Column

【侍ジャパンU-18代表コラム】敗戦も大きな収穫を得た侍ジャパンU-18代表

2015.08.27

 8月28日(金)~9月6日(日)に大阪府・兵庫県で開催される「第27回WBSC U-18ベースボールワールドカップ」で地元での初戴冠を狙う侍ジャパンU-18代表は、8月26日(水)に[stadium]阪神甲子園球場[/stadium]で、ユニバーシアード夏季大会で優勝した侍ジャパン大学代表と壮行試合を行った。スコアは2対9と大学代表に格の違いを見せつけられたとはいえ、本戦へ向けて収穫が残る内容も示した。では、選手たちはこの試合に向けてどう向き合っていたのだろうか。

剛腕・田中正義から4安打。本戦へ弾みがついた打撃陣

平沢 大河(仙台育英)

 1回表に2点を先制され、侍ジャパン大学代表のエース、2016年ドラフトの超目玉である最速154キロ右腕・田中 正義創価大3年)の剛速球にオコエ 瑠偉(関東一3年)がバットを振ることができず見逃し三振。この時は手が出ない試合展開になるかと思われた侍ジャパンU-18代表。が、それを振り切ったのが、3番・平沢 大河仙台育英3年)である。平沢は田中に対して、こんな心境で打席に臨んでいた。

「チーム内で話していたのは、速い投手との対戦になっても、チマチマとした打撃をしないようにということです。田中(正義)さんは本当にストレートが速い投手なので、タイミングを早めに取るだけではなく、空振りして当然なので、しっかりと振り切ったスイングをしていこうと思いました。それで当たればラッキーという心境ですね」

 平沢は1ボールから2球目をフルスイング。ファールになったが、田中の速球に怯む様子はなかった。そして4球目、ストレートを捉え、ライト前。さらに相手野手の失策もあり一気に三塁に到達した平沢。そして4番・指名打者で出場した清宮 幸太郎早稲田実1年)が大きな拍手を迎えられて登場すると。1ボールから2球目。田中のストレートを捉え、中前適時打で1点を先制する。

「あのボールしか打てなかったです。技術どうこうより体が反応してくれました」
打った清宮は田中の速球だけではなく、2番手以降に投げた大学生の投手たちのストレートのスピード、キレ、コントロール、変化球の切れに驚くばかり。だが清宮は今回の対戦を同時に、このように捉えている。

「大学生の投手と対戦できたのは本戦に生きると思いますが、1年の僕が、このような経験をさせてもらえることは本当に秋以降に大きく生きるかなと思いました」
清宮はただ唯一の1年生で、2年生もおらず、この大会が終われば早稲田実業の一員としてセンバツ出場を目指す。確かに大きな経験であろう。

 チームにこの1点は大きな波及効果を生んだ。続く「5番・一塁手」出場の伊藤 寛士中京大中京3年)は三振に終わったが、空振りすることを恐れない高校通算44本塁打を記録する彼らしいスイングであり、2回の勝俣 翔貴東海大菅生3年)、堀内 謙伍静岡3年)の三振もファールで粘った収穫ある三振。あの田中に130キロ後半のフォークを投げさせた。ただストレート一本だけで抑え込まれるよりも、すべてを駆使しなければ抑えられないと思わせただけでも評価ができる。

 そして3回裏、9番・舩曳 海天理3年)、オコエ 瑠偉の連打で無死一、二塁のチャンスを作り、田中を引きずり下ろすことに成功。6月29日のユニバーシアード日本代表壮行試合で、NPB選抜相手に七者連続奪三振の圧巻の投球をした田中に、3回まで4安打が出たのは大きな勇気になる。

 今大会における打線のテーマは「対応力」。強豪国は大学代表と同等、それ以上の投手の対戦が予想されるだけに、今回の結果はさらに打線の調子を高めるきっかけになっただろう。

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2015年 第27回 WBSC U-18ベースボールワールドカップ

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第27回 WBSC U-18ベースボールワールドカップ

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[page_break: 投手陣は課題が残る結果も「やりたい野球」は見えた]

投手陣は課題が残る結果も「やりたい野球」は見えた

小笠原 慎之介(東海大相模)

 一方の投手陣は、右翼手で先発した勝俣 翔貴以外の7人が登板。だが5人が失点するなど本大会へ向けて課題が残る試合となった。先発した甲子園優勝投手・小笠原 慎之介東海大相模3年)は2回を投げて5安打3失点。

 いつもは140キロ後半の速球で圧倒する左腕だが、この日はストレートが走らず、140キロ前半。今日ぐらいのスピードでも、高校生相手には抑える。だが大学生は違った。しっかりと対応してくる。

「ストレートは通用しないと思ったので変化球中心で行こうと思いました。今回、チェンジアップを多めに投げたんですが、思った以上に打ち取れたので行けるかなと思いました」

 2イニングで4奪三振。最後は146キロのストレートで好打者・377立教大3年)を空振り三振に打ち取ってリベンジするなど、次に生きる形で降板となった。試合後、小笠原は冷静にこう話す。

「今日対戦した大学生たちと、また海外の打者はタイプが全く違うので、次にいきるかは対戦してみないと分かりません。しかし今回、大会前にこれほど緊張感ある中で投げられたのは、大きなプラスになると思います」

 打たれたことを収穫に転ずる姿勢が見える。小笠原だけではなく、他の6人もそれぞれ課題を感じていたことだろう。

 そして試合後、西谷 浩一監督はこのような発言を繰り返していた。
「大学代表さんはうちがしたい野球をやっていました」

「うちがしたい野球」というのは攻撃面だろう。たとえば初回。1番佐藤の安打から始まり、979亜細亜大4年)が右前安打。佐藤はU-18代表の野手陣が見せた隙を逃さず、三塁に到達。そして3番・横尾 俊建慶應義塾大4年)がきっちりと犠飛とつなぎの野球を実践した。

 そして4番吉田 正尚青山学院大4年)は右中間とバックスクリーンに目の覚めるような2本塁打。中軸打者がそれにふさわしい活躍を見せ、格の違いを見せつけた。

 となると・・・・・・。西谷監督の発言を裏に取れば「今年のチームはそれができる能力の高さを持った選手たち」という自信を持っているということだろう。

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[page_break:チームの「活気付け」で11日後の世界一へ]

チームの「活気付け」で11日後の世界一へ

西谷 浩一監督

 こうして2対9で壮行試合は敗戦に終わった侍ジャパンU-18。しかし、鋭い打球に反応し無失策で終えたこと。打線もハイレベルな大学生投手陣相手に7安打と、怯む様子は見せなかったことは、世界一へのベースになるに違いない。

 では、選手側から見た課題はどうか。
センバツ優勝・敦賀気比のキャプテンで、今大会の侍ジャパンU-18の栄えある主将に任命された篠原 涼は「打線は負けずに対応ができていたと思います」と語った一方で、課題として「ベンチ内で元気がないことです」と挙げた。

 確かに。この日は終始、劣勢の試合展開。三塁側からU-18代表の姿を見ると確かに活気さはなかった。
「沈んだ気持ちでは戦いに向かえません。常に声を出して盛り上げていけるように選手間ミーティングで話していきたいと思います」。2番・三塁手で奮闘しながら代表選手の姿勢も厳しく見ていた篠原の存在。これも大会中は大きなかぎとなるだろう。

 大差がついても悲壮感はない。かくして本戦へ向けて何か掴んだのか、自信にみなぎった表情で聖地・[stadium]甲子園[/stadium]を後にした侍ジャパンU-18。28日のブラジル戦、そして11日後の9月6日(日)、再びこの場所で頂点を獲る準備は、着々と整っている。

(文=河嶋宗一

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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