Interview

阪神タイガース 鳥谷 敬選手 【前編】

2014.03.04

 言わずと知れた、阪神タイガースのキャプテン、鳥谷 敬選手。打撃、守備、走塁と全てを高いレベルでオールマイティにこなすその姿に憧れ、目標とする球児も多いのではないでしょうか。WBCでチームを救ったあの盗塁はどうしてできたのか?4度のベストナインを獲得したプレーを生み出すトレーニング方法、意識付けとは?たっぷりお話を伺ってきました。

WBC台湾戦9回盗塁の真相

――鳥谷選手と言えばWBCの台湾戦、9回での盗塁が印象に残っているファンが多いと思います。あの場面で判断が出来るための集中力って、どう身に付ければいいんでしょうか。なかなかスタートが切れないという選手が多いと思います。

阪神タイガース 鳥谷 敬選手

鳥谷 敬選手(以下「鳥谷」) スタートを切る練習もですけど、自分がスタートを切るための条件を決めておくということが必要です。あの場面は、相手の台湾の抑えピッチャーが、牽制は1回しかなくて、しかもクイックが早くないというのが最初の段階でわかっていたので、そのクイックを待っていた。走りやすい条件を自分で作って行くんです。何もない状態で行くのはすごく勇気が要るので、走るための条件を自分で一つか二つ作っておく。それをクリアしたときに行こう、というのを先に決めておくと、スタートが切りやすいと思います。

――シーズンでも4年連続2ケタ盗塁を決められているのですが、どうしたらスピードを維持できるプレーヤーになれるのでしょう。走ることへの自信はあるんでしょうか。

鳥谷 そんなにバンバン走れるというタイプではないんですけど、つながれば走るという感じですね。
 特別大きいのを打つとかは無いので、全部バランスよく、守備も盗塁もすべてやらないといけないので、そういう部分ではスピードは重要。

どの部門においても大切にしていかないといけない部分ですから、体重の管理もします。ポジションが変われば体型も変わりますしね。一番(スピードが)求められるショートというポジションにいますし、プロで何年もやってくる中で大事だなと感じている部分でもあります。

――スピードというワードが一つ出てきましたが、鳥谷選手自身、スピードは自分の武器だと思っていますか?

鳥谷 そんなにすごいスピードがある方ではないです。足の速さもチームで1番2番、というわけでもないですし、投げるのもそこまで速くない。でも、(スピードを)常に求めています。守りだったら、どうしたらよりアウトを取れるかと考えれば、打球を取ってからもっと速く投げられるようになればいい、とか。自分の能力だけでは補えない部分というのを練習や考える事をして変えていく。スピードに変えていく、ということをしていますね。

――スピードを加速させるというところでいうと、今、用具も色々な機能が付いたものが出ています。たとえばスパイクだったら鳥谷選手はどのような基準で選んでいるのでしょうか。

鳥谷 一番は履き心地。足の形に合うものが一番いいので、それが最初の条件になるんですけど、あとは軽さと、内野手なので左右の動きにも強い、対応できる、というものを選んでいますね。

阪神タイガース 鳥谷 敬選手

――今シーズン履くスパイクは、昨シーズンとは違いますか?

鳥谷 そうですね。僕は、毎年足のサイズを測って、スパイクの調整をしています。このキャンプの期間というのは微調整をしてもらいながら、自分が一番走りやすいものを相談しながら作ってもらっている感じなので、まだ調整中という段階です。今はナイキのスパイクを履いていますが、年々軽くなっていますし、僕の要望に対して色々応えてくれるので、そういう意味ではありがたいですね。

――デザインにはこだわりますか?

鳥谷 本当はこだわりたいんですけど、色は自分の好きなものを選べないこともあるので。でもナイキのスパイクはやっぱり同じロゴが入るのでも、ちょっと他と違うところに入ったりしているので、そういうところでは気に入っていますね。

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[page_break体幹を鍛えるオススメのトレーニングとは???]

体幹を鍛えるオススメのトレーニングとは???

阪神タイガース 鳥谷 敬選手

――続いてバッティングに関しての質問です。今シーズン長打力を磨いているということですが、そこに憧れている高校生も多いと思います。しっかり振れ、といわれてもなかなか出来なかったりもします。考え方や練習方法などいいものがあれば教えていただきたいと思います。

鳥谷 しっかり振る、ということで、最終的に長打が打てるかどうか変わってきます。打球の質も変わってきます。今シーズンは今まで以上にしっかり大きく振る、ということを考えて練習の中でも大きいのを意識したりはしています。
 練習法は、打ち方もそうですけど、人それぞれですよね。体の大きさも違いますし。「こういうふうに振ったら、強く振れる」というのも人それぞれ違うと思うので、そこは自分で一番力を込めて振れるスイングを練習の中で探す。そしてそれが見つかったら、またしっかり練習する、というのが一番ですね。

――このキャンプではどのような練習に取り組んでいますか?

鳥谷 ある程度長くプロでやっていますし、自分の力や体の出来上がりがどうなのかはわかっています。だから、そこにプラスアルファしていく。スピードを出すためにはどうしたらいいか、っていうのを毎日試行錯誤しながらやっています。

――バットスイングのスピードを高めるために大事なことはなんでしょうか?

鳥谷 一番は、自分の中で一番力を入れやすい形、っていうのを探すことです。僕は、身体の使い方でもう少し早くなるんじゃないかと思ってやっています。

――バッティングのフォームのポイントを教えていただけると嬉しいです。

鳥谷 膝や足の使い方もそうですし、あとはバットの軌道も。それによって変わってきます。これ!っていうのは無いので、それを自分の中で探していくという感じですね。

阪神タイガース 鳥谷 敬選手

――スピードアップに関して、トレーニングについても伺いたいと思います。どんなトレーニングをされていますか?

鳥谷 やっぱり体幹ですね。お尻まわりというか、身体の中心の部分をしっかりすることによって手や足も動かしやすいというか、安定感も出る。1回の爆発的なスピードには限界があると思うので、1年だったら1年、そのスピードを落とさずにやっていくのが重要だと思っています。なので、体の中心を重点的に考えてトレーニングしています。体幹は野球選手にとって、というより、運動をする上で重要だと思います。

――体幹を鍛えるオススメのトレーニングってありますか?

鳥谷 人によって得意な種目、苦手な種目がそれぞれたくさんあると思います。体幹に関してはこれといったもの、というよりは色んな種類をやってみる。一つの種目を100回やる、とかではなくて、色んな種目をやって研究してみるのがいいと思います。数よりも種類です。
 同じ腹筋を鍛えるのでも、いろんな場面や使い方が腹筋にはあると思うので、動きに対応するという意味では、いろんな種類を出来ることが必要かなと思います。

――スピードも体幹を鍛えることで鍛えられますか?

鳥谷 そうですね。走るのにしても、野球ってただまっすぐ走るだけじゃないです。止まったり、切り替えしたり、逆に振られた時に戻ったりとか、色んなケースがあるので、身体の中心がしっかりしていれば対応がしやすい。そういう一つ一つの場面に対応していくことがスピードにつながってくると思います。

――スピードがある選手って限られてくると思うんですけど、鳥谷選手はスピードってどのようなものと捉えられていますか?

鳥谷 自分を知ることですかね。スピードもそうだけどそれ以外の部分も自分を知っておく。ただ走るだけじゃなくて、いろんな形で自分の持っているスピードって上げていくことが出来ると思うので、そういうのを自分で知っておく、探す、という作業をするというのが、自分を高めていくには大切だなと思います。
 用意ドンで走るスピードを測ったら、自分より速い人には勝てないと思います。でも野球でプレーをする場面では、いろんなことを工夫してやれば、その人にスピードで勝てるという場面は絶対ある。そういう部分をどんどん見つける、可能性を拡げる、という作業は、野球が終わるまでずっと続けていくんだと思います。

 鳥谷選手、貴重なお話ありがとうございました。工夫することを常に怠らないストイックな姿勢が、あのすばらしいプレーを生むんですね。スピードに対する意識付けはぜひとも真似したいところです。
 後編は、プレーに対する集中の仕方やモチベーションについてのお話をお届けします。

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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