侮れない2番捕手・水上桂(明石商)!来春はいぶし銀の活躍を見逃すな!
今年の明石商は1年生スラッガー・来田涼斗、145キロ右腕・中森俊介が注目を浴びる中、明石商の攻守の柱として欠かせないのが水上桂だ。
明石商は近畿大会4試合で24得点、6失点、うち2試合が完封勝利だったが、水上は2番打者として、19打数7安打、打率.412、捕手としては宮口大輝、中森らを引っ張り、最小失点にとどめる好リードを見せ、スローイングタイム1.80秒~1.90秒を計測する強肩も披露した。
いぶし銀として、欠かせない存在となった水上を先取りして追いかけてみた。
読みがさえた打撃で近畿大会打率4割超
水上桂(明石商)
見るたびに、見逃せない存在となる水上。まず打撃。スクエアスタンスからインサイドアウトで振りぬくスイングからライナー性で次々と安打を連発。近畿大会好調の秘訣はボールの見極めだ。
「まず狙い球を絞ること。そのために相手投手の傾向をつかみ、甘めに入ってくるボール、コースを待ちます。高めに来たボールを絶対に逃さず、しっかりと振る。そして、低めに来たボールを見逃す意識です」
自分は長打力がないという水上。だからこそ相手の配球を読んで快打を連発してきた。狭間監督は打力の高さを信じて、2番打者として起用した。
「今や大リーグでも2番打者が最強と呼ばれるように、うちではいぶし銀ではないですけど、打てて、バントもできてなんでもできる嫌らしい打者として水上をおいています」
ここまで見れば、2番水上はうまくはまっているといえる。また、決勝の龍谷大平安戦でも打撃面でも存在感を示した。左の好投手・野澤秀伍に対してはこう準備していた。
「右打者に対して、外に逃げる変化球を使う投手。ただ中に入ってくる変化球があるので、それを狙っていました」
すると第1打席はスライダーに詰まりながらも左前安打。7回表の第4打席はスライダーを逃さず、レフトへ二塁打。この試合でも2安打を放った。
[page_break2人の性格を生かした好リードとキャッチングで近畿大会わずか6失点!]
2人の性格を生かした好リードとキャッチングで近畿大会わずか6失点!
水上桂(明石商)
また、守備では投手の持ち味を引き出すためにコミュニケーションや、投手にあったリードを心掛けた。まず今大会、26.1回を投げ、防御率1.03と抜群の安定感を発揮した宮口。宮口に対しては、緊張させないよう心掛けた。
「緊張しやすい投手なので、その緊張をほぐして励まして投げさせました」
また、龍谷大平安戦でも走者を背負う場面があったが、そのたびにこう伝えていた。
「打たれても、こっちが打って取り返すから。しっかりと腕を振って低めに集めていこう」
結果、宮口はピンチを何度も潜り抜け、握りこぶしを作ってベンチに戻る姿も。
「平安戦の宮口は変化球も低めに集まっていましたし、しっかりと打たせてとることができました」と手ごたえを感じるリードだった。また1年生右腕・中森俊介に対してはこうリードしている。
「直球に勢いがある投手。勢いあるストレートでストライクを取れると、どんどん乗っていく投手なので、どう乗せていくのか、どうストライク先行させていくかを考えています」
2人の性格に合わせたリード。さらに狭間監督から「キャッチングや暴投処理が入学から良くなった」と評価されるように、ボールを後ろへ逸らさない。しっかりと腕を振れる安心感がある捕手だからこそ、両投手は全力で腕を振り、4試合でわずか6失点にとどめることができたのだ。今大会を振り返って、「ロースコアの試合を戦い抜けたのは自信になる」と語った。しかし、決勝戦ではバントミスや12回裏に自身のミスが逆転サヨナラにつながったことを悔やんだ。
「宮口が頑張っていたのに、自分のミスで終わりにしてしまって申し訳ない」
今後の課題は基本の徹底だ。
「もう一度、バントなど当たり前にできること当たり前にする。これを徹底していきたいです」と誓った水上。
また狭間監督は「彼は意識が高い選手。この悔しさを忘れず、冬にしっかりと取り組んでくれれば、春は大きな進化を見せてくれると思います」と期待を込めた。
3年ぶりの選抜出場に期待がかかる明石商。前回はベスト8と躍進を見せたが、それ以上の躍進を遂げるためにはやはり水上の存在が欠かせないだろう。
いぶし銀と評される正捕手が来春、光輝く存在となることを願いたい。
取材=河嶋宗一