最新テクノロジーの導入と奥川恭伸との出会い 吉田力聖(光泉)が達成したい3つの目標【後編】
前編では光泉の吉田力聖に自身の野球人生の始まりから、高校1年生の時期のことまでを語ってもらった。後編では新チームスタート時から現在。そして未来について話してもらった。
楽しくやる野球からエリート街道へ!144キロ右腕・吉田力聖(光泉)が活躍するまでの道のり
「MA-Q」、そして奥川恭伸との出会い
吉田力聖(光泉)が手にするものこそ「MA-Q]である
チームを勝利に導くことができず、エースとしての責任感が必要だと自覚した吉田力聖。新チームが始まって最初の公式戦となる秋季大会では1回戦、2回戦を突破し、3回戦では強豪の滋賀学園と対戦した。
「強いところとやれるのが僕の中で一番楽しみなこと」と話す吉田にとって力試しをするには格好の相手。吉田は13安打を浴びながらも1点に抑える力投を見せる。しかし、打線がわずか3安打に抑えられて完封負け。懸命の投球が勝利には繋がらなかったが、吉田の中では確かな手応えを感じていた。
「1点に抑えられたのは自信になりました。勝ち切れなかったのはチーム力もあると思うんですけど、個人的には1点に抑えられたのは大きかったです。冬を越して、もう一回滋賀学園にリベンジしたい気持ちがありましたし、強いチームと当たっても自分の球が負けないようにということを考えながら冬は過ごしていました」
そんな中で冬場にチームで導入されたのが「MA-Q」だ。「MA-Q」とは専用センサーを内蔵したボールを投げることで、ボールの回転数や回転軸、速度を計測できるミズノ社が開発したスマホアプリである。吉田は2月にこの「MA-Q」の測定でそれまでの自己最速を2㎞更新する144㎞を計測した。
「MA-Q」を使うようになってからは「トップスピンの量を気にするようになりました。ボールの回転軸もわかるので、角度とかも意識していますね」と自らの投球が数値化されることで球速だけでなく、ボールの質をより求めるようになった。
そして、吉田の意識を大きく変える出来事があった。それは3月に行われた星稜との練習試合だ。全国屈指の強豪を相手に登板したが、4回6失点と苦戦。チームも1対13で敗れ、「レベルが違いましたね。別格だと思います」と実力差を痛感させられた。
試合後には星稜の奥川恭伸(3年)らと一緒に練習を行った。その際に奥川から投球の癖を指摘されることもあったという。全国トップレベルの投手と言葉を交わしたことは吉田にとっては大きな刺激となっていた。
「意識から変えていかないといけないと思いました。日本代表で大きい舞台を経験している選手の言うことは絶対に自分のプラスにもなるので、言われたことは全部取り入れるようにしています」
17年ぶりの甲子園、そしてプロの世界へ!
17年ぶりの甲子園、そしてプロ野球選手を吉田力聖は目指す!
練習試合の結果では大きく水をあけられたが、奥川は決して届かない存在ではないとも感じたようだ。そのレベルに到達するための課題も本人は自覚している。
「自分もここからコンディションが上がっていけば(奥川投手に)届くと思っているので、そこに向けてまずは体を作っていきたいです。まず、下半身が固いので、股関節の可動域を広げること。そして、上半身を大きく使えれば、もっと腕がしなっていい球が投げられるようになると思うので、体全体の可動域を意識しています」
再び対戦する時に備えて吉田は足元を見つめながらトレーニングに励んでいる。星稜と次に対戦するとなれば甲子園になるだろう。光泉は17年間も甲子園から遠ざかっているが、昨年からのレギュラーが多く残る今年は甲子園出場に自信を見せている。
「もっとメンタルを強くして勝ちに対して貪欲になっていければ、滋賀県の優勝はこのチームで狙えると思っています。自分がもっと責任感を持って、チームを勝たせる気持ちを強く持ったらこのチームは絶対に勝てると思います。甲子園がどんなところかわからないからこそ、見てみたいというのはありますし、甲子園は高校生にとっては特別なものだと思います」
そして、甲子園で活躍した先に見据えるのはプロの世界だ。昨秋の活躍でプロのスカウトが注目するようになり、吉田自身も高卒でのプロ入りを志望している。
「大学も全然考えてないので、本当にプロ一本しか考えていないです。親を楽にさせたいというのもあるんですけど、やっぱり一野球人の目標としてプロ野球は特別な場所であると思っています。そのためには甲子園に出てもっと自分を打って行かないとプロにはなれないと思うので、もっと自分を成長させて色んな人に見てもらえるように頑張りたいです」
将来は速球派投手として活躍することを目指している吉田。夏までに150㎞到達を目標としている右腕の活躍から目が離せない。
文=馬場 遼