Column

盛岡大附のマネージャーが選手たちと歩む努力の日々

2017.10.13

 今夏は甲子園ベスト8入りを果たし、先日行われたえひめ国体にも出場した盛岡大附。新チームで挑んだ秋季大会ではベスト8まで勝ち進んだ。今回はそんな盛岡大附野球部を支えるマネージャーにお話を伺った。

盛岡大附のマネージャーの日々

 盛岡大附のマネージャーは、3年生の坂下 日菜乃(さかうえ ひなの)さん、2年生の道又 瑛稀(みちまた えいき)さん、1年生の中屋敷 彩音(なかやしき あやね)さんの3名だ。普段の活動は、接客、掃除、ドリンク作り、食器洗いなどさまざま。女子マネージャーはアナウンス、男子マネージャーはノックのボール渡しも担う。今年のチームからマネージャーは、業務日誌を提出するようになった。盛岡大附のような強豪校に特徴的なこととして、「遠方からやって来た部員が多い」ということがある。なので、保護者に選手の頑張りが伝わるように、スタンドでカメラを持って写真を撮るということもしているという。

 さまざまな活動の中で心がけていることは、第一に「水分不足にならないよう1番気を付けて見ている」とのこと。また、「頼まれたことは、信頼のしるしだと思ってやるようにしている」という。マネージャーの活躍の中で、1番楽しい時間は、「大会前にお守りや千羽鶴を作っている時間」だという。部員数も多く大変だそうだが、1人1人と改めて向き合っているようで、渡す時が楽しみになるのだそうだ。

 1番やりがいを感じる瞬間は、選手から「ありがとう」と言われた時だ。選手たちを支えるのが仕事のマネージャーたちは、支えている相手から感謝の言葉を言われると、本当にやってよかったと思うものなのである。選手の皆さんには、ぜひマネージャーに感謝の言葉を伝えてもらいたい。

 マネージャーたちにとって3年生たちは「思いやりがあり、とても優しく、下級生にとって憧れの存在」だった。マネージャーたちが特に思い出に残っている試合は、今年の8月19日、夏の甲子園、3回戦の済美戦。9回表に植田 拓の本塁打で同点に追いつき、延長10回に5得点を挙げて勝利した熱戦だった。ベスト8をかけた戦いで、3年生の「1日でも長い高校野球にしよう」という思いがプレーから強く伝わった試合だったとマネージャーは振り返る。憧れの存在が大舞台で見せた意地を、下級生たちは目に焼き付け、その姿を追い求め、今日も練習に励んでいる。

 マネージャーから選手たちに一言!

 毎日自主練習をして努力している姿を一番近くで見ているので、その頑張りを晴れ舞台で発揮してほしいです。辛いことも嬉しいことも乗り越えて、一緒に甲子園行きましょう!(1年マネージャー・中屋敷 彩音さん)

 グラウンドでノックの補助をしているときに、日々の自主練習の成長が出ていると感じたとき、一緒にやっている身としては嬉しく思います。まだまだ力になれていないとは思いますが、いつか日本一の土台になりたいです。一緒に甲子園行きましょう!(2年生マネージャー・道又 瑛稀さん)

 一緒に苦楽を共にした仲間が、一生の財産になると思います。つらかった分、必ず結果は出ると思うので、今を大切に、ぜひ甲子園の舞台で全力プレーしてください!(3年マネージャー・坂下 日菜乃さん)

[page_break:選手たちと同じ目標に向かって努力する]

選手たちと同じ目標に向かって努力する

 3年生マネージャーの坂上日菜乃さんは、中学時代はソフトボール部。そんな彼女がマネージャーになったきっかけは、高校野球をはじめて生で観戦した小学校時代に遡る。必死に戦う球児、スタンドから聞こえる歓声とブラスバンドの音色、球場全体が一体となる感覚。高校野球のすべてに憧れ、甲子園に行きたいと思い、マネージャーの道を選んだ。

 すでに引退の時を迎えた坂上さんだが、現役の時は「周りから信頼され、大人のような考えや心を持ったマネージャーを目指していた」という。活動を通じて、精神的な成長を強く感じた。内気な性格や思考はなくなり、プラス思考が身についた。部長先生には、「県でNo.1になるチームのマネージャーはNo.1にならなければいけない」と言葉をかけられた。勝負の世界に触れることで、負けず嫌いになった。すべてにおいて1番を目指せる性格に変わった。選手たちを支えた2年6か月の間に、マネージャーも精神的に大きく成長していたのだ。

 挫折しかけたこととはなにかと伺うと、「メインは選手なので、1人で作業をしているということも少なくなく、今自分がやっていることがチームのためになっているのか、周りから自分がどう評価されているのか分からず、不安になった時期があった」という。

 そんなときに不安な気持ちを払拭してくれたのは、部員たちの言葉だ。「いつもありがとう」「甲子園行こうな」と言葉をかけてくれた時は、心に残っている瞬間だ。「あらためて感謝を伝えられたり、同じ目標を叶えようとしてくれていると感じたとき、辛いことや悲しいこと、嫌なことすべてが吹き飛んだ」という。支える立場の人間が、1番支えられていたと感じたという。

 年末に坂上さんは部員全員に年賀状を送った。ある選手がお返しを送ってきたのだが、その文には「甲子園一緒に出場しよう」との言葉が。そして1年3か月後、それは実現することになった。有言実行の本当の意味を知った瞬間だった。

 様々な経験を経た坂上さんにとって、マネージャーは「選手と同じ目標に向かって、一緒に努力していく存在」だ。坂上さんにとってのマネージャー生活は、目標を叶えるための努力、仲間の大切さ、1つのことに全員で挑む大変さを教えてくれた大事な時間だったのだ。

 盛岡大附高等学校野球部の皆さん、ありがとうございました!

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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