意識しよう
●つま先立ちのトレーニングは段差をうまく利用しよう

(文=西村 典子

次回コラム公開は9月15日を予定しております。


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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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