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水分補給の基本と熱中症対策

2014.08.15

 こんにちは、アスレティックトレーナーの西村典子です。

 新チームでの活動もそろそろ慣れてきた時期でしょうか? 炎天下の中での練習や試合は暑さとの勝負でもあります。「水を飲むな!」と言われた時代と比べ、現代はかなり高温で湿度も高く、蒸し蒸しした環境になっています。この中でプレーをするためにチーム全体で、また個人で取り組みたい暑さ対策について、おさらいも含めて確認したいと思います。

水分補給の基本

クエン酸が含まれた物

 「水が飲みたい」と思ったときにはすでに体内では脱水症状が始まっています。「水が飲みたい」と感じる前のこまめな水分補給が大切です。
具体的にはコップ半分から一杯程度の水分を20~30分程度で一杯飲むことが推奨されていますが、汗のかきかたは個人差もあります。流れ出る汗の分を補給するつもりで飲むようにすると良いでしょう。練習中などでプレーが長引く場合などは、チームで強制的に「ウォーターブレイク」を設け、必ず選手一人一人が水分補給を行うように時間をとることも一つの方法です。

 汗には水分とともに少量の塩分も含まれます。汗をかけば塩分も少しずつ失われていくことになります。塩分をたくさん摂り過ぎると弊害がありますが、少量の塩分補給は不可欠です。

 スポーツドリンクなどに含まれる塩分や、指先に塩を少しつけてなめる、梅干しやレモンなど酸っぱい成分であるクエン酸が含まれた物をとる、塩飴などをなめる等、あらかじめベンチ裏やグランド脇などに水分・塩分補給ができる準備をしておき、いつでも補給できるような環境を作っておくことが大切です。薬局などで売っている経口補水液は食塩とブドウ糖を混ぜて水に溶かしたものです。これと同じように自宅でも水1リットルに対して砂糖40gと食塩3gを溶かして作ることもできます。レモンやグレープフルーツなどの果汁をしぼって入れると飲みやすくなり、カリウムが補給されるので足のつり予防にもなります。

 練習や試合で集中していると水分・塩分補給のことが後回しになりがちですが、選手同士でお互い確認し合ったり、指導者が適切に声をかけるといったことも普段から心がけるようにしたいものです。

新チーム特集

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炎天下で熱中症にならないために

炎天下で熱中症にならないために

 暑い中でプレーを続けていると、脱水症状はもちろんですが、頭が痛くなったり、ボーッとしてしまうことがあると思います。この状態をそのままにしておくと「熱疲労」や「熱けいれん」、そして重篤な症状をもたらす「熱中症」へと進行してしまうことになります。

 グランドでできる熱中症対策としてはあらかじめ濡れタオルや氷などを準備しておき、プレーの合間などに首や頭を冷やすようにしましょう。血管の大きな部位を冷却することで体全体の体温を下げることができますので、首の後ろや脇の下、股関節部分、ひざ裏などを中心に冷やすようにしましょう。

 また休憩をとる場合はなるべく日陰で過ごすことも心がけましょう。風通しのいい場所やベンチの中など、直射日光の当たらないところで体を休めてからまた練習や試合に臨むようにすると、高温による夏バテやスタミナ切れを防ぐことができます。ベンチの中に扇風機などを準備したり、うちわなどを持参したりして、仰ぐだけでもずいぶんと汗はひき、体温を下げる効果が期待できます。

 そして「おかしいかな」と感じたら無理をせず、休みをとるようにしましょう。また一緒にプレーしている選手同士でもストップをかけること。指導者はこうした選手の変化を敏感に感じ取って休ませるようにしましょう。「もう少しで練習が終わるから」「今、休むとメンバーから外れてしまうから」といった理由で体に無理をさせてプレーを続けると、取り返しのつかないことになる場合があります。いつもと違って動きや反応が鈍い、汗を大量にかいている、顔がほてって赤いといった熱中症の初期段階と思われる症状がみられるときは、まずプレーを中断し水分・塩分補給を行いながら様子をみるようにしましょう。自分で水分補給ができないほどの状態はすぐに救急車を呼ぶこと。
熱中症で命を落とさないためにも周囲の協力が不可欠です。

 日頃からしっかりとした生活リズムを作り、睡眠不足や食欲不振といったコンディションとならないことが、熱中症予防の鍵だと言えるでしょう。

新チームでも実践しよう!熱中症対策

●水が飲みたい!と思う前にこまめに水分補給
●練習時間に「ウォーターブレイク」を取り入れることもよい
●汗をかいた分を補うつもりで水分と同時に塩分も補給
●濡れタオルや氷を使って体を冷やすと体温も下がる
●休むときは日陰や風通しのよい場所で
熱中症の初期症状がみられたらすぐに休ませること

(文=西村 典子

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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